転生したし死にたくないし

第2章 学院の中でも準備です

後の祭り

それから、わたくし達は魔獣達にも手伝ってもらい戦闘訓練を行いながら、領地となる荒れた土地を整備していった。
基本的にわたくしが管理することになったが。
というより、生活にいかせる魔法はわたくし以外まともに使えないのだ。
必然と言えるだろう。
作物を育てるための施設や、着いてきてくれた者達のために居住スペース並びに施設。
魔法だからこそのハイペース作業により、少なくとも田舎村程度にはなったと思う。
なんでもかんでも勉強していたのもあるが、大人が沢山いるのはありがたい。
わたくしだけでは、こうも早くは整わなかっただろう。

そんな、落ち着いて来た頃、襲撃があった。
とは言え、準備のおかげで負けることはなかった。
負けることは……

「アリアを殺したのは貴方達のようですわね」

油断していた。
わたくしにとって敵というものは殺さないといけない相手だ。
それが当然であった。
姫である以上、命を狙われるなどよくあることだ。
国内外を問わずだ。
故に、情けをかけるとしても油断なんてものはしない。
それは、騎士達や魔獣達にとっても当たり前のこと。
だからこそ、わたくしは油断していた。
普通の子供は、死ぬか生きるかという選択を強いられることなどないことを意識から外していた。
アリアがこの程度の侵入者に負けるはずがなく、ましてや危険な状況に追い詰められるはずもない。
ともなれば、結論は簡単だ。
追い詰め、降伏を促し、このクズどもが応じたところで気を緩めたのだろう。
戦場で敵の目の前で気を緩めたのだ、殺すのは簡単だったに違いない。
そこまではいい、わたくしの判断ミスによる結果だ、わたくしが受け止めなくてはならない事実だ。
許せないのは、そうやって手に入れた勝利でありながらアリアの亡骸を蹴りつけていることである、踏みにじっていることである。
本来なら死んでいたのは自分たちでありながら、勝利に酔いしれていることである。
｢それがどうかしたのか？ 元お姫様。このガキを殺したのが俺達だったらどうするんだ？｣
戦闘で使う魔法とは、イメージにより形作られる暴力だ。
一瞬で発動するし、使い方によっては視認すらさせずに蹂躙することすらできるものだ。
にも関わらず、この者達は何一つ警戒しない。
その程度の者が、格上を偶然に倒せた程度の者がアリアを――
「ヒュドラ喰らい尽くせ」
わざわざ全体を作り上げる必要も無い、虚空より出現した首が喰いちぎる。
もしかしたら死んだことにすら気づかなかったかもしれない。
それでもいい、痛めつけるつもりなどない。
ただ、この世界に確かに居たとする痕跡を残すことなど許さない。
死体であっても、存在することを許さない。
薄汚い血すら残さない。
そうしてわたくしは、戦場においてもっとも効果的で残虐な方法を手に入れたのだった。