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本編(アルフォンシーナ視点)
81.公爵夫人の真意
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ビアンカの事件の事を話していた筈なのに、いつの間にかベルナルドとの結婚生活に対する不安について吐露していた事にアルフォンシーナは気がついた。
「全てわたくしの努力が足りないのだということは分かっているのです。我慢が足りない事も。………それでもわたくしは………」
アルフォンシーナは歩きながら、悲しそうに俯いた。
今まで誰にも話したことのない不安を、ただの顔見知り程度のヴァレンツィ公爵夫人に話してしまったのは、おそらく公爵夫人が醸し出す、温かな雰囲気のせいだろう。
「………わたくしの経験上、男女の関係が上手くいかないのは、大抵殿方の方が問題なのよ」
静かにアルフォンシーナの話を聞いていた公爵夫人は、またアルフォンシーナの方をちらりと見た。
「………あなたも、自分の事を責めてばかりでは、自分が苦しくなってしまうわ。もっと自分自身を大切になさいな」
公爵夫人はそう言ってアルフォンシーナを励ますと、今度はしっかりとアルフォンシーナの方を振り返って立ち止まった。
「…………この先の廊下の突き当りの部屋に、シルヴェストリ侯爵が居るはずですよ。後は一人で行きなさい」
ゆったりとした動きで、ヴァレンツィ公爵夫人は廊下の先を指さした。
「公爵夫人のご厚意に、心から感謝申し上げます」
アルフォンシーナは深くお辞儀をしながら謝意を述べた。
だが、どうしても気になることがあって、ほんの少し、顔を上げる。
「………ですが、殆ど関わりのないわたくしの為に、何故ここまでして下さるのです?この前の舞踏会の時もそうでしたけれど………」
あまりにもタイミングよく現れる公爵夫人は、まるでアルフォンシーナが困るということを予め分かっていて、アルフォンシーナを助けるためにその場にいたような、そんな気さえしてしまう。
流石にそれは自意識過剰だろうが、実際のところ、彼女がいなければどうなっていたのか見当もつかない。
「………わたくしは、わたくしの思う通りに動いているだけです。それ以外に深い理由など何もありませんよ」
公爵夫人はきっぱりとそう言い切ると、アルフォンシーナに向かって、微笑んだ。
納得のいく理由ではなかったが、誇り高い彼女らしい答えだと思った。
アルフォンシーナはもう一度、深い謝意を込めてお辞儀をしたのだった。
「全てわたくしの努力が足りないのだということは分かっているのです。我慢が足りない事も。………それでもわたくしは………」
アルフォンシーナは歩きながら、悲しそうに俯いた。
今まで誰にも話したことのない不安を、ただの顔見知り程度のヴァレンツィ公爵夫人に話してしまったのは、おそらく公爵夫人が醸し出す、温かな雰囲気のせいだろう。
「………わたくしの経験上、男女の関係が上手くいかないのは、大抵殿方の方が問題なのよ」
静かにアルフォンシーナの話を聞いていた公爵夫人は、またアルフォンシーナの方をちらりと見た。
「………あなたも、自分の事を責めてばかりでは、自分が苦しくなってしまうわ。もっと自分自身を大切になさいな」
公爵夫人はそう言ってアルフォンシーナを励ますと、今度はしっかりとアルフォンシーナの方を振り返って立ち止まった。
「…………この先の廊下の突き当りの部屋に、シルヴェストリ侯爵が居るはずですよ。後は一人で行きなさい」
ゆったりとした動きで、ヴァレンツィ公爵夫人は廊下の先を指さした。
「公爵夫人のご厚意に、心から感謝申し上げます」
アルフォンシーナは深くお辞儀をしながら謝意を述べた。
だが、どうしても気になることがあって、ほんの少し、顔を上げる。
「………ですが、殆ど関わりのないわたくしの為に、何故ここまでして下さるのです?この前の舞踏会の時もそうでしたけれど………」
あまりにもタイミングよく現れる公爵夫人は、まるでアルフォンシーナが困るということを予め分かっていて、アルフォンシーナを助けるためにその場にいたような、そんな気さえしてしまう。
流石にそれは自意識過剰だろうが、実際のところ、彼女がいなければどうなっていたのか見当もつかない。
「………わたくしは、わたくしの思う通りに動いているだけです。それ以外に深い理由など何もありませんよ」
公爵夫人はきっぱりとそう言い切ると、アルフォンシーナに向かって、微笑んだ。
納得のいく理由ではなかったが、誇り高い彼女らしい答えだと思った。
アルフォンシーナはもう一度、深い謝意を込めてお辞儀をしたのだった。
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