33 / 166
33.蘇生魔法
しおりを挟む
それから二週間が経過したけれど、まだアデルバート様達は戻ってらっしゃらなかった。
思いの外苦戦を強いられているらしく、加えて悪天候が続き、戦いが長引いているとのこと。
魔獣相手だと昼夜問わずの戦いだから、さぞかし大変だろう。
私は、安全な場所でアデルバート様達の、無事を祈ることしか出来ない自分が歯がゆかった。
力のない自分が悔しくて、鍛錬場の一角を借りて練習したりしているけれど、八年練習して上達しなかったのだから数日の練習で良くなるはずがなかった。
「はぁ……本当に私って才能がないのね……」
「いえ、奥方様は凄いと思います!」
「そうですわ!奥様は努力家ですもの。いつかきっと実を結ぶ日が参ります!」
エブリンとドミニクが懸命に励ましてくれるけれど、自分で駄目な事が分かっているから、余計に惨めに感じた。
その日も、魔法騎士さんに練習相手になってもらって、強化魔法を特訓していた。
「奥方様の魔法は、こうなんていうか……普通の魔法とは質が違うというか……何というか、体に魔法が流れ込むときに、違う感覚が走るんです。奥方様は聖女ですから、光魔法の属性ですよね?」
魔法学に詳しいという、一人の魔法騎士がそんなことを言った。
質が、違う?どういう事だろう。
やっぱり魔法の質が低いという事かしら。
「見た感じ、魔力量は多いし、しかもかなり強力だと思うのですが……」
それは、王都に居た時にも言われていた事。
魔力の質も量も上級なのに、それを使いこなせる才能が無い、と。
「やっぱり、才能がないのよ……」
私は、落胆する気持ちを隠すように、笑った。
「そ、そんな事ないですよ!奥方様は、枯れた草木を蘇らせる事ができる、とっておきの魔法があるじゃないですか!」
そう声を上げたのは、ドミニクだった。
「俺、あの魔法を見たときに感動しましたから!」
「あ……そう言えばそんな事もあったけれど、あれはたまたま……そう、まぐれみたいなものよ」
そう言えばそんな事もあったわね。すっかり忘れていたわ。
すると、それを聞いた魔法騎士たちがざわつき始めた。
「おい、ドミニク。今の話は……?」
「ああ、奥方様がいらっしゃったばかりの頃に、温室内で枯れてしまった植物を、蘇らせたんだ」
「あれは、魔法じゃないと思うの。詠唱もしていないし、魔法を使った自覚もないもの」
私は慌てて否定する。
「でもあれは魔法以外……」
「それって、蘇生魔法みたいな……?」
「いや、蘇生魔法を使う聖女なんて聞いたことがない」
確かに、魔法を持ってしても死んだものは生き返らない。
だから、蘇生魔法なんて存在しないのだ。
ではあれは何だったのか、と問われると返答に困ってしまう。
その場にいた全員の視線が私に集中した。
思いの外苦戦を強いられているらしく、加えて悪天候が続き、戦いが長引いているとのこと。
魔獣相手だと昼夜問わずの戦いだから、さぞかし大変だろう。
私は、安全な場所でアデルバート様達の、無事を祈ることしか出来ない自分が歯がゆかった。
力のない自分が悔しくて、鍛錬場の一角を借りて練習したりしているけれど、八年練習して上達しなかったのだから数日の練習で良くなるはずがなかった。
「はぁ……本当に私って才能がないのね……」
「いえ、奥方様は凄いと思います!」
「そうですわ!奥様は努力家ですもの。いつかきっと実を結ぶ日が参ります!」
エブリンとドミニクが懸命に励ましてくれるけれど、自分で駄目な事が分かっているから、余計に惨めに感じた。
その日も、魔法騎士さんに練習相手になってもらって、強化魔法を特訓していた。
「奥方様の魔法は、こうなんていうか……普通の魔法とは質が違うというか……何というか、体に魔法が流れ込むときに、違う感覚が走るんです。奥方様は聖女ですから、光魔法の属性ですよね?」
魔法学に詳しいという、一人の魔法騎士がそんなことを言った。
質が、違う?どういう事だろう。
やっぱり魔法の質が低いという事かしら。
「見た感じ、魔力量は多いし、しかもかなり強力だと思うのですが……」
それは、王都に居た時にも言われていた事。
魔力の質も量も上級なのに、それを使いこなせる才能が無い、と。
「やっぱり、才能がないのよ……」
私は、落胆する気持ちを隠すように、笑った。
「そ、そんな事ないですよ!奥方様は、枯れた草木を蘇らせる事ができる、とっておきの魔法があるじゃないですか!」
そう声を上げたのは、ドミニクだった。
「俺、あの魔法を見たときに感動しましたから!」
「あ……そう言えばそんな事もあったけれど、あれはたまたま……そう、まぐれみたいなものよ」
そう言えばそんな事もあったわね。すっかり忘れていたわ。
すると、それを聞いた魔法騎士たちがざわつき始めた。
「おい、ドミニク。今の話は……?」
「ああ、奥方様がいらっしゃったばかりの頃に、温室内で枯れてしまった植物を、蘇らせたんだ」
「あれは、魔法じゃないと思うの。詠唱もしていないし、魔法を使った自覚もないもの」
私は慌てて否定する。
「でもあれは魔法以外……」
「それって、蘇生魔法みたいな……?」
「いや、蘇生魔法を使う聖女なんて聞いたことがない」
確かに、魔法を持ってしても死んだものは生き返らない。
だから、蘇生魔法なんて存在しないのだ。
ではあれは何だったのか、と問われると返答に困ってしまう。
その場にいた全員の視線が私に集中した。
4
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる