転生したし死にたくないし

雪蟻

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第1章 準備は万端に

全ての始まりの理由

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2人の近衛騎士を連れてわたくしたちは目的の場所、貧民街へとたどり着いた。
「ずいぶんと暗い雰囲気ですのね」
「治安も良くはないので、気をつけてください」
いきなり襲われたとしても、騎士の2人が対処するだろうし、だいぶ上達した障壁魔法もあるから余程のことがない限り大丈夫だろうけど。
とは言え油断は禁もーー
「閃光弾か!」
そう騎士が、叫んだ時には魔法を発動させていた。
「ミラー」
光を反射させようと思って、イメージの補強として選んだ言葉だった。
咄嗟にしては、いい判断だったと思う。
でもこの時、いつも練習していた障壁の魔法なら、わたくしの認識のズレをもっと早く意識できたかもしれない。
後にも先にも、わたくしがあの未来を回避することが出来たとするなら、ここが最後のチャンスだったと思う。
もちろん、そのチャンスをふいにしたわけだけれど。
「お見事です。ティアラ様」
「いえ、閃光弾だと見抜いてくれたこそ、対応できたのですわ」
さすがは、近衛騎士ですわね。
「それよりも、お前達! 誰に向かって無礼を 」
「構いませんわ。もし、わたくしに害をなすつもりであれば、子供騙しのような閃光弾を使うとは思えないもの、何が目的だったのかだけ聞ければそれでいいわ」

どうやら、食べ物を買うためのお金が欲しく、わたくしの身につけているものが手に入れば良かったとのこと。
逆を言えば、食べ物さえ手に入ればなんでも良かったことになる。
「なら、これでも持っていくといいわ。売れば少しのお金にはなるでしょう」
私を襲った者達は、口々に感謝の言葉を告げて去っていた。
「よろしかったのですか?」
「いいのよ、それよりもウィリアム。あのような事はよくあることなの?」
もしそうなら、手を打っておかないと。
「そうですね、珍しいこととは言えない程度には」
「では、ここに食料を行き届ける必要があるわね」
お金を欲する理由が食べるもののためである可能性が高い。
であれば、食べるものに困ることさえなければ、あのようなことは起きにくい。
「ええ、騎士を連れてるのにも関わらず襲ってくるほどです、ここの食糧事情は解決すべきでしょう」
「食糧不足が原因で他に起こることはあるかしら?」
たぶん、ここから始まるというのは、何か爆発的に広がるものがあるということ。
それをどうにかしないと、きっと財政破綻からの反乱を回避できない。
「そうですね、空腹状態が続くとなると体力の低下、その先は餓死となるかと」
「ねぇ、体力の低下ってことは、その前に風邪を引いたりすると思うのだけど」
風邪ならまだいいかもしれないけれど、それよりも怖いのはーー
「失念しておりました、風邪ならまだよいかもしれませんが、体力の低下した者が多くなるということは、流行病が致命的な規模で広まってしまいます」
「では、ここに設備の整った病院が必要ですわね」
と言っても、整えすぎると治療のためのお金が払えなくなりかねない。
そこを踏まえないと……
「そうですね、それも流行病に対しての抑止にならねばならない以上、気軽に利用出来なければ意味をなしません」
「国のお金を回せるかしら?」
お金が無いから買えないのだ、負担するのは国であるべきである。
「可能ですが、貴族達の反発が予想出来ます。貴族側には、何も得るものがありませんので」
「私の持ち物を売って少しでも足しにしてちょうだい。少しは国の出費を抑えられるでしょう」
ある程度でも抑えられたら、反発は小さなものになるだろう。
その程度の認識でのことだったのだけど、どうやら姫であるわたくしが、率先して出資したことになるので、貴族側のメンツ的に出資せざるを得なくなったらしい。
結果的に1番必要だったイニシャルコストをまかなえたようである。
やりましたわ。
これで、貧民街における問題点は解決したはずである。
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