冒険者よ永遠に

星咲洋政

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序章

冒険者支援機関

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「はい、冒険者登録は完了です。これで晴れて冒険者デビューですね、おめでとうございます。」

 試験に合格した私はついに冒険者としての資格を取得することができた。迷宮を擁する都市ヴァロンでは、冒険者免許を持つものだけが迷宮の探索をすることが許される。聞く話によると、無駄な犠牲者を出さないための措置だそうである。

「さて、申し遅れました。私は、冒険者支援機関の責任者、コロン・ヘンダーソンと申します。冒険者支援機関では、冒険者の方々の下宿の確保や物資の販売、銀の弾丸の補給などを行っています。これから長い付き合いになることと思います。よろしくお願いします。」

何か困ればここに駆け込めば何とかなりそうだな、ありがたい。さて、銀の弾丸とは一体なんなのだろうか。聞いたことがない。

「銀の弾丸を存じ上げないのですね。ということは迷宮の魔物についてもあまりご存じではないものとお見受けします。ここの迷宮の魔物は通常の武器では死なないのです。理由は全く解明されていません。ですが、迷宮が生まれてから今に至るまで、討伐の報告があげられたことは一度も無いのです。」

なんと恐ろしい事実であろう。試験の時に遭遇した狼とは比べ物にならないくらいの脅威度である。

「なので迷宮の魔物の討伐にはこの銀の弾丸を用います。これであれば魔物を死に至らしめることが可能です。あなたも今日から冒険者です。銀の弾丸を渡しておきます。」

二つの弾丸は怪しく銀色に光る。輝きを見つめていると命を吸い込まれそうな気がしてくる。どうやらこの弾丸は一度に二つまでしか貰うことが出来ないみたいだ。迷宮においてこの弾丸以外で魔物を仕留めることはできない。すなわちこのアイテムの枯渇は死を意味することになる。使いどころの見極めだけではなく、魔物との戦闘は極力避ける努力をした方がよさそうだ。

「あなたの下宿先としてアンナの宿の部屋を用意させていただきました。この後用事が無いようでしたら顔を出しておいてください。」

 都市ヴァロンは迷宮を中心に栄える街である。ある日突如としてこの迷宮が発見された。王国により調査隊が組まれ、迷宮の周りに探索拠点が設置されることになった。その拠点が徐々に規模が大きくなった結果、今の都市ヴァロンが誕生したそうである。そしてそれはつまり、迷宮はそれだけ長い間踏破されていないということだ。調査が長引くにつれて多くの人が集まる、そんな調査隊員や冒険者の住処としてアンナの宿も必然的に生まれたのだろう。ヴァロンの街並みはさほど綺麗ではない。建物の様式もバラバラでこの街の成立を彷彿とさせる。そうしている間にアンヌの宿に到着した。

「あんたが新米の冒険者かい?私はここの元締めのアンナさ。話はコロンから聞いているよ。最近空いた部屋があるんだあんたの部屋はそこさ。」

アンナの宿は木造の建築、丸太小屋だ。階段から二階に登ると吹き抜けから一階のカウンターが見下ろせる。私がこれから住むことになる部屋は二階の端にあるみたいだ。部屋の中はベッドと机、椅子がそれぞれ一つずつ。机の上にはランプが置かれている。この宿は個室なようだ、少し安心した。試験も終え今日は疲れた。ここらで一眠りして明日に備えるとしよう。
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