ラブレター ~追憶のププリーヌ~

せんのあすむ

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お隣さん

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兵隊がいなくなったところで、私たちはこっそり部屋を出た。お婆さんも一緒に探しにいったみたいだった。だから家の中を探して服とか食べるものをもらって家を出た。

「どこに行くの?」って女の子が聞いてきたから。男の子が「しっ!、静かにしてろ」って少し怒った感じで言った。道の方には見張りの兵隊が二人残ってた。

だから私たちは山の中を歩いた。女の子は私がおぶっていった。力は大したことなくても人形だから疲れないことに男の子は「助かるぜ」って言ってた。

なるべく道が見えるところを歩きながらしばらく行って、完全に兵隊とかが見えなくなったところでお婆さんの家から持ってきた服を来た。

「いくら人形でも下着姿のままで歩いてたらみっともないだろ」

って男の子が言った。私は別に裸でも気にしないけど、確かに服を着た方が人形だっていうのが分かりにくくなると思った。生きてる人形って言うのが珍しいみたいだから、人形だっていうのが分かるとまた騒ぎになるから、それは困るし。

私が着た服は、ちょうど私の大きさに合ってた。お婆さんに子供がいたのは本当で、その子供の服かもしれないって思った。男の子にちょっと見張りに行ってもらってその間に女の子にも着替えてもらった。メイド服で歩いてるのも目立つから。

「私、どうしたらいいの…?」

女の子はまた泣いてた。

「私、あの屋敷にいなきゃいけなかったのに…。これじゃ家にも帰れない」

女の子がそう言うけど、私には答えられなかった。私には帰る家もないからどうしたらいいかなんて分からない。その時、男の子が見張りから帰ってきた。

「あの屋敷だったらきっと燃えてなくなってるよ。お前も死んだって思われてるかもな。いいじゃねーか。これからは好き勝手に生きられるぜ」

そう言う男の子に女の子は怒って言った。

「そんなことできないよ! 私、貴族の娘だもん!」

そしたら男の子も怒って言った。

「そんなこと俺が知るかよ! 俺は本当の親の顔もろくに知らねーし! 俺を人買いに売った親はほんとの親じゃねーし! 俺は自分で生きるしかねーからよ!! 帰る家のある奴のこととか知るか!!」

男の子にそう言われて、女の子は黙った。黙って泣いてた。

「でもここにいたら山猫とか熊とか出るよ。とにかく行こう」

私がそう言うと、女の子は泣きながら歩き出した。道に戻ってとにかく歩いて、女の子が疲れたら私がおぶって、なんとか山を越えた。そしたら谷のところに家がいくつか見えた。村みたいだった。日が暮れる前にそこまで行こうっていうことになって私たちは歩いた。

「あれ? ここって確か…」

村の入り口らしいところに着いた時、女の子が言った。それからあちこち見て、「やっぱり!」って言った。

「ここ、私の国の村だ!」

女の子がそう言うと男の子が「はあっ!?」って驚いてた。

「お前の国、あの領主んところの隣だったのかよ! ってことはもしかしたらあの婆さんところに来た兵隊、お前んとこの兵隊か!?」

男の子は怒ったみたい頭をがりがり掻きながら、

「だったらお前のこと見せたら逆に連れてってくれたかもしれないな。まったく、無駄に手間食ったぜ! でもお前も隣だったら隣って言えよな!」

とか言ってた。だけど女の子も、

「そんなの私だって知らなかったもん。あの屋敷に行くときはずっと馬車に乗ってただけだから」

ってほっぺたを膨らましてた。それでも自分の国に帰ってきたからか、女の子はほっとした顔になってた。そんな女の子を見て男の子は、

「まあ、とにかくよかったじゃねーか。どうせあの屋敷は燃えちまったはずだからあそこにはいられなかったんだし、家に帰っても大丈夫だろ。何とか逃げてきたって言っとけよ」

そう言いながら男の子もちょっとほっとしたみたいな顔になってた。

「俺たちはこのまま行くからよ。どこかで仕事でも見付けるわ」

男の子はそう言って女の子に手を降って歩き出した。私もとりあえず男の子の後についていくことにした。そしたら女の子が「待って!」って声をかけてきた。

「ねえ、だったらここで仕事さがしたらどうかな? 人形さんも普通の人形のふりしてたら大丈夫じゃないかな?」

そんな女の子の言葉に、男の子は呆れたみたいに言い返した。

「何言ってんだお前? お前の国って、貴族の娘まで出稼ぎにでなきゃいけないくらい貧乏なんだろ? そんなところで仕事とか見つかるかよ。しかもあの領主の隣の国だし。こんなところにいたらすぐに見付かっちまわあ」

とか言ってたけど、でもちょっとだけ何だか嬉しそうな顔もしてた気がした。女の子がそんな風に言ってくれたのが嬉しかったのかも知れなかった。

そしたら女の子も、

「じゃ、じゃあ、今夜だけでも私のところに泊まっていったらどうかな? もうすぐ日も暮れるし、ね? あの屋敷が襲われたから私と一緒に逃げてきたってことにしたらきっと大丈夫だよ。人形さんも、人形だって分からないようにしたら大丈夫だと思うよ」

お願いするみたいな言い方に、男の子は少し困ったような顔で私を見たけど、私は別に何でもよかった。だから言った。

「私は平気。あなたのしたいようにしたらいい」

すると男の子は、仕方ないなって顔して女の子に言った。

「分かったよ。今夜だけだぞ。俺も飯にありつけるならその方がいいからな」

そしたら女の子が、近くの家の扉を叩いた。

「こんばんわ。開けてちょうだい。レリエラ=モクレニアスよ」

女の子がそう言った途端、家の中で慌てたみたいな物音がして扉が開いた。出てきたのはおじさんとおばさんだった。

「レリエラ様! ご無事だったんですか!? ああよかった。ボラー公のお屋敷が襲撃されたってお聞きしてたから心配してたんです!」

おじさんとおばさんは頭を下げながらそう言ってた。

「ボラー公の屋敷にいたこの子たちと一緒に逃げ出してきたの。私の家まで送ってもらえる?」

女の子がさらにそう言ったら、おじさんが、

「分かりました。うちのオンボロでよろしければ馬車を出します」

って言って家の裏へと走って行った。戻ってきたおじさんが乗ってたのは、確かにかなり痛んだ感じの馬車だった。それでも歩くのよりはマシって感じで女の子はホッとしてた。

少しでも座り心地を良くしようとしておじさんはワラをいっぱい敷いてくれた。私には別に関係ないけど。

馬車に揺られてるうちに日が暮れて、でも月明かりのおかげで道は見えてた。その先にいくつも灯が見えてた。たくさん家がある場所だって思った。その灯がいっぱいあるところの手前に、大きな門があった。そこに兵隊さんが立ってた。

「止まれ! こんな時間に何用だ?」

兵隊さんは怒ったみたいな感じで言った。だけどおじさんが、

「モクレニアス様のお嬢様のレリエラ様が困ってらしたのでお連れしました」

って言ったら飛び上がって驚いて、荷台に乗ってた女の子を見てもっと驚いて、

「よし、通れ! 我々が一緒についていく!」

と言って門を開けてくれた。

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