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新たな問題

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エリザベス王女と兄の婚約が正式に決定した。

グレンヴィル公爵家は派閥争いには中立をずっと貫いているし、王妃が私たちを気に入っている事もあり、爆速で二人の婚約が決まった。

エリザベス王女の話だと…国王と王妃は、反対する様子は全くなく、超ノリノリでグレンヴィル公爵邸へ使いの馬車を走らせたらしい。

兄から相談されていたとはいえ、その日の内に王家から手紙が届き、両親はとても驚いていたな。
だって…婚約に乗り気な手紙が届き、次の日一家揃ってお城に行くと、即婚約決定だったもの。

自分がまさに望んだ展開なのに、あまりにトントン拍子で事が進むから驚きの連続だった。

だけど、エリザベス王女と兄は本当に嬉しそうで、二人でニコニコしている姿は、とても、とっても尊かった。

「ビーチェ、ビーチェ!ちゅっ♡」

「え、えりーさまっ…」

それから…兄と婚約した事で、家族意識が高くなったせいか…エリザベス王女から、頭や髪、額や頬に良くキスされるようになった。

「はぁ…ビーチェ、可愛い…とっても可愛い…」

絶世の美少女が何をおっしゃる…エリザベス王女こそが世界で一番可愛いのに決まっている。

そう…今日も兄とお城にやってきた私は、エリザベス王女の部屋でお茶をしていた。
兄とエリザベス王女は、長椅子に寄り添って座っている。
もうすっかりラブラブみたいで、エリザベス王女から密着していた。
そして私は、エリザベス王女のお膝に乗せられ、後ろから抱き締められながら、すんすんとうなじの匂いを嗅がれていた。

背中に、二つのマシュマロが、ふにゅふにゅと当たる…。
え…十歳にしては…えっ…王女のロイヤルおっぱい…しゅごい…。
推せる…。
尊…。

エリザベス王女からの好意は、更に熱烈さを増したような気がする。
ちなみに…『お姉様』と呼んだ方がいいのか聞いてみると、『それは結婚してからのお楽しみなのっ♡』って恍惚とした顔で言われてしまった。

「…ビーチェの匂い…しゅきぃ…いい匂い…」

「え…?あ、あの…」

「ふふっ…ほら、ビーチェ?口を開けて?」

私とエリザベス王女の様子を見て、兄が微笑ましそうに優しい笑みを浮かべ、横から高級菓子を私に『あーん』してくれた。
…美味しい。
相変わらずクールな様子の兄だが、めちゃくちゃデレデレしている事がわかる。
あ…これ、私が好きなメレンゲ菓子…というか、良く見ると私の好きなお菓子ばかり並んでいる。


ーーーなんだ、この空間は…。


あくまで私はオマケで、この空間は兄とエリザベス王女のためのものである。
なのに…二人は一応イチャイチャしているが、主に私を甘やかしている…。
いくら八歳の年下女児に対してでも、やり過ぎな様な気がする。

ーーーあっ。
何でだろう…と考えていると、私は気づいてしまった。

「…っ!!」

も、もしかしてっ…私っ、二人の邪魔してる…?
失念していたっ…!
二人は優しいから、年下の私がいると『面倒を見なくては』と思ってしまうのかもしれない…!

どうしようっ…でも、今後、シリルがエリザベス王女に接触してくる可能性は大いにある。
出来る限り、二人のそばにいたい…。

兄と婚約した事で、グレンヴィル公爵邸にエリザベス王女が頻繁に足を踏み入れる事になるから、対策を取るようには誘導した。
私が『エリー様!いっぱい遊びに来てくださいねっ!あっ…でも…またローレンス公爵令息様が、エリー様をいじめにきたらどうしようっ…』って国王と王妃に聞こえる様に言ったら、グレンヴィル公爵邸にもローレンス公爵以外はバッチリ出禁になりました。

お城に立ち入り禁止になり、エリザベス王女に会えないシリルが、グレンヴィル公爵邸に『チャンス』と会いに来る可能性があるからだ。
シリルならありえる。
いけしゃあしゃあと、アポ無しで来る事だろう。

あの何でも自分の都合の良いように考える男の事だ、もう兄の婚約者なのに望みがあると思って、非常識なアプローチをしてくるかもしれない。
だって、あれは確実にエリザベス王女に惚れているから…油断はできない。
移動中の馬車を無理矢理止めてきたり、外出中に後を追ってきたり、もしかしたら…兄を挟んで接触しようとしてくるかもしれない。

エリザベス王女に会うためなら手段を選ばないだろう…例えば、私と婚約して会わざるを得ない状況をつーーーーーーーーーえ…?


ーーー私は今、最悪な可能性に気づいてしまった。


そうだっ…グレンヴィル公爵家と王家に繋がりが出来た事で、うちと関係を持ちたがる家門は前よりもかなり増えたはずだ。

その中で一番簡単で確実な方法は、私と結婚する事。

特にローレンス公爵家とスペンサー公爵家は、グレンヴィル公爵家に権力が集中するのを避けるため、私と年の近い息子たちをゴリ押ししてくるかもしれない。

いや、私に知らされていないだけで、もうこの二家門を筆頭に色んなところから手紙や話が来ているはず…!

まずい…!
うちの両親や兄は、私がしたくないなら結婚しなくても良いと言ってくれるだろうけど、問題はそこではない。

誰とも婚約しない事で、シリルにしつこく付き纏われる可能性が物凄く高いっ…!
それではこちらが避けていても、『ハーレム要員』たちに目をつけられてしまうっ…!!

だからといって、無難な方と婚約しても…あの手この手と手を回してきそうだ。
ワンランクでも爵位が低いと、圧力をかけてられて、すぐに婚約破棄をさせられてしまう。

シリルなら悪気なしに当然という顔で絶対やらかす。
まるで自分がスーパーヒーローにでもなったつもりで『この方がみんな、幸せになれると思うんだ』とか『無理にこの人と婚約する事はないよ』とか斜め上過ぎる事を言ってくるだろうな。
恩着せがましく。
そうすれば全員が幸せになれると本気で思っているから、本当にたちが悪い…!
自分の都合の良い事が、全員の幸せに繋がるとでも思っているのだろう。


………なら、選択肢は一人しかいない。


スペンサー公爵家の嫡男、ガイア・スペンサーしか。

さっそく案を練って動かなければ…まずは、届いた手紙を確認…いや…私に知らされていないなら、もう処分されているかもしれない。
では…エリザベス王女に頼み、ガイア・スペンサーをお城へ来させて四人で会うような機会を……………って、あれ?

自分の世界から戻ってくると、エリザベス王女と兄が、私を心配そうに見詰めている事に気がついた。

「ビーチェ…?暗い顔をしてどうしたの…?まさかっ、何か嫌な事があったの?」

「…誰かに、何か言われたのか?」

「……………………」

えーと…二人の雰囲気が…ほんのちょっとだけ、その…ほの暗い…これは返答に気を付けないと危なそうだ。

どうしよう…ここでガイア・スペンサーの話をいきなり出すのは、何となく良くない気がする。

まずは、これを切り抜けなくては…。
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