仏法戦記アミーダ

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第八話「新たなるパイロット、稲荷タケル」

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司隊本部にて。ゴウが送られてきた巻物を読んでいた。それは、新たなるパイロットと、そのパイロットが乗るアミーダの情報が記された書物だった。

ゴウ「ほう。新たなるパイロットが、我が司隊本部に送られてくるか。」

サヤ「漣隊長。何をご覧なさっているのですか?」

ゴウ「サヤか。今日来た手紙だよ。新たなアミーダのことだ。アミーダ参ノ型ダーキニー。狐の国で建立された3番目にして最新鋭のアミーダらしい。それにパイロットは、稲荷タケル。パイロットの腕前としてはかなり優秀だそうだ。彼らは焔号とともにやってくるそうだ。」

サヤ「そうですか。漣隊長。少し、彼に挨拶に伺いたいのですが。よろしいですか?」

ゴウ「ああ。ナオトとカノンも対面したいところだろうからな。いいだろう。しっかり挨拶して、我が司隊本部に迎え入れてあげなさい。」

サヤ「分かりました。では、準備いたします。」

そこで、サヤはゴウの承諾を得て、最新鋭の機体であるアミーダ参ノ型ダーキニーを搬送する貨物船・焔号を訪問する事にした。ナオト、カノン、そして彼の塾の同期であるレンとコウも同行し、狐の国行きの航空便に乗る。

コウ「なんだ。いいところに連れてってくれると思ったら、大仏じゃないのか。」

レン「レンお前なぁ。今回は大仏に行くんじゃないんや。新しいパイロットに挨拶に行くんやで。」

ナオト「まあ、聞いた話、アミーダ参ノ型ダーキニーは、最新の機体らしいよ。ねっ。サヤ。」

サヤ「まあね。アミーダの最新化に伴って、今仏界の各地でアミーダの建立が進んでいるみたいだもの。」

カノン「新しいアミーダ見るの、初めて。ワクワクするわ。」

ナオト「カノンがアミーダに関心を持つなんて、珍しいね。やっぱり楽しみ?」

カノン「ええ。是非とも見てみたいわ。最新鋭のアミーダが闘うところ。」

話しながら席につくナオトたち。そして、アナウンスが流れ、飛行場を飛び立つ。

乗務員「まもなく、狐の国行き、発進致します。」


ゴオオオオーーーーーー…


ーーー旅客機が、狐の国の港に到着する。そして、サヤ一行は貨物船焔号に向かって歩いていく。雄大な港の風景に、一同は圧倒される。

レン「わあ~。すごいのう~。」

コウ「それに、並んでいる船も、いい感じだねぇ~。」

ナオト「(カノンに対して)これが、狐の国の港の風景だよ。どう?カノン。」

カノン「綺麗ねぇ。実に圧巻だわ。」

港の風景を堪能しながら、サヤの後をついて行くナオト達。焔号を見つけると、サヤ達とともに入っていく。

焔号船長「ようこそおいでくださいました。司隊ご一行ですね?」

サヤ「はい。アミーダのパイロット、及びパイロットの塾の同期を連れてまいりました。まずは、パイロットに挨拶をさせてください。」

焔号船長「はい。では、こちらへどうぞ。」
 

ーーー焔号の客船部に乗り込むサヤ一行。乗組員に連れられ、タケルのもとへ挨拶に向かう。

乗組員「例のパイロットは、こちらにございます。」

乗組員についていくナオト達。そこで、待ち受けていたのは…。

タケル「ガツガツガツ…むしゃむしゃむしゃ…。」

レン「なんや、ただの大食いやないか。」

コウ「すごい食いっぷりだね。」

カノン「私じゃ敵わないわ。」

ナオト「そ、そうだね。」

乗組員「まだ食べていたのですね。稲荷タケル殿。アミーダのパイロットがいらしましたよ。」

タケル「(頬張りながら)何だ?こいつらが司隊の隊員か?」

乗組員「全く。口に入れたまま喋らない。はしたないなぁ。」

タケル「まあいい。俺が、アミーダ参ノ型ダーキニーのパイロットだ。稲荷タケル。よろしくな。」

サヤ「よろしく。タケル。彼がこれから新しい仲間になるナオトもカノンも挨拶して。」

ナオト「あっ。仏ナオト。よろしく。」

カノン「月泉カノンよ。よろしく。」

タケル「まっ、とりあえず話しようか。みんな。ここへ座れよ。」



これから司隊の仲間になるであろう、タケルの前に座る一同。そこで、タケルは言う。

タケル「聞いた話だが、今の仏界は、かなり大変らしいな。羅刹団とやらが、動き出しているらしいからな。」

サヤ「ええ。これまでは、ナオトとカノンが協力して、羅刹団の巨大妖怪群と戦ってきたの。もちろん、ここに来るまでは様々な困難はあったわ。」

タケル「そうか。俺もな。まさか闘う事になるとは思ってもいなかったからな。今は神仏郷だけでも、いずれは俺の故郷の狐の国にまで敵の脅威が蔓延るなら、それは阻止しなければならないからな。で、お前がブッダリアのパイロットだな?仏ナオト。」

