34 / 105
災害そのもの
しおりを挟む
寝ているところに突然、凄まじい衝撃でテントごと転がされた私は、パニックになってしばらくの間、頭がまったく働かなかった。
でも、潰れたテントの中で、周りから聞こえてくる怒声や悲鳴を耳にしているうちに、意識がはっきりしてきて、私を包むように絡みついたテントの生地から何とか抜け出した。
その私の目の前に、松明に浮かび上がった巨大な影が。松明の灯りも届かない高さにぼんやりと浮かび上がる黒い影の中に、ギラリと赤く光るものが見えた。目だ。そして。
『ド…ドラゴン…!?』
ドラゴンだった。以前遭遇したスケルトンドラゴンなんかじゃない。本物の生きたドラゴンだ。
それに気付いた瞬間、私の全身からザアッと冷たい汗が噴き出す。
ドラゴンは、厳密には魔族じゃない。人間よりはずっと魔族に近くても、ドラゴンはあくまで<ドラゴン族>という独立した一勢力だ。人間とも魔族とも距離を置き、基本的には積極的に関わろうとはしない。対してスケルトンドラゴンは不慮の事故などで死んだドラゴンが無念のあまりに邪念に囚われ魔族と化したものであり、ドラゴンとしても恥ずべきことであるとされてるらしい。
でも、時折、魔族の呪いに囚われたドラゴンが、魔王軍に従うこともあると聞かされていた。あの赤く光る目はまさにその証拠だった。何故なら正気のドラゴンの目は、金色に輝いているそうだし。
呪われたドラゴンは本来の力を発揮することができないそうで、正気のドラゴンに比べればまだ弱いとは言われてた。だけどそんなのはあくまで『正気のドラゴンに比べて』であって、人間からすれば殆ど雷や暴風のようにどうすることもできない災害そのもののような存在である。
そう、たとえ<勇者>であっても、容易には勝てない相手なんだ。
『そうか…! こいつが勇者達を次々と……!』
私は悟った。魔王軍に立ち向かっていた勇者が次々倒されたというのは、こいつの所為なんだと。
勇者が倒された部隊は一人残らず戦死しているから、その時の状況がはっきりとは伝わってなかった。念話は集中しないと使えないので、こうやって緊急の際に慌ててしまったりしたら使えないことが多い。
しかも、誰一人帰ってこないから全員戦死と判断されてるだけで、その現場を確かめた者もいない。何しろそこはもう、魔王軍に占領されているのだから。
そのドラゴンが、ついに私達の前に現れたということだ。勇者であるドゥケを倒し、この青菫騎士団を壊滅させるために……!
「あ…あ……」
本物のドラゴンを目の当たりにして、私の体は何一つ私の言うことを聞いてくれなくなってたのだった。
でも、潰れたテントの中で、周りから聞こえてくる怒声や悲鳴を耳にしているうちに、意識がはっきりしてきて、私を包むように絡みついたテントの生地から何とか抜け出した。
その私の目の前に、松明に浮かび上がった巨大な影が。松明の灯りも届かない高さにぼんやりと浮かび上がる黒い影の中に、ギラリと赤く光るものが見えた。目だ。そして。
『ド…ドラゴン…!?』
ドラゴンだった。以前遭遇したスケルトンドラゴンなんかじゃない。本物の生きたドラゴンだ。
それに気付いた瞬間、私の全身からザアッと冷たい汗が噴き出す。
ドラゴンは、厳密には魔族じゃない。人間よりはずっと魔族に近くても、ドラゴンはあくまで<ドラゴン族>という独立した一勢力だ。人間とも魔族とも距離を置き、基本的には積極的に関わろうとはしない。対してスケルトンドラゴンは不慮の事故などで死んだドラゴンが無念のあまりに邪念に囚われ魔族と化したものであり、ドラゴンとしても恥ずべきことであるとされてるらしい。
でも、時折、魔族の呪いに囚われたドラゴンが、魔王軍に従うこともあると聞かされていた。あの赤く光る目はまさにその証拠だった。何故なら正気のドラゴンの目は、金色に輝いているそうだし。
呪われたドラゴンは本来の力を発揮することができないそうで、正気のドラゴンに比べればまだ弱いとは言われてた。だけどそんなのはあくまで『正気のドラゴンに比べて』であって、人間からすれば殆ど雷や暴風のようにどうすることもできない災害そのもののような存在である。
そう、たとえ<勇者>であっても、容易には勝てない相手なんだ。
『そうか…! こいつが勇者達を次々と……!』
私は悟った。魔王軍に立ち向かっていた勇者が次々倒されたというのは、こいつの所為なんだと。
勇者が倒された部隊は一人残らず戦死しているから、その時の状況がはっきりとは伝わってなかった。念話は集中しないと使えないので、こうやって緊急の際に慌ててしまったりしたら使えないことが多い。
しかも、誰一人帰ってこないから全員戦死と判断されてるだけで、その現場を確かめた者もいない。何しろそこはもう、魔王軍に占領されているのだから。
そのドラゴンが、ついに私達の前に現れたということだ。勇者であるドゥケを倒し、この青菫騎士団を壊滅させるために……!
