しろいはな

伊藤 礼次郎

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たねをまく

にの花 入学式

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「おはよー」
「あ、りぼんまがってるー、直すよー」
「え、まがってるー?」

意味がわからない。今日は入学式だ。なんで、入学式に既に友達ができるのか。
「田中さんここだよ」
「あ、ぁりがとう…」
自分の入るスペースが不明で人に迷惑をかけ、ギリギリの会話しかできない私をよそめに既に会話できる人がいるなんて不思議でならない。
入学式とはいっても、所詮定時制。クラスはひとつしかないし、そもそも体育館なんて開けた空間ではやらないらしい。式自体は昼間なのが少し変な気持ち。
「よーし、じゃあ返事の練習少しして、ちょっとしたらはいるからなー」
熱血そうな担任が言う。嫌いじゃないけど、得意ではないかな。次々呼ばれて、本番でもないのに私の鼓動はドキドキと、音をたてる。あと二人、あと…
「佐山ー」
「はーーい」
「田中ー」
「は、い」
どうにか上ずることなく声を出せる。自覚はあるけど、自意識過剰なんだよね…。
「じゃあ入場するよー」
いつの間にか全員点呼が終わって入場になる。てくてく歩いて階段を一番上まで上がって、奥へ奥へと入っていく。体育館は反対側だ。
ふと、幼なじみのことを思い出した。皮肉なことにこの学校には全日制と定時制の二つが存在する。全日制の人たちはクラスが複数あるのだろう。入学式は同時に体育館でも行われていた。そこに、幼なじみの女の子が一人、いるから。
私の脳ミソなんてよそに入学式は緩やかに、流れていく。入場はわりとすんなりおわる。どうでもいい祝辞だのなんだの。
狭く、白い空間にただ一年生と保護者、数名の教員が詰め込まれている。前にギリギリ当たるか当たんないかの椅子の位置で立ち上がるのがいやだ。でも点呼は近づいている。
「黒沢」
「はぁい」
返事をしてたっている。返事をしてから、立ってからだときっと目立つ。
「佐山」
「はーい」
つぎ、だ。
「田中」
「はい」
うん、普通にできた。大丈夫そう。誰も気にしてない。これで座ってって言われるまで待つだけ!
「38名、着席」
ふう、これで入学式は無事に終わりだ。少し気が抜けたようなきがする。
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