黒焔公爵と春の姫〜役立たず聖女の伯爵令嬢が最恐将軍に嫁いだら〜

玉響

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33.蘇生魔法

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それから二週間が経過したけれど、まだアデルバート様達は戻ってらっしゃらなかった。
思いの外苦戦を強いられているらしく、加えて悪天候が続き、戦いが長引いているとのこと。
魔獣相手だと昼夜問わずの戦いだから、さぞかし大変だろう。

私は、安全な場所でアデルバート様達の、無事を祈ることしか出来ない自分が歯がゆかった。
力のない自分が悔しくて、鍛錬場の一角を借りて練習したりしているけれど、八年練習して上達しなかったのだから数日の練習で良くなるはずがなかった。

「はぁ……本当に私って才能がないのね……」
「いえ、奥方様は凄いと思います!」
「そうですわ!奥様は努力家ですもの。いつかきっと実を結ぶ日が参ります!」

エブリンとドミニクが懸命に励ましてくれるけれど、自分で駄目な事が分かっているから、余計に惨めに感じた。

その日も、魔法騎士さんに練習相手になってもらって、強化魔法を特訓していた。

「奥方様の魔法は、こうなんていうか……普通の魔法とは質が違うというか……何というか、体に魔法が流れ込むときに、違う感覚が走るんです。奥方様は聖女ですから、光魔法の属性ですよね?」

魔法学に詳しいという、一人の魔法騎士がそんなことを言った。
質が、違う?どういう事だろう。
やっぱり魔法の質が低いという事かしら。

「見た感じ、魔力量は多いし、しかもかなり強力だと思うのですが……」

それは、王都に居た時にも言われていた事。
魔力の質も量も上級なのに、それを使いこなせる才能が無い、と。

「やっぱり、才能がないのよ……」

私は、落胆する気持ちを隠すように、笑った。

「そ、そんな事ないですよ!奥方様は、枯れた草木を蘇らせる事ができる、とっておきの魔法があるじゃないですか!」

そう声を上げたのは、ドミニクだった。

「俺、あの魔法を見たときに感動しましたから!」
「あ……そう言えばそんな事もあったけれど、あれはたまたま……そう、まぐれみたいなものよ」

そう言えばそんな事もあったわね。すっかり忘れていたわ。
すると、それを聞いた魔法騎士たちがざわつき始めた。

「おい、ドミニク。今の話は……?」
「ああ、奥方様がいらっしゃったばかりの頃に、温室内で枯れてしまった植物を、蘇らせたんだ」

「あれは、魔法じゃないと思うの。詠唱もしていないし、魔法を使った自覚もないもの」

私は慌てて否定する。

「でもあれは魔法以外……」
「それって、蘇生魔法みたいな……?」
「いや、蘇生魔法を使う聖女なんて聞いたことがない」

確かに、魔法を持ってしても死んだものは生き返らない。
だから、蘇生魔法なんて存在しないのだ。
ではあれは何だったのか、と問われると返答に困ってしまう。
その場にいた全員の視線が私に集中した。
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