すると、タケルはナオトに話を振る。

ナオト「うん。」

タケル「実はな、俺は、パイロットとしての腕前はお前には負けないぜ。なんせ、幾度も訓練を重ねてるんだからな。まさしく、俺はお前とは違い、仏界を救う勇者なのだからな!ははははっ!」

ナオト「(わあ、実に勝気だ…)」

タケル「そして、カンゼノンのパイロットの、月泉カノン。君は実に美しい。これまで、ご苦労様。これからは、俺も、あんたを援護するぜっ?なっ。」

カノン「あはは…。」

カノンに対しては急に猫なで声になるタケル。どうやら、タケルは女好きなのだ。そして、今度は…?

タケル「そして、お前ら。カノンに変なことしてないだろうなぁ。したら許さないぜ。」

レン、コウ「ひぇぇ…!」

レンとコウに対しては、かなり威圧的な態度を見せるタケルであった。

ナオト「ま、まあ。レンとコウは、僕の塾の友達だからさ。優しく接してあげて。」

カノン「そ、そうよ。別に悪い方じゃないもの。」


タケル「そうか。」

スッ

タケル「ナオト。お前に見せたいものがある。来い。」

席を立ち上がるタケル。そこで、彼は、ナオトを呼び、貨物室に眠るダーキニーを見せに連れていった。貨物室へ続く絵手紙の飾られた回廊を歩く二人。

ナオト「それって、もしかしてアミーダ参ノ型ダーキニー?」

タケル「そうだ。俺の機体だ。そのスケールに、お前も驚くことだろう。」

ナオト「そうなんだ。一体どんなものだろう。じっくり見ないと。」

タケル「ここだ。」

貨物室のロックを解除するタケル。そして、ナオトとタケルは、二人、貨物室へ入っていく。

ピッ、ウイイーン

貨物室へ入るナオトとタケル。そこには、タケルの専用機体・アミーダ参ノ型ダーキニーの姿が。その姿は、真紅で、角を生やし、胸には目をつけたような外見をしていた。ダーキニーの説明をするタケル。

ナオト「すごい。赤いんだね。ダーキニーって。」

タケル「まあ、お前が思っているよりもすごい。このダーキニーはな、お前らの試験型のブッダリアやカンゼノンとは違い、アミーダの最新化に伴って造られた本物のアミーダだからな。」

ナオト「へぇ~。性能は?どれくらいなの?」

タケル「それを言いたかった。ダーキニーの性能は、格闘や剣撃、射撃などといった様々な武装が施されている。もちろん、これはお前たちが闘ってきた巨大妖怪群を凌駕するほどだ。その気になりゃ、厭魔さえもお手の物だ。はっ。」

ナオト「すごいんだね。本当に。」

タケル「とりあえず、ダーキニーの性能をお前に見せてやる。一緒に乗ってもらうわ。」

ナオト「うん。タケルのダーキニーの性能、楽しみにしてるよ。」

ーーーその一方、船長は、焔号の出港準備を始めた。

船長「まもなく焔号、出港します。」

ボーーーーッ

汽笛とともに、焔号が出港し、神仏郷へと向かっていく。その中、サヤたちは、席で話し合っていた。

サヤ「あら、出港したそうね。」

コウ「伊邪那美さん。あのタケルって人、これからどうなるの?」

サヤ「そりゃあ、あなた達と同じ塾に通うことになるわ。ちょっと出しゃばったところはあるけれど、仲良くしてあげて。」

驚愕するレンとコウ。

レン、コウ「ええっ?!」

レン「いやぁ、気が合うか分からんのぅ。」

話の傍ら、カノンは船の窓から外の景色を眺めている。

ーーー順調に航行していく焔号。しかし、乗組員と船長は異変に気づく。

乗組員「ん?何でしょうか?あれは。」

船長「黒い影…か?」

ゴボゴボ…ゴボゴボ…。

前方。泡を立てる水面。すると、海底から巨大な物体が出現した。

ズバアアアアアーーーーーーッ!!

海底から現れたのは、豚のような姿をした巨大妖怪群第5号、ブタメンであった。ブタメンが、焔号の行く手を阻んだ。

ブーッ!ブーッ!ブーッ!


