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第七幕 三 「もしかしたら事件とは全く関係ないのかもしれませんが、気になることではあります」
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三
霧崎は唸りながらも、自分の中でプロファイラーの話を噛み砕き、納得していた。
「とにかく、死の押し売り師については、異例過ぎて分からないことが多いということだな。逮捕に結びつくような情報は今のところないということか・・・。」
「まあ、そんなところです。」
笑顔の同意。殺人鬼についての話などしていたとは思えないほど、清々しく人好きのする竹川の笑顔だ。
霧崎はまだ唸る。
「例の警察に送られた犯行予告とやらからは、何か分からないのか?」
「いえ、自己顕示欲が強いということは分かりますが。筆跡といっても、プリンタで出力したものですし、インクや紙も大量生産された品物で、手がかりはありません。消印は都内からですが、転送されたということもありますし、指紋一つついていない用心深さでしたから。」
重ねて肩を竦める竹川。竹川にしても、情報が欲しいのだろう。でなければ、こんなところにのこのこと出向いたりしないはずだ。
まさに暗中模索。尻尾どころか、足跡すら確認できない。
広間には形容しがたい重たい空気が流れている。一日情報収集に走ったことにより、徒労感を覚えたことで、今回の依頼の困難さが浮き彫りになったようだ。実感のなかった不可能を実感する。そのために、それぞれが一日を費やしたとしか言いようがない。
だが、広間の中でそんな空気に真っ向から立ち向かうように、しっかりと大地に足をつけている男が一人。満を持して登場するのは、勿論、名探偵霧崎だ。
「皆さん。実は、俺にも報告があります。」
勿体つけながら、シチュエーションに酔いながら、霧崎は自信に満ちた声音を室内に響かせる。
広間の全員の視線が、霧崎へと集まる。
霧崎の次の言葉を待つように、室内は静寂を極め、誰一人催促を口にしなかった。
「俺は、この事件を調査するにあたり、もう一度、事件を白紙に戻して全ての情報を洗いなおすことに決めました。」
名探偵らしく自信に満ちていて、この場の主役らしく存在感に満ちている霧崎。霧崎の一挙手一投足にいたるまで、全てが注目の的だ。
「まず、俺は、昨日事務所に戻った後、この吉岡家についての情報を集められるだけ集めてみました。独自のルートを使って、それこそ何の根拠もない噂にいたるまで、徹底的に集めました。そこで、少し気になることを耳に挟んだんです。」
効果を最大限に高めるように、一拍の間を取る霧崎。名探偵たるもの、人心操作術も人心掌握術もマスターしていなくては務まらない。
「もしかしたら事件とは全く関係ないのかもしれませんが、気になることではあります。」
自信のないことを仄めかしているようではあるが、本音は逆だ。確信があるからこそ、効果的な言葉で飾りたいのだ。
「まず、この吉岡家の主、孝造さんですが。彼はビジネス上、かなり敵が多いようです。元々、彼の父親が一代で会社をここまで大きくしたということですが、息子の孝造さんは、父親とは比べ物にならないほどの横暴ぶりとか。色々と悪評が立っています。」
父親の孝造の姿をひと目でも見れば、この霧崎の言葉に大きく頷きたくなるだろう。権威主義の塊のような、頑固で気難しくいけ好かない老人だ。
「そして、次に息子の巧さんですが。彼は三年前に大学を中退してからというもの、この屋敷にこもって外に出ようとしないようです。いわゆる引きこもりというやつで、定職に就くわけでもなく、家でぶらぶらしているようです。」
「けしからん。」
警部が社会問題化している引きこもりを一蹴するように、一言呟く。
霧崎は警部に頷いて続けた。
「はい。まあ勤労は国民の三大義務の一つと言うということで。とにかく、何故中退したのかは不明です。もし、その時に何かがあったのだとしても、三年も前のことですし、この事件とは直接係わり合いがあるかどうかは分かりません。」
霧崎は唸りながらも、自分の中でプロファイラーの話を噛み砕き、納得していた。
「とにかく、死の押し売り師については、異例過ぎて分からないことが多いということだな。逮捕に結びつくような情報は今のところないということか・・・。」
「まあ、そんなところです。」
笑顔の同意。殺人鬼についての話などしていたとは思えないほど、清々しく人好きのする竹川の笑顔だ。
霧崎はまだ唸る。
「例の警察に送られた犯行予告とやらからは、何か分からないのか?」
「いえ、自己顕示欲が強いということは分かりますが。筆跡といっても、プリンタで出力したものですし、インクや紙も大量生産された品物で、手がかりはありません。消印は都内からですが、転送されたということもありますし、指紋一つついていない用心深さでしたから。」
重ねて肩を竦める竹川。竹川にしても、情報が欲しいのだろう。でなければ、こんなところにのこのこと出向いたりしないはずだ。
まさに暗中模索。尻尾どころか、足跡すら確認できない。
広間には形容しがたい重たい空気が流れている。一日情報収集に走ったことにより、徒労感を覚えたことで、今回の依頼の困難さが浮き彫りになったようだ。実感のなかった不可能を実感する。そのために、それぞれが一日を費やしたとしか言いようがない。
だが、広間の中でそんな空気に真っ向から立ち向かうように、しっかりと大地に足をつけている男が一人。満を持して登場するのは、勿論、名探偵霧崎だ。
「皆さん。実は、俺にも報告があります。」
勿体つけながら、シチュエーションに酔いながら、霧崎は自信に満ちた声音を室内に響かせる。
広間の全員の視線が、霧崎へと集まる。
霧崎の次の言葉を待つように、室内は静寂を極め、誰一人催促を口にしなかった。
「俺は、この事件を調査するにあたり、もう一度、事件を白紙に戻して全ての情報を洗いなおすことに決めました。」
名探偵らしく自信に満ちていて、この場の主役らしく存在感に満ちている霧崎。霧崎の一挙手一投足にいたるまで、全てが注目の的だ。
「まず、俺は、昨日事務所に戻った後、この吉岡家についての情報を集められるだけ集めてみました。独自のルートを使って、それこそ何の根拠もない噂にいたるまで、徹底的に集めました。そこで、少し気になることを耳に挟んだんです。」
効果を最大限に高めるように、一拍の間を取る霧崎。名探偵たるもの、人心操作術も人心掌握術もマスターしていなくては務まらない。
「もしかしたら事件とは全く関係ないのかもしれませんが、気になることではあります。」
自信のないことを仄めかしているようではあるが、本音は逆だ。確信があるからこそ、効果的な言葉で飾りたいのだ。
「まず、この吉岡家の主、孝造さんですが。彼はビジネス上、かなり敵が多いようです。元々、彼の父親が一代で会社をここまで大きくしたということですが、息子の孝造さんは、父親とは比べ物にならないほどの横暴ぶりとか。色々と悪評が立っています。」
父親の孝造の姿をひと目でも見れば、この霧崎の言葉に大きく頷きたくなるだろう。権威主義の塊のような、頑固で気難しくいけ好かない老人だ。
「そして、次に息子の巧さんですが。彼は三年前に大学を中退してからというもの、この屋敷にこもって外に出ようとしないようです。いわゆる引きこもりというやつで、定職に就くわけでもなく、家でぶらぶらしているようです。」
「けしからん。」
警部が社会問題化している引きこもりを一蹴するように、一言呟く。
霧崎は警部に頷いて続けた。
「はい。まあ勤労は国民の三大義務の一つと言うということで。とにかく、何故中退したのかは不明です。もし、その時に何かがあったのだとしても、三年も前のことですし、この事件とは直接係わり合いがあるかどうかは分かりません。」
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