婚約者の断罪

玉響

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13.バイロン様の笑顔

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転倒した拍子に、ドレスも………顔にも汚れが付いてしまいました。

「あなたみたいな冴えない令嬢にはお似合いの格好だわ!」

泥だらけになった私を、マティルダ嬢達が取り囲んで、笑いはじめたその時でした。

「随分と楽しそうだけれど、一体何をしているんだい?」

こちらに向かって、バイロン様が歩いてらっしゃいました。
………どうしましょう。笑顔で、お別れをしようと思っておりましたのに、今、私は泣き出してしまいそうです。

「ば、バイロン様………」

マティルダ嬢達は、さっと私に視線を走らせた後、気まずそうに曖昧な笑みを浮かべられました。

「どうしたんだい?私は、仲間に入れてくれないのかな?」
「あ………いえ、その………」

エリッサ嬢がしどろもどろになりながら、目を泳がせています。
そして、近づいて来たバイロン様は、令嬢方の足元に転がって泥だらけになった私を見つけたのです。

「ミリー、その格好は………」

バイロン様が驚いたように私をみていらっしゃいます。
私は、自分がとても惨めに思えて、俯きました。

「………ようやく尻尾を出したね」

バイロン様は、お召し物が汚れるのも気になさらず、私を助け起こしてくださいました。そして、ハンカチーフて私の顔を拭うと、ぎゅっと抱き締めてくださいました。
訳が分からなくて戸惑う私をよそに、バイロン様は令嬢方に不敵な笑顔を向けられました。

「私の大切な婚約者であるミリアリア・ビバーナムに嫌がらせをして傷つけている令嬢方がいると聞いてね。控えめで優しい我が婚約者殿は、告げ口をしたり、騒ぎ立てたりはしない。だから、君たちがミリーにどんな事をしているのか、決定的な証拠を見つけるのに苦労していたんだけれど………流石にこの人数の観客がいる中での君たちの振る舞いは、言い逃れができなくなるよね?」

バイロン様か、満面の笑みで微笑んでいらっしゃいますが、目が笑っていません。
………でも、観客とは一体何でしょう?
私は辺りを見回します。すると、いつの間にか周囲には、今日のパーティーの招待客の方々やゼフィランサス侯爵家の使用人達がいつの間にか集まってきていました。

「バイロン様、違うのです!これは………」
「………何が違うというのかな?私が何も知らないとでも思っているのかい?」

そう仰るバイロン様の声はとても低く、聞く者を震え上がらせるような声でした。
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