かぷせるあにまるず

状況を正しく認識して

ヴァドヤが母親としての役目をほとんど果たしていないのは事実です。でも、そもそも彼女にその能力がないのに、実の両親から虐げられてきたことで精神的に未熟で自己評価が大変に低くて自己肯定感が大変に低くて、そして彼女がそうだということにつけ込んでほとんど洗脳のようにして自分に言い様に操り子供を生ませた夫の責任も大きいはずですよね？

元より、彼女は、母親になるには人間として未熟過ぎたんです。誰の目から見ても。

その彼女一人に責任を負わせるのが、本当に正しいのですか？

ティーさんにもガーにもとてもそうは思えませんでした。ルリアとしての記憶があることで、ルリアがどれだけ周りの人達に助けられてきたかを知ってるからこそ、ヴァドヤの境遇との差を実感できてしまって。

それが分かれば、ルリアの力になってくれた人達の何分の一か何十分の一かでも、同じことができればと思ったんです。

ティーさんはサンギータに、今の自分の状況を正しく認識してもらうことを努力しました。その一番が、すでにサンギータの方が母親より強いということ。サンギータ自身は自分が子供であることを自覚しているからこそ『母親の方が自分より強い』と思い込んでいて、実際のヴァドヤの姿が見えていなかった。

一方、ガーも、ヴァドヤに自分に何ができるのかを知ってもらう努力をしました。ヴァドヤは自分以外の人を恐れるあまり自分には何もできないと思い込んでいたんです。だけど実際には、簡単な料理や掃除くらいなら、できた。その事実をヴァドヤに知ってもらうことを、ガーは目指したのです。

こうしてサンギータとヴァドヤは、今の自分達がどういう状況なのかを、正しく認識できるようになっていったのでした。