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122.炎と氷

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外へと出ると、ラーシュの冷たい瞳が私を射抜いた。

「………奴は何故、この場所が分かった?お前が知らせたのか?」

ラーシュから、感じるのはアデルバート様に初めてお会いしたときに感じたような威圧感。半分だけとはいえ、やはり血の繋がった兄弟だと納得がいく。

「………そのような事が出来ていれば、さっさと逃げ出しますわ」

私は、気圧されないように気持ちを奮い立たせて答える。

「………ふん。まぁいい。お前がアデルバートの弱点だという事に変わりはない。お前が我が手中にある限り、あいつは手出しができない」

ラーシュは酷薄な笑みを浮かべると私に歩み寄ってくる。
私は反射的に身を引いた。

「愛しい夫に逢わせてやろうっていうのに、逃げるなよ」

………怖い。この人が何を考えているのかが分からなくて、怖い。
震える私の手を無理矢理掴むと自分の方に力ずくで引き寄せる。
そして抵抗出来ないように後手で手首を縛られた。

「………アルヴァ、そいつを連れてこい」
「はい」

アルヴァに伴われた私は集落の入口の方へと歩いていくラーシュに付いていく。
また、吹雪がいつの間にか酷くなってきていた。
まるでラーシュの怒りを汲んだ空が猛っているように。

「………大丈夫ですか?」

縛られているせいで、雪の中をうまく進めない私を、アルヴァが支えてくれた。

「ええ、ありがとう」

アルヴァに礼を言うと、私の前を行くラーシュが立ち止まった。
そこは少し開けた場所になっていて、木々が立ち並ぶ方には漆黒の影が確かに見えた。

「アデルバート様っ!!」
「シャトレーヌ!!」

私達は、同時に叫んだ。
間違いない。アデルバート様だわ。
私は、アデルバート様に駆け寄ろうとした。

「………おっと、悪いがあいつの元には行かせられないな」

ラーシュの腕が、私を捕らえた。

「ラーシュ!!シャトレーヌを離せ!!」
「何故お前に従わなければならない?お前は簒奪者の末裔に過ぎない。お前の治める領地を全て私に返すのならば、この女を返してやろう。………尤も、奪い返したとしても十月後にこの女が産み落とす子は、白髪にアイスブルーの瞳をしているだろうがな」

そんなのは真っ赤な嘘だけれど、真実を知らないアデルバート様を怒らせるには、その言葉は充分だったようだ。

「!」

次の瞬間、吹き付ける雪を焼き尽くすような炎が、ラーシュ目掛けて襲いかかってきた。
でもラーシュは平然と、氷の壁を出現させて攻撃を防いだ。
炎と氷の熱がぶつかり合い、凄まじい蒸気が辺りを包んだ。
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