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第二部
第五章 イケおじ師匠とナイショの特訓!!!52『ヴィルの帰還』
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五十二
ヴィルとたくさんの酒を乗せた馬車がスピードを上げて近づいてくる。
ヴィルは一人残してきた記憶喪失の主人を心配して、必死にお使いをこなしたのだろう。
そんなヴィルと早く会いたい沢崎直だったが、会うまでにどうしても済ませておきたい話題を早口で師匠に切り出した。
「あの、師匠。空手の事なんですけど。この世界の物ではないので、内緒でしか特訓できません。今も一応鍛練を怠っていないんですけど、自室で一人の時を狙ってしてるので、あんまりできません。それが魔法の鍛練になるとしてもです。」
これまでも自室で一人の時を見計らってしか空手の鍛練が出来ていない。誰かに見られたら、何か良くない気がして、沢崎直はこっそりしていたのだ。
馬車は少しずつ近づいてくる。
師匠も早口で沢崎直の持ち出した話題に応じた。
「内緒って、お前。これからは、もっと堂々とやれ。」
「そんなぁ。ヴィルさんや屋敷の人たちに何て説明したらいいんですか?失踪して帰ってきた三男坊が、おかしなことをしてるって心配されちゃいますよ。あっ、でも、剣なら堂々と鍛練できます。鍛練室もありますし。」
「剣はついででいい。」
「ついでって。」
剣の師匠としてあるまじき発言に、弟子の沢崎直の方が心配になってくる。
だが、新しい武術に興味津々の師匠は、そんなこと歯牙にもかけていなかった。
「大丈夫だぞ、ナオ。ヴィルの事なら俺に任せとけ。」
自信たっぷりに宣言する師匠。
そうこうしているうちに、ヴィルの乗った馬車は師匠の家の前の広場に到着した。
到着した途端、御者席から滑るようにヴィルが降りてくる。
「アルバート様!」
ヴィルはアルバートの姿を見留めて駆け寄ってきた。
(わぁ~。ヴィルさんだぁ。)
沢崎直は数時間ぶりに会う推しの姿に、心の中で喝采を叫んだ。
(さっきよりもカッコいい気がする~。)
恋は人を確実にアホにする。それが愛へと昇華された『推し』ならば、そのアホ具合は天文学的に跳ね上がる。沢崎直の脳内は、即座に推し活モードに切り替わっていた。
そんな頭の中がお花畑全開の沢崎直ではなく、目的の酒が気になっている師匠が先にヴィルに声を掛ける。
「酒は買ってきたのか?」
「馬車の中にありますので、ご自分でどうぞ。」
そんな酒・命の師匠に冷たく言い放ち、ヴィルはアルバートの元へと帰還した。
「お待たせいたしました、アルバート様。」
そして、ヴィルは主人の無事を目視で確認する。
しっかりと元気そうなのを確認してから、ようやく微笑みを浮かべるヴィル。
「師匠に何か嫌なことをされませんでしたか?」
(ヴィルさんにとって、師匠はそこまで困った存在なんだね……。)
よほど師匠に対して思うところがあるのだろうヴィルは、師匠への不信感も露わに沢崎直に尋ねた。
沢崎直はヴィルが師匠と過ごしてきた苦難の時を思って切なくなった。きっと師匠は、真面目なヴィルを可愛がり続けたに違いない。師匠は楽しかっただろうが、弟子のヴィルにとっては辛い毎日だっただろう。もちろん、師匠の剣の腕は信頼しているようだし、そもそもヴィルの剣の腕が相当であることから、師匠として剣の技術を教えることに関しては文句の付けどころはなかったと思うのだが……。
沢崎直は元気いっぱい、ヴィルを安心させるように笑顔を浮かべた。
「大丈夫ですよ、ヴィル。師匠には色々教えてもらいました。」
本当に色々なことを教えてもらって、実りの多い一日になった。その感謝の気持ちを込めて、沢崎直は師匠に改めて頭を下げる。
「師匠、今日はいろいろありがとうございました。これからもよろしくお願いします。」
「おう。」
師匠は馬車の中の酒を確認している途中だったが、沢崎直の言葉に手を上げて答えた。
ヴィルは沢崎直の言葉に今一つ納得していなかったが、主人が笑顔で満足そうなので、今日の所は良しとしたようだ。
一方、師匠の方も馬車の中に積まれた酒の量にそこまでの文句はなかったようで、馬車から弟子の二人のもとに笑顔で戻ってきた。
「まあしょうがねぇから、手土産の酒はあれで勘弁してやる。」
