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66.春の姫
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「私は、歴代の黒焔公爵の中でも特に強く炎の竜の魂が宿っているらしい。そのせいで、時々感情がコントロール出来なくなる。だから私は人を避け続けてきた。気持ちが昂ると、私の中にある残虐性が暴走し、抑えられなくなるのだ」
やはり、アデルバート様の人嫌いも、最恐将軍の呼名も、全ては炎の竜のしがらみからくるものだったのね……。
「私に子孫を残すように迫る陛下に、聖女なら妻に迎えても良いと答えたのは、私にもアルノルトにとってのラトーヤのような存在がいれば、この衝動から解放されるのかと期待してのことだった。よもや……実際にラトーヤと同じ春の姫を妻にできるとは思っていなかったがな」
「ええと……よく分からないのですが、『春の姫』とは、ラトーヤさんのような力を持った聖女を指す言葉なのですか?」
私が尋ねると、アデルバート様の表情がほんの少し和らいだ。
「そうだな……『春の姫』とは基本的にはラトーヤの事を指す。春の魔法を使う者は、ラトーヤ以降は存在しなかったからな。シャトレーヌは、ラトーヤ以来の春の姫ということになる」
「……だから、春の姫は『御伽噺』の中の存在なのですね……」
「それだけ、お前の持つその春の姫の力は稀有なものだということだ。……イースボルの城と城下町を作り上げた二人は、そこに居を構え、夫婦となった。すると、スノーデンによって永久の冬となったはずのこの地に、僅かな間だけ草花が育つ時期が出るようになったのだ。それが、ラトーヤが大地に自分の魔力を注ぎ、冬を克服する生命力を与えていたからだった。アルノルトの心を慰め、この地をも癒したその春を呼ぶ力を持ったラトーヤを、尊敬の意を込めて『春の姫』と呼ぶようになった」
ラトーヤさんは、民から慕われる、素晴しい聖女だったのね……。
そんな人と同じ力を、役立たずの聖女であるはずの私が持っているだなんて、今でも信じられない気持ちだ。
「今の公爵領があるのは、アルノルト王子とラトーヤさんのお陰なのですね……」
「ああ。彼らの亡骸は、今もイースボル城の地下に安置され、手厚く葬られている」
「そうだったのですね……。城に戻ったら、足を運んでみたいです」
「ああ、そうだな」
アデルバート様は、穏やかに微笑んだ。
やはり、アデルバート様の人嫌いも、最恐将軍の呼名も、全ては炎の竜のしがらみからくるものだったのね……。
「私に子孫を残すように迫る陛下に、聖女なら妻に迎えても良いと答えたのは、私にもアルノルトにとってのラトーヤのような存在がいれば、この衝動から解放されるのかと期待してのことだった。よもや……実際にラトーヤと同じ春の姫を妻にできるとは思っていなかったがな」
「ええと……よく分からないのですが、『春の姫』とは、ラトーヤさんのような力を持った聖女を指す言葉なのですか?」
私が尋ねると、アデルバート様の表情がほんの少し和らいだ。
「そうだな……『春の姫』とは基本的にはラトーヤの事を指す。春の魔法を使う者は、ラトーヤ以降は存在しなかったからな。シャトレーヌは、ラトーヤ以来の春の姫ということになる」
「……だから、春の姫は『御伽噺』の中の存在なのですね……」
「それだけ、お前の持つその春の姫の力は稀有なものだということだ。……イースボルの城と城下町を作り上げた二人は、そこに居を構え、夫婦となった。すると、スノーデンによって永久の冬となったはずのこの地に、僅かな間だけ草花が育つ時期が出るようになったのだ。それが、ラトーヤが大地に自分の魔力を注ぎ、冬を克服する生命力を与えていたからだった。アルノルトの心を慰め、この地をも癒したその春を呼ぶ力を持ったラトーヤを、尊敬の意を込めて『春の姫』と呼ぶようになった」
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「ああ。彼らの亡骸は、今もイースボル城の地下に安置され、手厚く葬られている」
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アデルバート様は、穏やかに微笑んだ。
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