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第3章 独立領土 小国ティアラ
動くべき時
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リアム様達が無事に潜入を済ませたあたりで、1つの塊がフェレル公国の学院への門を吹き飛ばした。
投擲槍。
にしては、随分な大きさの槍であったが。
「なるほど、こういう使い方もありましたか、敵ながら参考になりますわね」
派手な登場に紛れて、わたくしも潜入を済ます。
まだ動くには早い。
「随分と派手にやってくれましたね。しかし、前と同じようにはいきませんよ」
どうやら、学院長自ら戦うらしい。
装備を見るに、形からイメージを促進させていくようだ。
物語に出てくるような魔女の姿で、魔法をわかりやすく放つのは絵になって美しいと思う。
槍を使い、その尽くをたたき落としているのもまた、いい光景だ。
見ようによっては、さながら演劇のようだろう。
やっているのは、殺し合いだが。
「こちらは大丈夫そうですわね」
次に目をやると斧槍を操る男の攻撃をソフィアが危なげなく防いでいる。
とは言え、防いでいるだけだ。
このままでは、押し切られる可能性もあるだろう。
同じ考えに至ったのか、リアム様達はこちらに加勢するようだ。
役には立たないだろうが。
とすれば残るは大剣を持つ男だ。
「いつまで隠れているつもりだ? ティアラ・ユースティア」
「その名は、もう名乗れませんのよ? ユースティアとは王族を示すもの、わたくしは既に王族ではない以上名乗ることを許されませんわ」
気づかれているだろうと思ってはいたが、名指しされるとは以外である。
「貴様らの慣習になど興味はない。あるのはただ一つ、貴様は俺を楽しませてくれるのかということだけだ」
手にしたおもちゃが強すぎて、自分まで強くなったと勘違いしているようだ。
「喰らい尽くせ」
「報告通りだな、つまらん」
虚空より現れたヒュドラの首は残念ながら、喰いちぎること叶わず消える。
「それが魔力を霧散させる石ですか、実物を見たことがなくて、困っていたのですわ。ユース帝国の鉱山にそれこそたくさんありますわね」
強国のイメージの他に、有用なものがまだあったのは驚きである。
「貴様の攻撃は、問答無用の威力があるようだが、魔力が霧散してしまえばなんの驚異にもならん」
あの石の弱点は知っている。
1つ、魔力を流さないと効果を発揮しない。
1つ、大気に触れている魔力しか霧散しない
1つ、効果範囲がかなり狭い
「魔法で攻撃する限り、ダメージが入らないと言いたいようですわね」
「貴様の持つその槍も、魔力によって作られる。すなわち、俺に触れたその瞬間砕け散る」
「そして貴方は魔法を使いたい放題。便利ですわね」
自分に密着していなければいいのだから、魔法が使える。
卑怯だ。
とは言え、そんなに有用ならもっとみんな使っているだろう。
つまり、頼りきりでは上手くいかないということ。
そう、すごく単純な弱点。
「わたくし、魔法一辺倒ではありますけれど、それ故に、色々工夫してますのよ?」
放ったのは近くにあった瓦礫。
そして、オーバーロードによる超加速。
準備しておいた、王家の短刀を手に横合いに切りつける。
想定外の瓦礫が直撃し、仰け反った男にトドメを刺す。
寸分たがわず、鎧の隙間を縫うように、首を両断する。
「想定外だ、危うく死ぬところだったよ」
「あら気色の悪い、素直に死んでくださって構いませんでしたのに」
魔法による、事前の蘇生回復。
非常に難しいが、できないことではないのだ。
攻撃を受け、絶命する瞬間に無傷の自分をイメージし魔法を発動する。
すると、たとえ体が粉微塵に吹き飛んだとしても再生する。
一瞬でもタイミングがズレると魔法は発動せず死ぬことになるが。
「だがこれで、もう不意打ちはできんな」
「ええ、もう不意打ちはできませんわね」
「何が言いた──」
どう死ぬのか予想がついてないと、当然タイミングはズレる。
「わたくしが首を切り落とすだけで満足すると思っていましたの? 勝手に終わったと思わないことですわね」
不意打ちでもなんでもない。
内側に魔力を流し込んだだけである。
切りつけた断面に魔力を仕込んでその魔力が許す限りの小規模な爆発
今度は首から上が綺麗になくなり容易く死亡した。
「ソフィア、壊れない障壁ということは押しつぶすのも簡単ですわよ」
死んでしまえば用はない、早急にかたをつけよう。
「あっ、そうすれば良かったんですね! さすがお姉様です」
満面の笑顔で、人をグチャりと潰すソフィアである。
表情だけはとても可愛い。
なでなでしたくなる。
やったことは、わたくしも人のことは言えないが、エグい。
「残るはそちらだ──」
「片付けました、子供に後れを取るわけにもいきませんから」
万全に準備していれば、どうやらこの国は落とされることはなさそうだ。
認識を改めないといけない。
大国とは、そう簡単に潰されるような国ではないのだと。
「ティアラさん、先日の無礼を許してくださいますか」
「許すも何も、無礼などと思っておりませんわ。むしろ、こちらから一つお願いしたいことがありますの」
これからやるべき事のためには、大国のお墨付きが必要なのだ。
なにせ、わたくしがこれからやるのは、確実にこの世界の国を全て巻き込む大きなことなのだから。