「そうですか。」
何の感慨も見せず、ヴィルは師匠の言葉に頷いた。
ヴィルとたくさんの酒を乗せた馬車がスピードを上げて近づいてくる。
ヴィルは一人残してきた記憶喪失の主人を心配して、必死にお使いをこなしたのだろう。
そんなヴィルと早く会いたい沢崎直だったが、会うまでにどうしても済ませておきたい話題を早口で師匠に切り出した。
「あの、師匠。空手の事なんですけど。この世界の物ではないので、内緒でしか特訓できません。今も一応鍛練を怠っていないんですけど、自室で一人の時を狙ってしてるので、あんまりできません。それが魔法の鍛練になるとしてもです。」
これまでも自室で一人の時を見計らってしか空手の鍛練が出来ていない。誰かに見られたら、何か良くない気がして、沢崎直はこっそりしていたのだ。
馬車は少しずつ近づいてくる。
師匠も早口で沢崎直の持ち出した話題に応じた。
「内緒って、お前。これからは、もっと堂々とやれ。」
「そんなぁ。ヴィルさんや屋敷の人たちに何て説明したらいいんですか?失踪して帰ってきた三男坊が、おかしなことをしてるって心配されちゃいますよ。あっ、でも、剣なら堂々と鍛練できます。鍛練室もありますし。」
「剣はついででいい。」
「ついでって。」
剣の師匠としてあるまじき発言に、弟子の沢崎直の方が心配になってくる。
だが、新しい武術に興味津々の師匠は、そんなこと歯牙にもかけていなかった。
「大丈夫だぞ、ナオ。ヴィルの事なら俺に任せとけ。」
自信たっぷりに宣言する師匠。
そうこうしているうちに、ヴィルの乗った馬車は師匠の家の前の広場に到着した。
到着した途端、御者席から滑るようにヴィルが降りてくる。
「アルバート様!」
ヴィルはアルバートの姿を見留めて駆け寄ってきた。
(わぁ~。ヴィルさんだぁ。)
沢崎直は数時間ぶりに会う推しの姿に、心の中で喝采を叫んだ。
(さっきよりもカッコいい気がする~。)
恋は人を確実にアホにする。それが愛へと昇華された『推し』ならば、そのアホ具合は天文学的に跳ね上がる。沢崎直の脳内は、即座に推し活モードに切り替わっていた。
そんな頭の中がお花畑全開の沢崎直ではなく、目的の酒が気になっている師匠が先にヴィルに声を掛ける。
「酒は買ってきたのか?」
「馬車の中にありますので、ご自分でどうぞ。」
そんな酒・命の師匠に冷たく言い放ち、ヴィルはアルバートの元へと帰還した。
「お待たせいたしました、アルバート様。」
そして、ヴィルは主人の無事を目視で確認する。
しっかりと元気そうなのを確認してから、ようやく微笑みを浮かべるヴィル。
「師匠に何か嫌なことをされませんでしたか?」
(ヴィルさんにとって、師匠はそこまで困った存在なんだね……。)
よほど師匠に対して思うところがあるのだろうヴィルは、師匠への不信感も露わに沢崎直に尋ねた。
沢崎直はヴィルが師匠と過ごしてきた苦難の時を思って切なくなった。きっと師匠は、真面目なヴィルを可愛がり続けたに違いない。師匠は楽しかっただろうが、弟子のヴィルにとっては辛い毎日だっただろう。もちろん、師匠の剣の腕は信頼しているようだし、そもそもヴィルの剣の腕が相当であることから、師匠として剣の技術を教えることに関しては文句の付けどころはなかったと思うのだが……。
沢崎直は元気いっぱい、ヴィルを安心させるように笑顔を浮かべた。
「大丈夫ですよ、ヴィル。師匠には色々教えてもらいました。」
本当に色々なことを教えてもらって、実りの多い一日になった。その感謝の気持ちを込めて、沢崎直は師匠に改めて頭を下げる。
「師匠、今日はいろいろありがとうございました。これからもよろしくお願いします。」
「おう。」
師匠は馬車の中の酒を確認している途中だったが、沢崎直の言葉に手を上げて答えた。
ヴィルは沢崎直の言葉に今一つ納得していなかったが、主人が笑顔で満足そうなので、今日の所は良しとしたようだ。
一方、師匠の方も馬車の中に積まれた酒の量にそこまでの文句はなかったようで、馬車から弟子の二人のもとに笑顔で戻ってきた。
「まあしょうがねぇから、手土産の酒はあれで勘弁してやる。」
「そうですか。」
何の感慨も見せず、ヴィルは師匠の言葉に頷いた。
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