黒焔公爵と春の姫〜役立たず聖女の伯爵令嬢が最恐将軍に嫁いだら〜

玉響

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65.黒焔公爵家の伝説(3)

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「ラトーヤと話をするうちに、アルノルトは己の中で暴れていた荒ぶる魂が徐々に鎮まっていくのを感じた。彼女といると、炎の竜に呑み込まれそうな自分が、自分のままでいられる事に気がついたのだ。アルノルトは、ラトーヤと共にスノーデンが築いた都を捨て、新しい要塞都市を築いた。それがイースボルだった。そして、ラトーヤが魔力を大地に注ぐことにより、わずかながらに雪が消える時期がこの土地にも出来た」

なるほど。そうして今の公爵領が出来上がったのね……。

「アルノルト王子に仕えていた側近達はどうなったのですか?」
「あぁ……反逆罪で、全員死罪にされたらしい。エルヴァリグルの王族とて、馬鹿ではない。元々強大な魔力を持ち、尚且炎の竜を宿した男を敵に回すような真似はしなかったということだ。以降、この公爵領はエルヴァリグルの領土でありながら、王家の干渉を受けない特殊な土地として代々グロリオサ公爵家に受け継がれてきた訳だ」
「そうだったのですね。アデルバート様が火炎魔法が得意なのもそのような謂れがあるからなのですか?」

私がなんとはなしにそう尋ねると、アデルバート様はほんの少しだけ怯んだように見えた。

「シャトレーヌ……お前には、もっと前に話しておくべきだったと、思っている」
「………何を、でしょうか?」

この伝説についてでしょうか。

「グロリオサ公爵家の嫡男は、皆必ず黒髪に紅目を持って生まれてくる。……一人の例外もなく。……それは、アルノルトと同じく炎の竜の魂が、己の魂に絡みついているからなのだ。……つまりお前との間にいつか生まれるであろう最初の男児は、生まれながらに炎の竜をその身に宿しているということなのだ」

私は、それを聞いて何とも言えない気持ちになる。
……つまりは、アデルバート様の中にも炎の竜の魂があるということ。ならば火炎魔法が得意なのは、当たり前だ。殆ど炎の神の化身と言っても過言ではない。……でも様子から察するに、アデルバート様はそのことを、引け目に感じているのではないかしら……。

「なるほど。それであれば納得ですわ。いつか私達のもとに来てくれる我が子に、アデルバート様のような美しい火炎魔法か使える力があるのなら、それは素晴しい事だと思いますわ」

私は、本心からのその気持ちを、素直にアデルバート様に伝えた。
もしかしたら、その力のせいで、人嫌いになってしまったのかしら。
アデルバート様はこんなにも優しくて領民思いなのだから、凄く勿体ないことだわ………。
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