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第二部
第五章 イケおじ師匠とナイショの特訓!!!㉛『経緯』
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三十一
しばらくして、ようやく気持ちが落ち着いてきた沢崎直は、まだぐずりながらも、ごしごしと涙を両手で拭って泣き止んだ。
泣き過ぎて乱れた息を軽く整えると、小さな声で呟くように告げた。
「……沢崎直です。」
それは、迷子の子供が見知らぬ係の人に、自分の名前を告げる時の響きに似ていた。
ようやく泣き止んだ眼前の人物から漏れ出た言葉の意味が分からず、師匠は聞き返す。
「さわ、何だって?」
「…沢崎直です。私の名前です。」
「さわざ……。聞いたことねぇ響きだな。何て呼べばいい?」
「……沢崎がファミリーネームで、直が名前です。」
ぐずぐず言いながらも、ようやく師匠の質問に素直に答え始める沢崎直。もうここまで来たら、何もかも白状してしまうことしか考えられなかった。どうせ嘘をついても、師匠は誤魔化せない気がしたからだ。
「ナオか……。で?何だって、お前さんはアル坊のフリしてんだ?いや、フリなのか?」
「……フリかどうかは私も分かりません。……目が覚めたら、この身体でした。」
素直に話し始めた沢崎直に、師匠は警戒を解き、剣から手を離してじっくりと話を聞くモードを見せ始めた。
「目が覚めたら?どういうことだ?寝て起きたらってことか?」
師匠が沢崎直の返答に更なる質問を重ねていく。
何でも聞かれたことは素直に答えようと決心して、沢崎直はぼそぼそと続けることにした。自分でもよく分かっていないことはそのままに、分かることは具体的にである。
「……いえ、私は元々、この世界じゃないところで生きてました。でも、ある日、お酒を飲んだ帰りに、あの、馬車みたいなのに轢かれて、あの……。」
そこまでで少しだけ言いよどむ。だが、勇気を振り絞って言葉にする。
「死にました。」
その言葉を聞いた途端、師匠が少し目を開いて驚いた。
まだ話は続きそうだと判断して、師匠はそこで言葉を挟まず、無言で先を促す。
沢崎直は素直に続けた。
「……死んだと思います。真っ暗になって、意識が途絶えました。……それで、その後、急に明るくなった気がして、……目が覚めたら、この世界で、この身体でした。……多分、この身体はアルバート氏の物で間違いない気がします……。」
「ってことは……、アル坊の身体の中に、お前さんの魂が入っちまってるってことか?」
沢崎直の説明に、師匠が一つの結論を出す。
沢崎直は師匠の結論に同意するように頷く。
「そんな感じだと、私も思います……。詳しいことは私にも全然、分かりませんけど……。」
「死霊って感じはしねぇから……、……転生ってヤツか?」
師匠が首を傾げて可能性を検討し始める。
沢崎直はそっと視線を落とし、両手を握った。
「うーん。伝説やら神話やら何やらでそんなことを聞いたこともないことはないが……、実際にとなると……な。」
眼の前の異分子の存在に、師匠は両腕を組んで唸る。
沢崎直は自分が知っていることを粗方説明してしまったので、口を閉じた。黙ったまま、師匠の反応を待つ。
師匠は唸り続けた後、眼の前のアルバート(in沢崎直)を観察し始めた。
師匠の視線を浴びながら、沢崎直は口を引き結ぶ。もう完全に事情がばれてしまった以上、どうなっても仕方がないと諦めていた。
「目が覚めたのはいつだ?アル坊は、その身体の中にいるのか?」
「目が覚めたのは、ヴィルに再会した日です。よく分からない森の洞窟の中にいて、勘を頼りに歩いたら森に出て、それで親切なお嬢さんに会って、街まで連れてきてもらいました。そこの騎士団の詰め所でヴィルに会いました。アルバート氏はこの身体の中にいるのか分かりません。少なくとも、私は魂同士で話したことはありません。それに、アルバートとしての記憶もありません。」
「ん?森の中?」
師匠が森の中というキーワードに反応する。
本日、散々ヴィルと繰り広げた会話の中にも何度も登場したキーワードだ。
「ワイルドベアーと遭遇したのも、その時か?」
「はい。大きいくまさんでした……。」
「で?くまと遭遇してどうしたんだ?記憶がなくなったのがその時でないなら、何があった?」
師匠の質問は『森のくまさん事件』の核心に迫る。
