国一番の淑女結婚事情〜政略結婚は波乱の始まり〜

玉響

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本編(アルフォンシーナ視点)

29.異変

ブルーノの姿が見えなくなると、アルフォンシーナは小さく溜息をついて再び椅子に腰を下ろした。

先程と同じように、ダンスに興じる人々をぼんやりと眺めるが、ブルーノの言葉が頭から離れなかった。

確かにあのとき、ベルナルドは助けに来てくれなかった。
でも、会場のどこかであの騒ぎを見ていた筈だ。
アルフォンシーナは「ベルナルドに蔑まれる」という事しか考えなかったが、ブルーノの言う通りベルナルドはアルフォンシーナを助ける事だって出来た筈だ。

それだけではない。
この舞踏会の主催者である国王も、あの騒ぎに気が付かなかった筈はない。それなのに、取り成しをするわけでもなく、ただ静観していただけだった。

結局アルフォンシーナを助けてくれたのは、面識のないに等しいヴァレンツィ公爵夫人だけだった。

一番頼れるであろうアルフォンシーナの実家の両親・パルヴィス伯爵夫妻は、領地にいるために舞踏会には出席はしていないというのも大きいが、やはり今一番頼りにしたいのは、他でもないベルナルドだった。

「所詮、政略結婚で嫌々娶った妻など………旦那様には厄介者でしかない、ということよね………」

誰の耳に届くこともないような、小さな声で呟いた言の葉は、軽快なワルツの中へと消えていく。
正直、アルフォンシーナの心はもう、限界だった。
この舞踏会の会場にも、ベルナルドのとなりにも自分の居場所は存在しない。
どんなに努力をしても、ベルナルドはきっと一生、アルフォンシーナを妻として認めてくれないだろう。

「………分かっているのに………、分かっていたのに…………」

どうしてこんなにも、心が苦しいのだろう。
アルフォンシーナは椅子に腰掛けたまま前屈みになり、胸をぎゅっとと押さえつけた。

最早肉体的になのか、精神的になのかも分からない位に、心から滲み出た苦痛が、じわじわと全身に広がっていく。
それはまるで、ゆっくりと広がっていく毒のようだった。

「……………っ」

喘ぐように、浅く、早く呼吸を繰り返すが、全く状況は良くならなかった。
終いには、頭のほうからゆっくりと血の気が引いていくような感覚さえ覚える。

椅子に座っている事すらも苦痛で、アルフォンシーナは肘掛けの部分に縋るように捕まり、浅い呼吸を繰り返した。
と。

「………具合が、悪いのか?」

アルフォンシーナのすぐ頭上で、聞き覚えのある低い声が響いた気がした。
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