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52.出立
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それから、必要な装備の確認をしたり、慌ただしく時間は過ぎていった。
アデルバート様も、騎士達と作戦の確認をしたりしていたらしく、晩餐も別々に取ることになった。
念入りに湯浴みを済ませて寝室に戻ると、アデルバート様が寝台に腰を下ろしていた。
「本日もお疲れさまでございました」
私がにこりと微笑むと、アデルバート様は隣に座るように促してきた。
「……やはり、お前を連れて行くのに不安な気持ちが残っているのだ」
アデルバート様の指が、私の頬に触れた。
「私が、王都で暮らす普通の貴族だったなら、お前を危険に晒す事などなかったのだと、悔やむことがある」
「でも、そうであったのならばアデルバート様と私は出会っていなかったかもしれませんし、もし出会っていたとしても、夫婦にはならなかったかもしれませんわ」
私がそう呟くと、アデルバート様ははっとした顔をした。
「私はアデルバート様がこの地を統べる、黒焔公爵様で良かったと思っています。そして、聖女を妻に望んでくださったことも、私が聖女だったことも……。ただの偶然の積み重ねかもしれませんが、それは奇跡と呼べるのではないでしょうか」
すると、アデルバート様の表情が穏やかなものに変わった。
「……奇跡、か。そうかもしれんな」
アデルバート様はそっと私の唇に、口付けを落とした。
「明日は早い。ゆっくりと体を休めろ」
「はい」
そのまま私は、アデルバート様の腕に抱かれ、穏やかな眠りについたのだった。
翌朝は吹雪だった。
襲われた村までは半日程度らしいけれど、このぶんだともう少しかかるかもしれないわね……。
考えてみれば!私がアデルバート様に嫁いでから、イースボルの街を出るのは初めてだ。
しかも、王都からイースボルに来たときはまだ冬の始まりの頃。その頃とは比べ物にならないほどの雪が降り積もっている。
「皆さんに、寒さよけの加護魔法を授けるので並んでくださいね」
私は準備のできた騎士たちに加護魔法をかけていく。
体を鍛えている騎士とはいえ、長時間この吹雪の中を移動するのは命の危険に関わるかもしれないと考えての事だ。
「凄い………まるで透明な膜で覆われたみたいだ」
「風や雪に触れている感覚はあっても、寒さは感じないです!」
皆、喜んでいるようで何よりだわ。
最後に私は、自分とアデルバート様に加護魔法をかけた。
私はアデルバート様の馬に乗せてもらって現地に行くことになった。
アデルバート様の馬は、毛並みの良い美しい黒馬で、かなり体格も大きいので二人乗りでも問題ないらしい。
因みに私の為に用意された馬には、荷物を載せていくらしい。
「用意は整ったか」
「「はい!」」
馬上で、騎士たちが敬礼をするのを見、アデルバート様が声を張り上げた。
「では、出立する!オーキッド、いつもの通り留守を頼む」
「黒焔公爵様、奥方様、ご武運を!」
留守の使用人たちが見守る中、馬がゆっくりと走り出す。
私は、降りしきる雪を見つめながら、これから向かう場所に思いを馳せていた。
アデルバート様も、騎士達と作戦の確認をしたりしていたらしく、晩餐も別々に取ることになった。
念入りに湯浴みを済ませて寝室に戻ると、アデルバート様が寝台に腰を下ろしていた。
「本日もお疲れさまでございました」
私がにこりと微笑むと、アデルバート様は隣に座るように促してきた。
「……やはり、お前を連れて行くのに不安な気持ちが残っているのだ」
アデルバート様の指が、私の頬に触れた。
「私が、王都で暮らす普通の貴族だったなら、お前を危険に晒す事などなかったのだと、悔やむことがある」
「でも、そうであったのならばアデルバート様と私は出会っていなかったかもしれませんし、もし出会っていたとしても、夫婦にはならなかったかもしれませんわ」
私がそう呟くと、アデルバート様ははっとした顔をした。
「私はアデルバート様がこの地を統べる、黒焔公爵様で良かったと思っています。そして、聖女を妻に望んでくださったことも、私が聖女だったことも……。ただの偶然の積み重ねかもしれませんが、それは奇跡と呼べるのではないでしょうか」
すると、アデルバート様の表情が穏やかなものに変わった。
「……奇跡、か。そうかもしれんな」
アデルバート様はそっと私の唇に、口付けを落とした。
「明日は早い。ゆっくりと体を休めろ」
「はい」
そのまま私は、アデルバート様の腕に抱かれ、穏やかな眠りについたのだった。
翌朝は吹雪だった。
襲われた村までは半日程度らしいけれど、このぶんだともう少しかかるかもしれないわね……。
考えてみれば!私がアデルバート様に嫁いでから、イースボルの街を出るのは初めてだ。
しかも、王都からイースボルに来たときはまだ冬の始まりの頃。その頃とは比べ物にならないほどの雪が降り積もっている。
「皆さんに、寒さよけの加護魔法を授けるので並んでくださいね」
私は準備のできた騎士たちに加護魔法をかけていく。
体を鍛えている騎士とはいえ、長時間この吹雪の中を移動するのは命の危険に関わるかもしれないと考えての事だ。
「凄い………まるで透明な膜で覆われたみたいだ」
「風や雪に触れている感覚はあっても、寒さは感じないです!」
皆、喜んでいるようで何よりだわ。
最後に私は、自分とアデルバート様に加護魔法をかけた。
私はアデルバート様の馬に乗せてもらって現地に行くことになった。
アデルバート様の馬は、毛並みの良い美しい黒馬で、かなり体格も大きいので二人乗りでも問題ないらしい。
因みに私の為に用意された馬には、荷物を載せていくらしい。
「用意は整ったか」
「「はい!」」
馬上で、騎士たちが敬礼をするのを見、アデルバート様が声を張り上げた。
「では、出立する!オーキッド、いつもの通り留守を頼む」
「黒焔公爵様、奥方様、ご武運を!」
留守の使用人たちが見守る中、馬がゆっくりと走り出す。
私は、降りしきる雪を見つめながら、これから向かう場所に思いを馳せていた。
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