黒焔公爵と春の姫〜役立たず聖女の伯爵令嬢が最恐将軍に嫁いだら〜

玉響

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121.騒ぎ

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「………何かあったようですね。少し、様子を見てまいります。くれぐれも、動かないでくださいね」

アルヴァが私にそう告げると、椅子から立ち上がり、外へと出ていった。
………何かしら。
私は、壁に取り付けられた小さな窓から外の様子を伺おうとするけれど、窓枠に雪が降り積もっていて視界が遮られてしまい、よく見えない。
その上、その窓には何かの魔法がかけられていて、手で触れると強い力で跳ね返される。

「………そうよね。私は今捕虜ですものね」

アルヴァと話をしていてすっかり忘れてしまっていたけれど、ここは私を閉じ込めておくために用意された場所なのだから、当然私の力ではここから出られないようにされているのだと、今になって初めて思い知った。
仕方なく、扉の近くで耳を澄ましながら外の様子を伺っていると、突然、扉が開いた。

「きゃあっ!」
「驚かせてすみません、私です」

顔を出したのは、アルヴァだった。………当然といえば当然なのだけれど、心の中ではもしかしたらアデルバート様が………と期待していたのか、思いの外落胆の気持ちが強かった。

「………行きたくないとは思いますが、ラーシュが貴女を、連れてこいと………」
「!」

私は途端に身が強張るのを感じた。
あの男は、また私を襲おうとするのだろうか。
正直行きたくない。………でも、捕虜である私に、選択権などないだろう。

「………大丈夫です。今度は屋外ですから、先程のような目に遭う心配はありませんよ」

私の不安そうな様子を見せていたのを汲み取ってか、付け加えたようにそう言ってきた。

「………どういうこと?」

私は眉を顰めた。
すると、アルヴァは困ったように目を泳がせると、静かに告げた。

「………実はたった今、黒焔公爵が乗り込んできたのです」
「………何ですって?!アデルバート様が?!」

私は驚きのあまりアルヴァに掴みかかってしまう。

「貴女の護衛だった………ドミニク、でしたっけ?彼も同行しています」

………ドミニクまで?でも、なぜ私の居場所が分かったのかしら。
私は不思議に思いながらも、ゆっくりとアルヴァについてラーシュの元へと向かうことに決めたのだった。

「………わかったわ。案内してちょうだい」

私はまっすぐにアルヴァを見つめると、そう宣言したのだった。
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