「あ…あ……」
本物のドラゴンを目の当たりにして、私の体は何一つ私の言うことを聞いてくれなくなってたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー
芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。
42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。
下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。
約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。
それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。
一話当たりは短いです。
通勤通学の合間などにどうぞ。
あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。
完結しました。
元アラサー転生令嬢と拗らせた貴公子たち
せいめ
恋愛
侯爵令嬢のアンネマリーは流行り病で生死を彷徨った際に、前世の記憶を思い出す。前世では地球の日本という国で、婚活に勤しむアラサー女子の杏奈であった自分を。
病から回復し、今まで家や家族の為に我慢し、貴族令嬢らしく過ごしてきたことがバカらしくなる。
また、自分を蔑ろにする婚約者の存在を疑問に感じる。
「あんな奴と結婚なんて無理だわー。」
無事に婚約を解消し、自分らしく生きていこうとしたところであったが、不慮の事故で亡くなってしまう。
そして、死んだはずのアンネマリーは、また違う人物にまた生まれ変わる。アンネマリーの記憶は殆ど無く、杏奈の記憶が強く残った状態で。
生まれ変わったのは、アンネマリーが亡くなってすぐ、アンネマリーの従姉妹のマリーベルとしてだった。
マリーベルはアンネマリーの記憶がほぼ無いので気付かないが、見た目だけでなく言動や所作がアンネマリーにとても似ていることで、かつての家族や親族、友人が興味を持つようになる。
「従姉妹だし、多少は似ていたっておかしくないじゃない。」
三度目の人生はどうなる⁈
まずはアンネマリー編から。
誤字脱字、お許しください。
素人のご都合主義の小説です。申し訳ありません。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
私が目覚めたのは断罪劇の真っ最中でした
アーエル
ファンタジー
「今北産業、説明ぷりーず」
「「「…………は?」」」
「今北産業、状況説明ぷりーず」
だれか説明してくださいな
☆他社でも公開しています
ハズレスキル『自動販売機』を授かって婚約破棄されましたが、 実は回復薬も魔力食も出せる最強スキルでした
暖夢 由
ファンタジー
十八歳の成人儀式で授かったのは、誰も聞いたことのない《自動販売機スキル》。
役立たずと嘲られ、婚約者レオンには即座に婚約を破棄され、人生が崩れ落ちたように思えた。
だがそのスキルには、食べ物を作り、摂取すれば魔力を増やし、さらに“治癒効果”を付与できるという隠された力があった。
倒れた母を救い、王都の名門・ヴァルセイン伯爵夫人を救ったことで、カミーラは“呪詛”という闇の存在を知る。伯爵邸で出会った炎の力を持つ公爵家次男レグナスとの出会いが、彼女の運命を大きく変えていく。
やがて王都全体に“謎の病”が蔓延。カミーラは治癒スープの炊き出しを行い、人々を次々と回復へ導く。
一方、病の裏で糸を引いていたのは………。
“無価値”と嘲られたスキルが、いま世界を癒し、未来を照らす光となる――。
攻略. 解析. 分離. 制作. が出来る鑑定って何ですか?
mabu
ファンタジー
平民レベルの鑑定持ちと婚約破棄されたらスキルがチート化しました。
乙ゲー攻略?製産チートの成り上がり?いくらチートでもソレは無理なんじゃないでしょうか?
前世の記憶とかまで分かるって神スキルですか?
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる