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1章
銃撃戦
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異様な空気が流れる。入り口には試験の監督者もいなければ挑戦者もいない。立ち入り禁止のテープが貼られているだけで、ゴーストタウンの如く閑散としている。地面には金属製のコップが転がっている。飲み物を飲んだ跡だ。何者かが私と同じようにして事態に当たろうとしたのであろう。相変わらず木々は生い茂る、懐かしい雰囲気だ。青々としていた木々は、妖しく紅く染まっている様な気がする。
私は地図を広げて道順を確認する。この迷宮は古の石室と同じく、鍵を回収しなければいけない。祠があった場所は覚えている。二度は遠回りしてやるものか、ここだ。祠で石を回収した後は早々にその場を離れる。背後では祠が崩れ去る音が聞こえた。そうして私は危なげなく迷宮を攻略していった。しかしそういえば、この迷宮に入ってからというものも一度も魔物に遭遇していない。誰かが挑戦するときだけ出現するような仕組みにでもなっているのだろうか。そうこうしている間に、私は行く手を阻む壁の前まで到着してしまった。その壁をスルーするべく鞄から祠の石を掲げた。壁は目映い光に包まれていく。壁はガラガラと崩れ去っていく。この先に冒険者ルメールがいるはずである。
「パァァアン!!!」
砂煙の中から銃声が聞こえる。風切り音が聞こえた。私の顔の僅かに右を弾丸が通過していったようだ。背後で弾が跳ねる音が聞こえる。一瞬の出来事に微動だにすることができなかった。銃声の方向から何者かの声が聞こえる。
「なんだ貴様は、誰だ。」
その瞬間私は察した。彼は待ち伏せをしていたのだ。迷宮を占拠することによって来ざるをえないであろう人物を。
「ここに来た…ということは……、ふはははは、そういうことか。」
冒険者ルメールは赤い剣を右手に握る。左手には硝煙を吹かせる銃が一挺。赤い剣の切っ先をこちらに向ける。
「俺の名はルメール、冒険者だ。我が剣の錆となるがいい。」
隼の如く素早く動き瞬く間に背後を取る。赤い剣は私の首目掛けて襲いかかってきた。剣で受けるだけで精一杯。辛うじて致命傷だけは避けた。
「皆まで言わずとも気づいているだろう、私がお前に撃って見せたのは銀の弾丸だ。俺のこの行いをその身に受けた貴様を生きて帰す訳にはいかない。」
ルメールは弾を込めるため、腰に巻いた鞄から銀の弾丸を探し始めた。次弾装填が間に合うのはまずい、何かに身を隠して好機を狙うのはどうだろうか。戦場で思考の数瞬は時に大きな仇となる。装填はとっくに終わり、銃口が点に見える。照準が眉間に向けられた。
「パァアアン!!」
私はその隙を見逃さなかった。ルメールの右腕に斬りつけ甚大な傷を負わせた。私は咄嗟に地面を撃った。相手の動揺を誘い、銃を撃たせないことに成功した。我々冒険者には銀の弾丸の恐ろしさが骨の髄まで染み込んでいる。銃声を聞き、平静を装える者は居ない。
「っがあぁぁ……く…そ……っ!やりやがったな!」
銀の弾丸はお互いに残り一発。ルメールの銃には既に装填が完了している。
私は地図を広げて道順を確認する。この迷宮は古の石室と同じく、鍵を回収しなければいけない。祠があった場所は覚えている。二度は遠回りしてやるものか、ここだ。祠で石を回収した後は早々にその場を離れる。背後では祠が崩れ去る音が聞こえた。そうして私は危なげなく迷宮を攻略していった。しかしそういえば、この迷宮に入ってからというものも一度も魔物に遭遇していない。誰かが挑戦するときだけ出現するような仕組みにでもなっているのだろうか。そうこうしている間に、私は行く手を阻む壁の前まで到着してしまった。その壁をスルーするべく鞄から祠の石を掲げた。壁は目映い光に包まれていく。壁はガラガラと崩れ去っていく。この先に冒険者ルメールがいるはずである。
「パァァアン!!!」
砂煙の中から銃声が聞こえる。風切り音が聞こえた。私の顔の僅かに右を弾丸が通過していったようだ。背後で弾が跳ねる音が聞こえる。一瞬の出来事に微動だにすることができなかった。銃声の方向から何者かの声が聞こえる。
「なんだ貴様は、誰だ。」
その瞬間私は察した。彼は待ち伏せをしていたのだ。迷宮を占拠することによって来ざるをえないであろう人物を。
「ここに来た…ということは……、ふはははは、そういうことか。」
冒険者ルメールは赤い剣を右手に握る。左手には硝煙を吹かせる銃が一挺。赤い剣の切っ先をこちらに向ける。
「俺の名はルメール、冒険者だ。我が剣の錆となるがいい。」
隼の如く素早く動き瞬く間に背後を取る。赤い剣は私の首目掛けて襲いかかってきた。剣で受けるだけで精一杯。辛うじて致命傷だけは避けた。
「皆まで言わずとも気づいているだろう、私がお前に撃って見せたのは銀の弾丸だ。俺のこの行いをその身に受けた貴様を生きて帰す訳にはいかない。」
ルメールは弾を込めるため、腰に巻いた鞄から銀の弾丸を探し始めた。次弾装填が間に合うのはまずい、何かに身を隠して好機を狙うのはどうだろうか。戦場で思考の数瞬は時に大きな仇となる。装填はとっくに終わり、銃口が点に見える。照準が眉間に向けられた。
「パァアアン!!」
私はその隙を見逃さなかった。ルメールの右腕に斬りつけ甚大な傷を負わせた。私は咄嗟に地面を撃った。相手の動揺を誘い、銃を撃たせないことに成功した。我々冒険者には銀の弾丸の恐ろしさが骨の髄まで染み込んでいる。銃声を聞き、平静を装える者は居ない。
「っがあぁぁ……く…そ……っ!やりやがったな!」
銀の弾丸はお互いに残り一発。ルメールの銃には既に装填が完了している。
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