冒険者よ永遠に

星咲洋政

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3章

魔王討伐の命

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「魔剣ロシュフォールだと…?!まさかその名前をこんなところで聞くことになるとは思わなかった。」

 前責任者であったコロン・ヘンダーソン亡き後は、冒険者支援機関の責任者は海軍卿マライタ・スレイミーナが代わりに就任することになったそうだ。彼女は複雑な難しい立場の人間だ。旧王朝、スレイミーナ朝の最後の王女様が彼女である。コロンと友好関係にあった彼女は、国王が討たれた後も処刑されることなく海軍局の局長として重用されることとなった。彼女はスレイミーナ王国の正統な血筋の人間である。故に、「聖杖アンヌ」や「魔剣ロシュフォール」といったモノにも詳しいはずだ。

「魔剣ロシュフォールが初めて史料に登場するのは『原初の物語』での記載からだ。我々が生きる「スレイミーナ王国」の最古の史料に既にその存在が記されているということ。つまりそれだけ昔から伝承されている存在だということだ。そして聖杖と魔剣は伝説上の存在なんかではない、実在するんだ。」

王族である彼女がそう言うのならまず間違いはないのであろう。魔剣ロシュフォールは存在し、私はまさに神話に挑戦しようとしていると。あのときの話を信じるのであれば、前の所有者は勇者ロンであったみたいだ。挑戦する前に魔剣について可能な限り情報を集めたいところだ。

「魔剣ロシュフォールについて知りたいと。わかった、構わない。ヴァロン迷宮群の踏破はガダルカナル・ヘンダーソン国王の王命でもあるからな。そうだなまずは魔剣のことの前に勇者ロンについての話をしようか。このセカイについてまずは知るがいい。」

「ロン・スランカ、彼が一番最近の勇者だ。勇者とは人間の枠からはみ出る存在。スレイミーナ王家にとっては癌なんだ。」

私は耳を疑った。マライタが言っていることがなんの話なのかさっぱり分からなくなってしまった。勇者が癌だなんて。勇者を勇者としてまつりあげているのは王国なのではないか。

「かつての王家は人間に対してとある魔法をかけた。中には自らの力でそれに抗う個体がほんと時々出てきた。それを殺処分するための作業こそが「魔王討伐の命」であった。」

「そして勇者は聖杖アンヌを持たされ、魔剣ロシュフォールを持つ魔王を討つための冒険に出る。聖杖アンヌは破壊の能力を持っていて、その能力の中に、勇者の死をトリガーにして破壊の一撃を解き放つシステムが存在する。「魔王討伐の命」とは異端児を処分した上に、手を汚すことなく魔王にダメージを与えることのできる一石二鳥の策だった。」

私がこんなことを知ってしまってよかったのだろうか。おそらくこれは門外不出の最高機密の情報のはずだ。スレイミーナ王家以外がこれを知れば、王国の根本が揺らぎかねない事実である。これをなぜ私に話すんだ。なぜだ、私に何を求めている。

「お前は今から神話に挑むのであろう?この話は聖杖アンヌと魔剣ロシュフォールに関わる重要な事実だ。恐らく私がここで話さなくてもいずれ知ることになる事柄だ。ならば事前に知っておくべきだろう。」
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