ズルいチート勇者なんか好きになってあげないんだから!

せんのあすむ

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動揺

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「ポメリアぁっっ!!」
 ものすごい勢いで壁に叩きつけられたけど、私は、それどころじゃなかった。たぶん頭に血が上って、ダメージとか感じなくなってたんだと思う。
『先にいったって、このこと…!?』
『行った』んじゃなくて、『逝った』ってこと……!?
 どうしてそんなことになったのかドゥケに訊きたかったけど、今はそれどころじゃなかった。もう、魔王を倒すしか頭になかった。
 だけどその時、
「無駄なことはやめておいた方がいい。もう、魔王を倒す方法は無くなったんだ」
 って声が。
 聞き覚えのある声にハッと視線を向けると、そこには……
「カッセル……」
 カッセルだった。私たちが通ってきた通路から、カッセルが姿を現したんだ。
 そしてカッセルもまた、寂しそうな笑顔を浮かべてた。ドゥケのそれによく似た。
「がああーっっ!!」
 問答無用!って感じでアリスリスがカッセルに切りかかる。だけどやっぱり、カッセルはそれを易々と受け止めて、彼女の腹に容赦のない蹴りを入れてた。
「ぐっ! げほぉっっ!! げはっ!」
 さすがのアリスリスも床をのたうち回って咳き込む。まともに呼吸ができなくなったみたいに。
「カッセルっっ!!」
 あまりにひどい仕打ちに、私は思わず叫んでた。
 なのに彼は、やっぱり寂しそうな笑顔を浮かべたまま、私を見る。
「話の通じない獣はこうするしかないってことだよ」
 獣って……!
 ギリっと奥歯を噛みしめた私に、カッセルは言った。
「とにかく僕の話を聞いてもらいたいな。今はまだ魔王は動けない。話を聞く時間ぐらいはあると思うけどね?」
「あなたの話なんて、もう聞きたくない……!」
 それは、私の正直な気持ち。
 私の後ろで、他の部隊から合流した二人の勇者が戸惑った様子だった。どうやらカッセルの裏切りのことは伝えられてなかったみたい。動揺させないためってことなのかもしれないけど、正直、納得いかないものがある。でもそれも今はそれどころじゃない。
 そしてカッセルは勝手に話し始めた。
「いいや、君たちは聞くべきだ。聞かずに無駄死にするつもりなら勝手にすればいいとも思うけどね。
 もう、神妖精しんようせい族の巫女の力でも、魔王の記憶も時間も奪えない。何のために、巫女を捕らえてたと思うんだ? その力を利用して、対抗できるようにするためにだとは思わなかったのか?」
「…な……!?」
 カッセルの言葉に、巫女たちまで動揺してるのが分かった。彼女たちもまさかそんな理由で自分達が捕らえられていたとは思わなかったみたい。

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