内気な私に悪役令嬢は務まりません!

玉響

文字の大きさ
22 / 61
学園一年生編

22(アルフレッド視点)

しおりを挟む
そうこうするうちに、私達は王立学園へ入学する年齢となった。
だが、そうなると私のジルが多くの人目に晒される事となる。
我が国において公爵令嬢はジルただ一人。そして私に姉妹や従姉妹もいない。……つまり、同年代の令嬢の中でジルは一番身分が高い。それがジルが私の婚約者に選ばれた理由だ。
社交界デビューは学園卒業後の十六歳。カラミンサ公爵令嬢の存在は知っていても、どんな令嬢なのかは知られていないのだ。

私が危惧している事は二点あった。
一点目は、あまりにも美しい彼女を見初める輩がいるのではないかということ。
勿論彼女が私の婚約者であるというのは周知の事実だ。だが、貴族子息の中には素行の良くない輩もいる。……万が一の事態が起これば、婚約は破談になってしまう。
そしてもう一点は、ジルの内気な性格だ。
私の婚約者、それは将来的にはウィステリア王太子妃、そして王妃となる事を意味する。
ジルの性格が露見すれば、彼女が私の相手として相応しくないと言い出す輩が必ず出てくるはずだ。
……それは私も分かっている。王妃の仕事は世継ぎを産むことだけではないからだ。外交、駆け引き、交渉………。女性王族の頂点に立つ王妃の担う政務も多い。
殊に、外国からの客のもてなしや、国内の有力貴族との茶会など、その社交性が試される場は多い。
冷静に考えて、今のジルには到底無理だろう。

「でも、私はジル以外には心が動かない………」

私は人払いした自室で、一人呟いた。
彼女を手に入れるためなら、王位なんてどうでもいいと思うくらい、彼女が愛おしい。

でも、どうすれば彼女を皆に認めらせられるのだろう。
毎週のお茶会でも、ジルの様子は変わる気配がない。
それに安心しつつ、がっかりする自分がいる。
ただ、彼女を観察するうちに分かったこともあった。
ジルは内気なせいで口数こそ少ないけれど、何も考えていないわけではないということ。
カラミンサ公爵の話によると、頭脳明晰で、魔力も強いほうだという。……能力は高いのだ。
それと、初対面の頃は酷く怯えていたけれど、何度か顔を合わせるうちに態度は少しずつ軟化している。
言葉の言い淀みは多いけれど、私の問いかけには答えてくれるようになってきたのだ。

「……ジルは、ジルのまま……私の手で変えていきたい……」

ジルのはにかんだ笑顔を思い浮かべて、私は一人狂気に満ちた笑みを零すのだった。


※※※※あとがき※※※※

いつもお読みいただきありがとうございます。
ちょっと色モノな登場人物の多い本作ですが、問題児のアルフレッド殿下………この思考回路とドSな性癖ですが、まだ十四歳ですのでご注意下さいませ(笑)
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

わんこ系婚約者の大誤算

甘寧
恋愛
女にだらしないワンコ系婚約者と、そんな婚約者を傍で優しく見守る主人公のディアナ。 そんなある日… 「婚約破棄して他の男と婚約!?」 そんな噂が飛び交い、優男の婚約者が豹変。冷たい眼差しで愛する人を見つめ、嫉妬し執着する。 その姿にディアナはゾクゾクしながら頬を染める。 小型犬から猛犬へ矯正完了!?

【完結】ヤンデレ乙女ゲームの転生ヒロインは、囮を差し出して攻略対象を回避する。はずが、隣国の王子様にばれてしまいました(詰み)

瀬里@SMARTOON8/31公開予定
恋愛
 ヤンデレだらけの乙女ゲームに転生してしまったヒロイン、アシュリー。周りには、攻略対象のヤンデレ達が勢ぞろい。  しかし、彼女は、実現したい夢のために、何としても攻略対象を回避したいのだ。  そこで彼女は、ヤンデレ攻略対象を回避する妙案を思いつく。  それは、「ヒロイン養成講座」で攻略対象好みの囮(私のコピー)を養成して、ヤンデレたちに差し出すこと。(もちろん希望者)  しかし、そこへ隣国からきた第五王子様にこの活動がばれてしまった!!  王子は、黙っている代償に、アシュリーに恋人契約を要求してきて!?  全14話です+番外編4話

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない

ラム猫
恋愛
 幼い頃に、セリフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セリフィアはそれを喜んで受け入れた。  その後、十年以上彼と再会することはなかった。  三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セリフィアはその場を離れた。  しかし治療師として働いているセリフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。  それどころか、シルヴァードはセリフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。 「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」 「お願い、セリフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」 ※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。 ※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

転生先は推しの婚約者のご令嬢でした

真咲
恋愛
馬に蹴られた私エイミー・シュタットフェルトは前世の記憶を取り戻し、大好きな乙女ゲームの最推し第二王子のリチャード様の婚約者に転生したことに気が付いた。 ライバルキャラではあるけれど悪役令嬢ではない。 ざまぁもないし、行きつく先は円満な婚約解消。 推しが尊い。だからこそ幸せになってほしい。 ヒロインと恋をして幸せになるならその時は身を引く覚悟はできている。 けれども婚約解消のその時までは、推しの隣にいる事をどうか許してほしいのです。 ※「小説家になろう」にも掲載中です

転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜

具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、 前世の記憶を取り戻す。 前世は日本の女子学生。 家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、 息苦しい毎日を過ごしていた。 ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。 転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。 女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。 だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、 横暴さを誇るのが「普通」だった。 けれどベアトリーチェは違う。 前世で身につけた「空気を読む力」と、 本を愛する静かな心を持っていた。 そんな彼女には二人の婚約者がいる。 ――父違いの、血を分けた兄たち。 彼らは溺愛どころではなく、 「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。 ベアトリーチェは戸惑いながらも、 この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。 ※表紙はAI画像です

モブ転生とはこんなもの

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。 乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。 今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。 いったいどうしたらいいのかしら……。 現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。 他サイトでも公開しています。

処理中です...