(……何て答えたらいいんだろう。)
沢崎直は、一瞬迷って言いよどんだ。
しばらくして、ようやく気持ちが落ち着いてきた沢崎直は、まだぐずりながらも、ごしごしと涙を両手で拭って泣き止んだ。
泣き過ぎて乱れた息を軽く整えると、小さな声で呟くように告げた。
「……沢崎直です。」
それは、迷子の子供が見知らぬ係の人に、自分の名前を告げる時の響きに似ていた。
ようやく泣き止んだ眼前の人物から漏れ出た言葉の意味が分からず、師匠は聞き返す。
「さわ、何だって?」
「…沢崎直です。私の名前です。」
「さわざ……。聞いたことねぇ響きだな。何て呼べばいい?」
「……沢崎がファミリーネームで、直が名前です。」
ぐずぐず言いながらも、ようやく師匠の質問に素直に答え始める沢崎直。もうここまで来たら、何もかも白状してしまうことしか考えられなかった。どうせ嘘をついても、師匠は誤魔化せない気がしたからだ。
「ナオか……。で?何だって、お前さんはアル坊のフリしてんだ?いや、フリなのか?」
「……フリかどうかは私も分かりません。……目が覚めたら、この身体でした。」
素直に話し始めた沢崎直に、師匠は警戒を解き、剣から手を離してじっくりと話を聞くモードを見せ始めた。
「目が覚めたら?どういうことだ?寝て起きたらってことか?」
師匠が沢崎直の返答に更なる質問を重ねていく。
何でも聞かれたことは素直に答えようと決心して、沢崎直はぼそぼそと続けることにした。自分でもよく分かっていないことはそのままに、分かることは具体的にである。
「……いえ、私は元々、この世界じゃないところで生きてました。でも、ある日、お酒を飲んだ帰りに、あの、馬車みたいなのに轢かれて、あの……。」
そこまでで少しだけ言いよどむ。だが、勇気を振り絞って言葉にする。
「死にました。」
その言葉を聞いた途端、師匠が少し目を開いて驚いた。
まだ話は続きそうだと判断して、師匠はそこで言葉を挟まず、無言で先を促す。
沢崎直は素直に続けた。
「……死んだと思います。真っ暗になって、意識が途絶えました。……それで、その後、急に明るくなった気がして、……目が覚めたら、この世界で、この身体でした。……多分、この身体はアルバート氏の物で間違いない気がします……。」
「ってことは……、アル坊の身体の中に、お前さんの魂が入っちまってるってことか?」
沢崎直の説明に、師匠が一つの結論を出す。
沢崎直は師匠の結論に同意するように頷く。
「そんな感じだと、私も思います……。詳しいことは私にも全然、分かりませんけど……。」
「死霊って感じはしねぇから……、……転生ってヤツか?」
師匠が首を傾げて可能性を検討し始める。
沢崎直はそっと視線を落とし、両手を握った。
「うーん。伝説やら神話やら何やらでそんなことを聞いたこともないことはないが……、実際にとなると……な。」
眼の前の異分子の存在に、師匠は両腕を組んで唸る。
沢崎直は自分が知っていることを粗方説明してしまったので、口を閉じた。黙ったまま、師匠の反応を待つ。
師匠は唸り続けた後、眼の前のアルバート(in沢崎直)を観察し始めた。
師匠の視線を浴びながら、沢崎直は口を引き結ぶ。もう完全に事情がばれてしまった以上、どうなっても仕方がないと諦めていた。
「目が覚めたのはいつだ?アル坊は、その身体の中にいるのか?」
「目が覚めたのは、ヴィルに再会した日です。よく分からない森の洞窟の中にいて、勘を頼りに歩いたら森に出て、それで親切なお嬢さんに会って、街まで連れてきてもらいました。そこの騎士団の詰め所でヴィルに会いました。アルバート氏はこの身体の中にいるのか分かりません。少なくとも、私は魂同士で話したことはありません。それに、アルバートとしての記憶もありません。」
「ん?森の中?」
師匠が森の中というキーワードに反応する。
本日、散々ヴィルと繰り広げた会話の中にも何度も登場したキーワードだ。
「ワイルドベアーと遭遇したのも、その時か?」
「はい。大きいくまさんでした……。」
「で?くまと遭遇してどうしたんだ?記憶がなくなったのがその時でないなら、何があった?」
師匠の質問は『森のくまさん事件』の核心に迫る。
(……何て答えたらいいんだろう。)
沢崎直は、一瞬迷って言いよどんだ。
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