ズルいチート勇者なんか好きになってあげないんだから!

せんのあすむ

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ブレス

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「させるかあっ!!」
 ドゥケが鋭く叫び、ポメリア目掛けて伸ばされたドラゴンの右手に向かって走り、渾身の力を込めて剣を叩きつけた。
 それすらダメージは与えられなかったけど、ドラゴンの右手が弾かれて、団員がポメリアを抱きかかえて私の方へと走ってきた。
 そんなドゥケに苛立ったのか、ドラゴンが彼を睨み付けて、弾かれた右手を叩き付けるように振る。
「ぐっ!!」
 ドゥケは剣を構えてそれを受け留めたけど、さすがに力が違いすぎた。彼の体は指で弾かれた小石のように吹っ飛び、テントの一つをなぎ倒しながら地面を転がった。
 するとドラゴンは彼のことなどどうでもいいとばかりに頭を振って、私の方へと走ってくるポメリアと団員を捉えていた。そして一歩二歩と踏み出しただけで追い付き、ポメリアを抱きかかえた団員の背中に右手の指を伸ばした。
「が…はぁっっ!?」
 悲鳴とも何とも言えない声と共に血が吐き出され、その団員の体をドラゴンの爪が貫いたのが見えた。
「―――――っ!」
 私も、その光景が見えた瞬間、体が勝手に動いて、団員の腕から落ちそうになったポメリアを抱き締めていた。
「ああっ!」
 自分を助けようとしてくれた団員がドラゴンの爪に貫かれたことに気付いたポメリアが声を上げ、たぶん無意識のうちにヒールを掛けていた。
 だからその団員はきっと助かったと思う。だけど、ポメリアを抱き締めた私は、彼女ごとドラゴンに右手に捉えられてしまった。
 まるで大木そのものが絡みついてきたような、人間の力でどうにかできるものじゃないっていうのが直感的に分かるそれに、抗うも何もなかった。
 ドラゴンにしてみれば余計なものかもしれない私だったけど、もういちいち除けるのも面倒臭いと言わんばかりにポメリアと一緒に握り、引き寄せられた。
 再度確認するかのように自分の顔の前に右手を持ってきて、ギロリと睨む。巨大な真っ赤な目玉が魂まで消し飛ばしそうな圧で私とポメリアを見ていた。
 だけどそれで満足したのか、ドラゴンは頭を空に向け、翼を広げた。
『飛び上がる気だ…!』
 そう思ったけど、私には何もできない。ポメリアがいるからたぶん握り潰さないように加減はしてくれてるんだろうけど、腕一本びくりとも動かなかいんだ。
 このドラゴンは、ポメリアを探しに来たのか…!? でも、どうして……!?
 などと考えてる私には構うことなく、ドラゴンは羽ばたき、凄まじい暴風を起こしながら、人間もテントも馬も馬車もそれで吹き飛ばしながら、宙に舞い上がった。
 その上で今度は地上に頭を向ける。
『ブレスを吐く気か……!?』
「や…、やめ……!!」
 その直後に見せ付けられるであろう光景を頭によぎらせて、私は『やめて!!』と叫ぼうとしたのだった。

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