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89.戸惑い(アデルバート視点)
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「まっ………待っ………ちがっ………」
シャトレーヌが助けを求めるように訴えてくる。仕方なく唇だけは解放した。
「私を教えろと言ったのは、お前の方だ」
「あの、そういう意味では………」
シャトレーヌは微かに震え、目には僅かに涙が浮かんでいた。
………少し、焦りすぎたか………。
「まあいい。今宵は初夜だからな。存分に堪能するとしよう」
血気盛んな若者でもあるまいし、女相手にがっつくなど、私はどうかしている。
私は自嘲の笑みを浮かべて、部屋を出た。
そのまま執務室へと足を運んだ。
仕事を片付けようと机に向かうが、どうにも捗らない。
「くそっ」
私は髪を掻き毟った。
頭に浮かぶのは、シャトレーヌの事ばかりだ。
いくら書類上は既に妻になっているとはいえ、シャトレーヌとはつい半日ほど前に出会ったばかりだ。
それなのに何故、彼女の事ばかり考えてしまうのだ。
ふと、思い立ってオーキッドを呼びつける。
「シャトレーヌの湯浴みの際に、温室で咲いた薔薇の花を浮かべられるように用意してやれ」
「・・・あれは貴重なものですが、良いのですか?」
少し戸惑いながら、オーキッドが尋ねてきた。
「ああ。年頃の令嬢は、そういうのが好きだろう」
「………かしこまりました」
………オーキッドが少しだけ嬉しそうな顔を指定たのは見間違いだろうか。
私は溜息をつくと、内容が全く頭に入ってこない書類に目を通した。
※※※※※
暫くして時計を見ると、晩餐の時間が近づいていた。
普段はオーキッドが呼びに来ない限りは執務をしているが、どうにも落ち着かない。私は晩餐用の装いに着替えると、いそいそと食堂へと向かった。
突然現れた私に、使用人達が、戸惑っているのがわかる。
オーキッドが慌ててシャトレーヌを呼びに向かった。
姿を見せたシャトレーヌは、瞳の色と同じ菫色のドレスを着て現れた。
見た瞬間に私は固まった。
この世に、こんなにも美しい女性が存在するのか。
私は胸が高鳴るのを感じた。
「………物凄く似合っているぞ」
精一杯の褒め言葉を掛けるが、シャトレーヌはあまり自信がないようだ。
決して派手ではないが、清楚で、可憐なその佇まいに強く心惹かれる。
彼女が目の前にいると、何を口に入れても、味が分からない。
先程のシャトレーヌの唇は甘く感じたというのに。
私はワインで食事を流し込んだのだった。
シャトレーヌが助けを求めるように訴えてくる。仕方なく唇だけは解放した。
「私を教えろと言ったのは、お前の方だ」
「あの、そういう意味では………」
シャトレーヌは微かに震え、目には僅かに涙が浮かんでいた。
………少し、焦りすぎたか………。
「まあいい。今宵は初夜だからな。存分に堪能するとしよう」
血気盛んな若者でもあるまいし、女相手にがっつくなど、私はどうかしている。
私は自嘲の笑みを浮かべて、部屋を出た。
そのまま執務室へと足を運んだ。
仕事を片付けようと机に向かうが、どうにも捗らない。
「くそっ」
私は髪を掻き毟った。
頭に浮かぶのは、シャトレーヌの事ばかりだ。
いくら書類上は既に妻になっているとはいえ、シャトレーヌとはつい半日ほど前に出会ったばかりだ。
それなのに何故、彼女の事ばかり考えてしまうのだ。
ふと、思い立ってオーキッドを呼びつける。
「シャトレーヌの湯浴みの際に、温室で咲いた薔薇の花を浮かべられるように用意してやれ」
「・・・あれは貴重なものですが、良いのですか?」
少し戸惑いながら、オーキッドが尋ねてきた。
「ああ。年頃の令嬢は、そういうのが好きだろう」
「………かしこまりました」
………オーキッドが少しだけ嬉しそうな顔を指定たのは見間違いだろうか。
私は溜息をつくと、内容が全く頭に入ってこない書類に目を通した。
※※※※※
暫くして時計を見ると、晩餐の時間が近づいていた。
普段はオーキッドが呼びに来ない限りは執務をしているが、どうにも落ち着かない。私は晩餐用の装いに着替えると、いそいそと食堂へと向かった。
突然現れた私に、使用人達が、戸惑っているのがわかる。
オーキッドが慌ててシャトレーヌを呼びに向かった。
姿を見せたシャトレーヌは、瞳の色と同じ菫色のドレスを着て現れた。
見た瞬間に私は固まった。
この世に、こんなにも美しい女性が存在するのか。
私は胸が高鳴るのを感じた。
「………物凄く似合っているぞ」
精一杯の褒め言葉を掛けるが、シャトレーヌはあまり自信がないようだ。
決して派手ではないが、清楚で、可憐なその佇まいに強く心惹かれる。
彼女が目の前にいると、何を口に入れても、味が分からない。
先程のシャトレーヌの唇は甘く感じたというのに。
私はワインで食事を流し込んだのだった。
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