国一番の淑女結婚事情〜政略結婚は波乱の始まり〜

玉響

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本編(アルフォンシーナ視点)

89.シルヴェストリ侯爵家にて

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シルヴェストリ侯爵邸へと戻ったアルフォンシーナが一人馬車を降りようとすると、ベルナルドが当然のようにエスコートをしてくれた。
この屋敷に初めて来た時の苦い記憶とは随分と違っているのを、『進歩』というのだろうかと思いながらも、ベルナルドに恐る恐る彼に体重を預けた。

「旦那様!それに奥様も………!」

エントランスホール入ると、オリヴァーや使用人たちが、安堵したような表情を浮かべ、出迎えてくれた。

「話は聞いた。…………状況は?」
「奥様が王城に向かわれた時から、変わっておりません。相変わらずタルディッリ男爵家は知らないとの一点張りのままで………手がかりも全くありません」

恐縮しながらオリヴァーが答えると、ベルナルドは顔を顰めて頷いた。

「そうか」

仁王立ちになったまま集まった使用人たちをぐるりと見渡す。

「後のことは私が指揮を執る。今日はもう夜も更けた。皆下がれ」

ベルナルドが実に堂々とした態度でそう宣言すると、使用人たちはお互いに顔を見合わせながら、戸惑っているようだった。
普段、屋敷のことについても無関心なベルナルドがこうして指示を出す事自体が珍しいことなのだろう。

「………しかし……」

あからさまに困惑したオリヴァーがベルナルドの顔色を窺う。
すると、ベルナルドは再び声を上げた。

「下がれと言ったのが、聞こえなかったか?」

聞いたこともないようなベルナルドの強い口調に、使用人たちは慌てて頭を下げると、一人、また一人とその場を後にする。
ベルナルドの態度は、これ以上この件に関わることは許さないと言っているかのようだった。
そんなベルナルドの様子に違和感を覚えながらも、アルフォンシーナがその場に立ち尽くしていると、残っていたソフィアに向かってベルナルドが声を掛けた。

「私は今からビアンカの件でしなければならないことがある。…………彼女のことを、くれぐれも頼む」
「………畏まりました」

いつものアルフォンシーナに対するベルナルドの態度を知っているソフィアも、対応の落差に戸惑っている様子だったが、さすがはベテランの侍女といったところだろうか。
落ち着いた様子でお辞儀をするとアルフォンシーナの方へ歩み寄る。

アルフォンシーナは心配そうにベルナルドの方を見ると、彼は何も言わずにただ穏やかな笑顔を見せたのだった。
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