「フェレル公国としてできることならば、なんでも仰ってください」
「では、わたくしが現在統治しております独立領土を小国ティアラとして認め、小国ティアラから魔導騎士の国に対しての宣戦布告をする許可を頂きたいですわ」
投擲槍。
にしては、随分な大きさの槍であったが。
「なるほど、こういう使い方もありましたか、敵ながら参考になりますわね」
派手な登場に紛れて、わたくしも潜入を済ます。
まだ動くには早い。
「随分と派手にやってくれましたね。しかし、前と同じようにはいきませんよ」
どうやら、学院長自ら戦うらしい。
装備を見るに、形からイメージを促進させていくようだ。
物語に出てくるような魔女の姿で、魔法をわかりやすく放つのは絵になって美しいと思う。
槍を使い、その尽くをたたき落としているのもまた、いい光景だ。
見ようによっては、さながら演劇のようだろう。
やっているのは、殺し合いだが。
「こちらは大丈夫そうですわね」
次に目をやると斧槍を操る男の攻撃をソフィアが危なげなく防いでいる。
とは言え、防いでいるだけだ。
このままでは、押し切られる可能性もあるだろう。
同じ考えに至ったのか、リアム様達はこちらに加勢するようだ。
役には立たないだろうが。
とすれば残るは大剣を持つ男だ。
「いつまで隠れているつもりだ? ティアラ・ユースティア」
「その名は、もう名乗れませんのよ? ユースティアとは王族を示すもの、わたくしは既に王族ではない以上名乗ることを許されませんわ」
気づかれているだろうと思ってはいたが、名指しされるとは以外である。
「貴様らの慣習になど興味はない。あるのはただ一つ、貴様は俺を楽しませてくれるのかということだけだ」
手にしたおもちゃが強すぎて、自分まで強くなったと勘違いしているようだ。
「喰らい尽くせ」
「報告通りだな、つまらん」
虚空より現れたヒュドラの首は残念ながら、喰いちぎること叶わず消える。
「それが魔力を霧散させる石ですか、実物を見たことがなくて、困っていたのですわ。ユース帝国の鉱山にそれこそたくさんありますわね」
強国のイメージの他に、有用なものがまだあったのは驚きである。
「貴様の攻撃は、問答無用の威力があるようだが、魔力が霧散してしまえばなんの驚異にもならん」
あの石の弱点は知っている。
1つ、魔力を流さないと効果を発揮しない。
1つ、大気に触れている魔力しか霧散しない
1つ、効果範囲がかなり狭い
「魔法で攻撃する限り、ダメージが入らないと言いたいようですわね」
「貴様の持つその槍も、魔力によって作られる。すなわち、俺に触れたその瞬間砕け散る」
「そして貴方は魔法を使いたい放題。便利ですわね」
自分に密着していなければいいのだから、魔法が使える。
卑怯だ。
とは言え、そんなに有用ならもっとみんな使っているだろう。
つまり、頼りきりでは上手くいかないということ。
そう、すごく単純な弱点。
「わたくし、魔法一辺倒ではありますけれど、それ故に、色々工夫してますのよ?」
放ったのは近くにあった瓦礫。
そして、オーバーロードによる超加速。
準備しておいた、王家の短刀を手に横合いに切りつける。
想定外の瓦礫が直撃し、仰け反った男にトドメを刺す。
寸分たがわず、鎧の隙間を縫うように、首を両断する。
「想定外だ、危うく死ぬところだったよ」
「あら気色の悪い、素直に死んでくださって構いませんでしたのに」
魔法による、事前の蘇生回復。
非常に難しいが、できないことではないのだ。
攻撃を受け、絶命する瞬間に無傷の自分をイメージし魔法を発動する。
すると、たとえ体が粉微塵に吹き飛んだとしても再生する。
一瞬でもタイミングがズレると魔法は発動せず死ぬことになるが。
「だがこれで、もう不意打ちはできんな」
「ええ、もう不意打ちはできませんわね」
「何が言いた──」
どう死ぬのか予想がついてないと、当然タイミングはズレる。
「わたくしが首を切り落とすだけで満足すると思っていましたの? 勝手に終わったと思わないことですわね」
不意打ちでもなんでもない。
内側に魔力を流し込んだだけである。
切りつけた断面に魔力を仕込んでその魔力が許す限りの小規模な爆発
今度は首から上が綺麗になくなり容易く死亡した。
「ソフィア、壊れない障壁ということは押しつぶすのも簡単ですわよ」
死んでしまえば用はない、早急にかたをつけよう。
「あっ、そうすれば良かったんですね! さすがお姉様です」
満面の笑顔で、人をグチャりと潰すソフィアである。
表情だけはとても可愛い。
なでなでしたくなる。
やったことは、わたくしも人のことは言えないが、エグい。
「残るはそちらだ──」
「片付けました、子供に後れを取るわけにもいきませんから」
万全に準備していれば、どうやらこの国は落とされることはなさそうだ。
認識を改めないといけない。
大国とは、そう簡単に潰されるような国ではないのだと。
「ティアラさん、先日の無礼を許してくださいますか」
「許すも何も、無礼などと思っておりませんわ。むしろ、こちらから一つお願いしたいことがありますの」
これからやるべき事のためには、大国のお墨付きが必要なのだ。
なにせ、わたくしがこれからやるのは、確実にこの世界の国を全て巻き込む大きなことなのだから。
「フェレル公国としてできることならば、なんでも仰ってください」
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