艦内に警報が鳴る。


船長「怪物が出現した!!ルート迂回!!」

ルートを迂回しようとする焔号だが、ブタメンの足踏みにより、波を起こされ、妨害される。ひどく揺れる焔号。客船部のサヤたちはその煽りを受ける。

一同「うわああああっ!」

サヤ「まずいわね。まさか、あいつら。私たちが新たなアミーダを運んでいる事に気づくなんて。」

そして、船長は神仏政府にアミーダ参ノ型ダーキニーの緊急使用を承認してもらうのであった。船長は、それを通し、タケルに通達し、ダーキニーの発進準備を開始した。勝気になるタケル。

タケル「来たな。ようやく俺の出番だ。絶対に勝ってやるぜ。さあ、ナオト。こっちへ。」

ナオト「うん。」

早速、赤いパイロットスーツを着込み、ダーキニーに乗り込むタケルとナオト。すると、タケルは言う。

タケル「いいか。ナオト。適合力が落ちるから極力変なことは考えるなよ。よし、発射準備だ。掴まってろよ。」

ピッ

ダーキニーを起動させるタケル。操縦席に彩られる仏像が光り輝く。

タケル「光った。正常だ。ダーキニー、起動!」

ウイーーーン。

ダーキニーが、上半身を起こし、動き出す。

ナオト「すごい!動いた!」

タケル「本当にすごいのは、これからだぜ!…船長へ、貨物室のハッチを!」

船長「了解!!」

貨物室のハッチを開く。そして、ダーキニーは、勢いよく貨物室を飛び出した。

タケル「よっしゃーいっ!」

ブタメンと対峙するダーキニー。その中から、タケルは言う。

タケル「ほう。なかなか美味しそうな奴だな。焼豚にして食ってやりたいところだ。」

ナオト「えっ?まる一匹食べるの?マジで。」

タケル「腹をすかさせる野郎だぜ!さあ、戦闘開始だっ!!うああああーーーーっ!!」

ブタメンに向かって突進するダーキニー。ダーキニーは、ブタメンに向かって拳をぶつける。



タケル「でやあああーーーーっ!!」

ブタメン「ブヒーーーッ!!」

バコーーーン!!

ダーキニーとブタメンの拳が、激しくぶつかり合う。ダーキニーのパンチ力により、ブタメンはズタズタと後ずさった。

ナオト「うわあ、すごい。」

タケル「本当の戦いは、これからだぜ!でやあっ!」

突進するダーキニー。勢いよくブタメンにぶつかる。次の瞬間、ブタメンが、ヘッドロックをかけてくる。

タケル「くっ…!手こずるな…やあっ!」

ダーキニーは、ブタメンの脇腹に拳を入れる。そして、本気になるタケル。

タケル「はあああーーーーーーッ!!でやあああーーーーーーっ!!」

タケルは、気合いを入れた。そして、ダーキニーは、ブタメンに対し、軽快な拳や蹴り、投げ技等といった、様々な技を繰り出した。ブタメンを翻弄するダーキニー。そして、ダーキニーはとどめを刺した。



タケル「はあっ!爆裂阿弥陀拳!!」 

ブオオーーー!!バコーーーン!!

ダーキニーは、火を帯びた拳で敵を殴りつける必殺技「爆裂阿弥陀拳」を繰り出し、ブタメンを倒した。こうして、事態は収束。ダーキニーは、臨時の貨物列車で、司隊本部へ搬送されることになった。貨物船を降り、神仏郷の貨物列車のターミナルに集まるナオト達。

サヤ「タケル。お疲れ様。明日、司隊本部へ、入隊の手続きをしましょう。」

タケル「ああ。頑張るぜ。」

レン「見とって思ったわい。ほんまに強いんやな。ダーキニーって。」

コウ「妖怪を一撃で倒したんだもんな。すごいよ。なあナオト、ダーキニーに乗ってみて、どうだった?」

ナオト「いやあ、そりゃ、すごいと思ったよ。ましてやタケルの操縦術も。」

カノン「私も。ダーキニーは、実に強いと思ったわ。」

タケル「まあ、さっきも言ったけれど、ナオト。アミーダの操縦術は、俺の方が上だぜ。だははっ。」

ナオト「…。」


ーーーダーキニーは、司隊本部へ到着し、タケルは、正式に司隊へ入隊することとなった。その後は、ナオトとともに
神仏第一塾に通う事となった。

サキ「転入生を紹介します!彼は、狐の国よりやってきた、新しい仲間です。挨拶して。」

タケル「塾のみんなっ!俺は転入生の稲荷タケルだっ!どうぞよろしくなっ!」

生徒たち「よろしく。」

タケル「それに、委員長サキさん~!あんたはいい奴だよ~!是非とも俺と仲良くしてくれ~。」

転入早々、委員長のサキにデレデレになるタケル。そこで、サキは言う。

サキ「あはは…。とりあえず、席は仏くんの隣ね。仏くん。一緒に座ってあげて。」

タケル「サ~キぃ~ちゃああ~ん。またね~~。今度俺と遊ぼうねぇ~。」

サキ「もう。いいからいいから。席について。」

タケル「ごめ~ん。」

サキ「というわけで、皆も稲荷くんと仲良くしてあげてね。私からは以上。」

ナオト「…」

タケル「…」

ナオトの隣に座るタケル。しかし、二人の距離は縮まりそうになさそうだ。果たして、彼らは、仲良くなれるのだろうか。


ーーーつづく


次回予告

勝気で大食い、かつ女好きのタケル。彼とそりの合わないナオトは、巨大妖怪群にのされてしまう。そんな中、ゴウは二人の適合率を見定める鍛錬を提案した。果たして、彼らの運命は、

次回「極寒と鍛錬」
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