YOU BECAME SO…

せんのあすむ

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焦燥の章

ゆめゆめ忘れるな

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『志望校については自分が選ぶことだから私は何も言わないが、現状だと難しいぞ。ゆめゆめ忘れるな』

 氷山ひやまの言葉が、ズーンとのしかかってくる。氷山ひやま本人は平然とした様子で教室を出ていったけど、俺自身は完全にダメージを受けていた。

『お前は、内田には相応しくない』

 って言われたような気がして。

 なのに、

「涼くん! センセは応援してくれてるんだよ! だから一緒にガンバろ♡」

 芙美はガッツポーズを取りながら笑顔で声を掛けてくれた。俺も、

「ああ…そうだな……」

 とは何とか応えた。その上で、

「ちょっと、トイレ……」

 って言いながら席を立つ。すると芙美は、

「なんだったら私もいっしょにいったげようか♡ って、それじゃ女子みたいか~、あはははは♡」

 相変わらず色気のないことを大声で……女としての自覚はないのか、お前は……そんなんじゃ……

『そんなんじゃ、氷山ひやまに愛想尽かされるぞ……』

 とか思ってしまって、そんな自分にギョッとしてしまって、俺は気分まで悪くなってしまった。

「え? 涼くん、大丈夫? ほんとに一緒に行った方がいい?」

 芙美が慌てて聞いてくるけど、

「いや、いいから……!」

 って振り切ってトイレに向かった。まあ、トイレに着く頃には気分も収まってたけどな。

 ただ、トイレに入ると、

「お? なんだ、イケメンモデルもションベンすんのか!?」

 デリカシーの欠片もない声が。鈴木だった。鈴木が、相変わらず悩みの欠片もないような底の抜けた笑顔で、洗った手をブンブンと振っただけで、

「出すもん出してすっきりしろよ!!」

 俺の肩をバンバン叩いて出ていった。

『……俺より鈴木の方がよっぽどデリカシーないと思うんだが……』

 相田に『デリカシーがない』と言われたことが思い出されて、ついそんな風にも考えてしまった。洗ってるだけまだマシかもしんねーけど、それでも、振って水を飛ばしただけの手で他人の肩を叩くとか、俺でもやらないぞ。

 なんかもう、いろんなことが頭をよぎってぐちゃぐちゃになりそうだった。

 トイレを済まして教室に戻ろうとしたら、

「あら、梁川くん。気分でも悪いの?」

 今度は川崎先生が。ああ、こっちはいい意味で相変わらずの優しい感じで、

「あ、いえ、ちょっといろいろ考え事してて……」

 思わず素直に口にしてしまった。

「ああ、思春期だもんね。いろいろ悩みもあるよね。もしよかったら相談に乗るから、いつでも声を掛けてね♡」

 そんな風に優しく笑顔で言われたら、普通の男子なら一発なんだろうなと思ってしまう。

 でも、俺は、芙美のことしかそういう目で見られないから……

 そうだよ。俺は芙美のことしか見てないのに、どうして……

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