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102.出立前日(アデルバート視点)
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ぐったりとしたシャトレーヌの髪を整えると、その額にそっとキスを落とし、目を閉じた。
ただ一方的に想いをぶつけていた時とは違う幸福感で満たされていた。
翌朝。
私は朝日の光で目を覚ました。
久方ぶりにぐっすりと眠れた気がした。とても気分が良いし、疲れもない。
シャトレーヌを起こさぬように起き上がろうとして………腕の中に彼女がいない事に気がついた。
「シャトレーヌ?!」
私は飛び起きると部屋の中を探すが、見当たらない。
寝台にはまだ温もりが残っている。
つい先程抜け出したのだろう。
私は慌ててローブを羽織ると、大急ぎで部屋を出て、城の中を探し回る。厨房にも、サロンにも姿はなかった。もしかしたら自室に戻ったのかも知れないと思い、シャトレーヌの居室へと向かった。
「シャトレーヌ!!」
バタンと扉を開けると、シャトレーヌがキョトンとしながらこちらを見ていた。
「アデルバート様?どうなさいました?」
「………ここにいたか。目が覚めたらお前の姿が見当たらずに探していたところだ。お前に何かあったらと思い………」
「アデルバート様は意外と心配性なのですね」
私としたことが取り乱してしまった。シャトレーヌが微笑むと何だか気恥ずかしくなる。
「黙って抜け出したことは謝ります。でも、どうしてもアミュレットを早く仕上げたかったので………」
そう言いながら、シャトレーヌが木製の十字架のネックレスを渡してきた。氷狼の際のアミュレットとは異なり、しっかりした作りで、丁寧かつ強力な加護魔法が施されているのがよく分かる。
私は受け取ったアミュレットを早速身につける。
そこから、シャトレーヌの魔力が全身を包み込んでいくような気がした。
「大事にする」
私はそう呟くと、シャトレーヌを抱き寄せたのだった。
それから、必要な装備の確認をしたり、慌ただしく時間は過ぎていった。
騎士達と作戦の確認をしたり、残りの政務を片付けたりしていて、その日は夜までシャトレーヌと顔を合わせることはなかった。
湯浴みを済ませて寝室に行くと、シャトレーヌはまだ湯浴み中だと言う。
暫く湯船に浸かって湯浴みをするのは難しいだろうから、念入りに身を清めているのだろう。
私は寝台に腰を下ろした。
暫くするとシャトレーヌが姿を見せる。
「本日もお疲れさまでございました」
にこりと微笑むシャトレーヌに、隣に座るように促す。
「………やはり、お前を連れて行くのに不安な気持ちが残っているのだ」
私は指でなぞる様に、シャトレーヌの頬に触れた。
「私が、王都で暮らす普通の貴族だったなら、お前を危険に晒す事などなかったのだと、悔やむことがある」
「でも、そうであったのならばアデルバート様と私は出会っていなかったかもしれませんし、もし出会っていたとしても、夫婦にはならなかったかもしれませんわ」
そう言われて、私ははっとした。
「私はアデルバート様がこの地を統べる、黒焔公爵様で良かったと思っています。そして、聖女を妻に望んでくださったことも、私が聖女だったことも………。ただの偶然の積み重ねかもしれませんが、それは奇跡と呼べるのではないでしょうか」
私の女神は、何と素晴らしい事を言ってくれるのだろう。
私は頬を緩めた。
「………奇跡、か。そうかもしれんな」
そう言って、そっと彼女の唇に、口付けを落とした。
「明日は早い。ゆっくりと体を休めろ」
「はい」
私はシャトレーヌの柔らかな体を抱き寄せると、その温もりに身を委ねながら深い眠りについたのだった。
ただ一方的に想いをぶつけていた時とは違う幸福感で満たされていた。
翌朝。
私は朝日の光で目を覚ました。
久方ぶりにぐっすりと眠れた気がした。とても気分が良いし、疲れもない。
シャトレーヌを起こさぬように起き上がろうとして………腕の中に彼女がいない事に気がついた。
「シャトレーヌ?!」
私は飛び起きると部屋の中を探すが、見当たらない。
寝台にはまだ温もりが残っている。
つい先程抜け出したのだろう。
私は慌ててローブを羽織ると、大急ぎで部屋を出て、城の中を探し回る。厨房にも、サロンにも姿はなかった。もしかしたら自室に戻ったのかも知れないと思い、シャトレーヌの居室へと向かった。
「シャトレーヌ!!」
バタンと扉を開けると、シャトレーヌがキョトンとしながらこちらを見ていた。
「アデルバート様?どうなさいました?」
「………ここにいたか。目が覚めたらお前の姿が見当たらずに探していたところだ。お前に何かあったらと思い………」
「アデルバート様は意外と心配性なのですね」
私としたことが取り乱してしまった。シャトレーヌが微笑むと何だか気恥ずかしくなる。
「黙って抜け出したことは謝ります。でも、どうしてもアミュレットを早く仕上げたかったので………」
そう言いながら、シャトレーヌが木製の十字架のネックレスを渡してきた。氷狼の際のアミュレットとは異なり、しっかりした作りで、丁寧かつ強力な加護魔法が施されているのがよく分かる。
私は受け取ったアミュレットを早速身につける。
そこから、シャトレーヌの魔力が全身を包み込んでいくような気がした。
「大事にする」
私はそう呟くと、シャトレーヌを抱き寄せたのだった。
それから、必要な装備の確認をしたり、慌ただしく時間は過ぎていった。
騎士達と作戦の確認をしたり、残りの政務を片付けたりしていて、その日は夜までシャトレーヌと顔を合わせることはなかった。
湯浴みを済ませて寝室に行くと、シャトレーヌはまだ湯浴み中だと言う。
暫く湯船に浸かって湯浴みをするのは難しいだろうから、念入りに身を清めているのだろう。
私は寝台に腰を下ろした。
暫くするとシャトレーヌが姿を見せる。
「本日もお疲れさまでございました」
にこりと微笑むシャトレーヌに、隣に座るように促す。
「………やはり、お前を連れて行くのに不安な気持ちが残っているのだ」
私は指でなぞる様に、シャトレーヌの頬に触れた。
「私が、王都で暮らす普通の貴族だったなら、お前を危険に晒す事などなかったのだと、悔やむことがある」
「でも、そうであったのならばアデルバート様と私は出会っていなかったかもしれませんし、もし出会っていたとしても、夫婦にはならなかったかもしれませんわ」
そう言われて、私ははっとした。
「私はアデルバート様がこの地を統べる、黒焔公爵様で良かったと思っています。そして、聖女を妻に望んでくださったことも、私が聖女だったことも………。ただの偶然の積み重ねかもしれませんが、それは奇跡と呼べるのではないでしょうか」
私の女神は、何と素晴らしい事を言ってくれるのだろう。
私は頬を緩めた。
「………奇跡、か。そうかもしれんな」
そう言って、そっと彼女の唇に、口付けを落とした。
「明日は早い。ゆっくりと体を休めろ」
「はい」
私はシャトレーヌの柔らかな体を抱き寄せると、その温もりに身を委ねながら深い眠りについたのだった。
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