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災害そのもの
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寝ているところに突然、凄まじい衝撃でテントごと転がされた私は、パニックになってしばらくの間、頭がまったく働かなかった。
でも、潰れたテントの中で、周りから聞こえてくる怒声や悲鳴を耳にしているうちに、意識がはっきりしてきて、私を包むように絡みついたテントの生地から何とか抜け出した。
その私の目の前に、松明に浮かび上がった巨大な影が。松明の灯りも届かない高さにぼんやりと浮かび上がる黒い影の中に、ギラリと赤く光るものが見えた。目だ。そして。
『ド…ドラゴン…!?』
ドラゴンだった。以前遭遇したスケルトンドラゴンなんかじゃない。本物の生きたドラゴンだ。
それに気付いた瞬間、私の全身からザアッと冷たい汗が噴き出す。
ドラゴンは、厳密には魔族じゃない。人間よりはずっと魔族に近くても、ドラゴンはあくまで<ドラゴン族>という独立した一勢力だ。人間とも魔族とも距離を置き、基本的には積極的に関わろうとはしない。対してスケルトンドラゴンは不慮の事故などで死んだドラゴンが無念のあまりに邪念に囚われ魔族と化したものであり、ドラゴンとしても恥ずべきことであるとされてるらしい。
でも、時折、魔族の呪いに囚われたドラゴンが、魔王軍に従うこともあると聞かされていた。あの赤く光る目はまさにその証拠だった。何故なら正気のドラゴンの目は、金色に輝いているそうだし。
呪われたドラゴンは本来の力を発揮することができないそうで、正気のドラゴンに比べればまだ弱いとは言われてた。だけどそんなのはあくまで『正気のドラゴンに比べて』であって、人間からすれば殆ど雷や暴風のようにどうすることもできない災害そのもののような存在である。
そう、たとえ<勇者>であっても、容易には勝てない相手なんだ。
『そうか…! こいつが勇者達を次々と……!』
私は悟った。魔王軍に立ち向かっていた勇者が次々倒されたというのは、こいつの所為なんだと。
勇者が倒された部隊は一人残らず戦死しているから、その時の状況がはっきりとは伝わってなかった。念話は集中しないと使えないので、こうやって緊急の際に慌ててしまったりしたら使えないことが多い。
しかも、誰一人帰ってこないから全員戦死と判断されてるだけで、その現場を確かめた者もいない。何しろそこはもう、魔王軍に占領されているのだから。
そのドラゴンが、ついに私達の前に現れたということだ。勇者であるドゥケを倒し、この青菫騎士団を壊滅させるために……!
「あ…あ……」
本物のドラゴンを目の当たりにして、私の体は何一つ私の言うことを聞いてくれなくなってたのだった。
でも、潰れたテントの中で、周りから聞こえてくる怒声や悲鳴を耳にしているうちに、意識がはっきりしてきて、私を包むように絡みついたテントの生地から何とか抜け出した。
その私の目の前に、松明に浮かび上がった巨大な影が。松明の灯りも届かない高さにぼんやりと浮かび上がる黒い影の中に、ギラリと赤く光るものが見えた。目だ。そして。
『ド…ドラゴン…!?』
ドラゴンだった。以前遭遇したスケルトンドラゴンなんかじゃない。本物の生きたドラゴンだ。
それに気付いた瞬間、私の全身からザアッと冷たい汗が噴き出す。
ドラゴンは、厳密には魔族じゃない。人間よりはずっと魔族に近くても、ドラゴンはあくまで<ドラゴン族>という独立した一勢力だ。人間とも魔族とも距離を置き、基本的には積極的に関わろうとはしない。対してスケルトンドラゴンは不慮の事故などで死んだドラゴンが無念のあまりに邪念に囚われ魔族と化したものであり、ドラゴンとしても恥ずべきことであるとされてるらしい。
でも、時折、魔族の呪いに囚われたドラゴンが、魔王軍に従うこともあると聞かされていた。あの赤く光る目はまさにその証拠だった。何故なら正気のドラゴンの目は、金色に輝いているそうだし。
呪われたドラゴンは本来の力を発揮することができないそうで、正気のドラゴンに比べればまだ弱いとは言われてた。だけどそんなのはあくまで『正気のドラゴンに比べて』であって、人間からすれば殆ど雷や暴風のようにどうすることもできない災害そのもののような存在である。
そう、たとえ<勇者>であっても、容易には勝てない相手なんだ。
『そうか…! こいつが勇者達を次々と……!』
私は悟った。魔王軍に立ち向かっていた勇者が次々倒されたというのは、こいつの所為なんだと。
勇者が倒された部隊は一人残らず戦死しているから、その時の状況がはっきりとは伝わってなかった。念話は集中しないと使えないので、こうやって緊急の際に慌ててしまったりしたら使えないことが多い。
しかも、誰一人帰ってこないから全員戦死と判断されてるだけで、その現場を確かめた者もいない。何しろそこはもう、魔王軍に占領されているのだから。
そのドラゴンが、ついに私達の前に現れたということだ。勇者であるドゥケを倒し、この青菫騎士団を壊滅させるために……!
「あ…あ……」
本物のドラゴンを目の当たりにして、私の体は何一つ私の言うことを聞いてくれなくなってたのだった。
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