国一番の淑女結婚事情〜政略結婚は波乱の始まり〜

玉響

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本編(アルフォンシーナ視点)

100.最悪の事態

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机に近づくと、更に鉄錆の匂いは濃くなる。
緊張のためか、指先がどんどん冷たくなっていくのを、アルフォンシーナは感じる。
それと比例するように、苦しい程に速くなる胸の鼓動を抑え込みながら、アルフォンシーナは書類が積み上がった大きな机を回り込んだ。

ーーーと。
机の影に、何か黒い大きな塊が見えた。

「…………だ………んな、さま………?」

は彼などでは決してない、と思うように努力をしても、どうにも否定しきれなかった。
何故なら、闇の中でもはっきりと判別できるハニーブロンドと、先程面会した時に彼が纏っていた衣服が目に入ってしまったからだ。

アルフォンシーナの声に、彼からの返事はない。
それどころか、床に倒れ込んだまま、ぴくりとも動かなかった。

どう考えても、普通の状況ではない。
だが、早くベルナルドの容態を確認しなくてはと思うのに、全く体がいうことを聞かなかった。

「旦那、さま………」

微かに動いた唇の隙間からベルナルドを呼ぶと、突然アルフォンシーナの体は膝のあたりから一気に崩れ落ちた。
それが偶然倒れたベルナルドの頭部付近に尻餅をつく形になる。

「あ…………」

何とか体勢を整えてベルナルドの状態を確認しようとアルフォンシーナが床に手をついた、その瞬間。

べちゃっ、という水音がして、同時に手に何か液体が付着した気がした。

「………………?」

何故このような場所で水の音が響くのだろう。
アルフォンシーナは恐る恐る、床についた手をかざして、様子を窺う。
すると、丁度燭台の明かりに照らされた己の右手が丁度目に入った。
真っ赤に染め上げてあるかのような様子に、アルフォンシーナはただ固まった。

「……………っ!」

途端にアルフォンシーナは声にならない悲鳴を上げるのが精一杯で、その場から動くことすらも出来なかった。

「う………」

その時、微かな呻き声がまた聞こえてきた。
アルフォンシーナの視線は、必然的に、ベルナルドに向けられた。

蹲るように丸まった体勢のまま、ベルナルドは、脇腹の辺りを押さえ込んだ状況のまま、完全に意識を失っているようだ。
それでも、呻き声が聞こえるということは、まだ死が彼を引き込んでしまった訳ではないのだろう。
アルフォンシーナはそっと、ベルナルドの肩に触れた。
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