黒焔公爵と春の姫〜役立たず聖女の伯爵令嬢が最恐将軍に嫁いだら〜

玉響

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47.呼び出し

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私は急いで部屋に戻ると、エブリンに荷造りをお願いした。
エブリンは突然私が討伐隊に加わる事になった対しては驚いていたけれど、すぐさま準備に取り掛かってくれる。
その間に、私は急いでアミュレットを準備することにした。出立は明後日の早朝……ということは今日と明日だけでアミュレットを作らなければいけないということだ。
この前の氷狼討伐の時にアミュレットの元になる木の十字架は沢山手配してあるけれど、それに魔力を込めるのは骨の折れる作業だ。
それでも、戦う人たちを厄災から守れるのなら……。
私は一つ一つ、十字架を手にとって魔力を込めるのだった。

「奥様、根を詰めすぎるのも良くありませんよ」

一心不乱にアミュレットを作っていると、いつの間にかエブリンがお茶を淹れてくれていた。
ほんのりとラム酒の香りが立ち込める。

「……黒焔公爵様からの伝言を預かって参りました。半刻後に私室に来るように、と……」

エブリンが、気まずそうに私にそう告げてきた。
オーキッドかドミニクから、あるいはアデルバート様自身が私にそう伝えろと言ったのだろう。

「……わかったわ」

あの様子だと、お説教でもするつもりかしら。いずれにしても、機嫌を悪くした原因は私なのだから仕方がないわ。
私は静かに溜息をついた。


約束のギリギリの時間までアミュレットを作り、私は急いでアデルバート様の私室へと向かった。

「アデルバート様……?」

ノックをしても、返事がない。しかたなく、私はそっと扉を開くと、中を覗いた。

「……遅い」

低い声が響いた。

「申し訳……ございません……」

遅刻はしていない筈だけれど、待たせていたのならば謝るのが正解だと思う。
ゆっくり部屋の中に入ると、アデルバート様は椅子に凭れ掛かり、長い足を持て余すように組んでいた。部屋の中は仄暗く、燭台の炎だけが静かに蠢いていた。

「何の、御用でしょうか……」

夫婦の居室でも、主寝室でもなくわざわざアデルバート様の私室へ呼び出された意図が分からず、そう尋ねてしまった。

「……本気で、討伐に同行するつもりか」

私の予想通り、まだ昼間の件を引き摺っているようね。……ご自身で好きにしろと仰ったのに、まだ納得していないのかしら。

「……本気でなければ、初めからそんな事を申しません」
「相手は、魔獣などではなく、スネーストルムなのだぞ?」
「勿論承知しております。だからこそ、同行する事に意味があると思ったのです」

私は、真っ直ぐにアデルバート様を見据えた。
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