黒焔公爵と春の姫〜役立たず聖女の伯爵令嬢が最恐将軍に嫁いだら〜

玉響

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48.好き※ちょっとR18です

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アデルバート様は立ち上がると、私の方に近づいてきた。

「……分かった。そうまで言うのであればもう止めはしない。だが、決して無茶はしないと誓え」
「はい」

そう言うと、アデルバート様は私を強く抱き締めてきた。

「お前を、危険から遠ざけたいと思うのは、私の我儘なのだろうな」

耳元でぽつりとアデルバート様が呟いた。
アデルバート様の言葉は曖昧で、何を意味しているのか分からない。

「アデルバート……さま……?」

私は戸惑いながらも、アデルバート様の名を呼ぶ。
私だって、アデルバート様を危険な場所に行かせたくないと思っている。
でもアデルバート様の役目は、この公爵領を、そして国を外敵から守る事。
ならば、その重責を共に担うのも、妻である私の役目なのではないかしら。

「……アデルバート様の背負っているものを、私にも分けてください。夫婦とは、そういうものでしょう?私は、ただ貴方に守られているだけのか弱い存在ではありません」

アデルバート様を大切に想うからこそ、アデルバート様の力になりたい。
その気持ちを、少しでも伝えたくて、私はアデルバート様を抱き締め返した。

「……っ。そんな事を言われると……」
「んっ……」

苦しげにアデルバート様が呻いた後、唐突に唇が塞がれた。
熱い吐息が、隙間から漏れる。
同時に背中に回されていたアデルバート様の大きな手が、私の着ていた簡素なワンピースの裾を器用にたくし上げ始めた。

「あ……んっ……」
「お前を前にすると、どうにも気持ちが抑えられん。大切に思えば思うほど、衝動が強くなる」

私が、大切……?私は目を見開いた。
アデルバート様は、はっきりとそう言った。そんな事を言われたら、アデルバート様も私のことを好いて下さっていると思ってしまう。
……そう、信じてもいいの……?

「……好きです」

アデルバート様が唇を離した瞬間に、私はそう呟いた。

「アデルバート様の事が、好きです」

頬が火照るのを感じた。
もしかしたら伝えるべきではなかったかもしれない、私の気持ち。でも、口に出さずにはいられなかった。

「……信じられん……」

アデルバート様が呟く。その言葉を聞いた瞬間に、私は冷水を浴びせられた気分になった。
……やはり、アデルバート様にとって私は王命で得た妻に過ぎないのだから、私の気持ちは迷惑だったのだわ……。

「お前の愛を得られるなど、考えてもみなかった」

そう呟いたアデルバート様が、再度私の唇を奪った。
そして、アデルバート様の深紅の瞳が、優しげに細められた。
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