44 / 48
番外(単発)
単発のお仕事、異世界へ派遣、日当プライスレス
しおりを挟む
自由に生きると決めて、20年は経っただろうか。
ソフィアは結婚して、リアム様は王となり、世界は平和を謳歌している。
わたくしは、姿を変えて冒険者をやっている。
というか変えないとあまりに見た目が変わらない不審人物が完成してしまう。
「フィア、何か面白い依頼はないかしら?」
「どう見てもないでしょう。そもそも、魔物なんてものが跋扈していた時代は10年前です。今更あれに匹敵するような討伐依頼も出ませんよ」
20年の間にかなり濃い時間を過ごしたので物足りない。
突然、俺は世界を救う勇者だとかのたまうバカが現れたので粛清したり、世界を混沌の闇にどうたらと魔王を自称する自信過剰バカが現れたので粛清したり、空間にヒビを入れて出現する謎の魔物軍団が現れたりとなかなか楽しかった。
「エルフ狩りでもしましょうか」
「やめてください、亜人種は保護対象です」
「そっちじゃありませんわよ!」
エルフを含めた人とは少し違う人のような生物がやってきたのは、魔物が現れたあたりからである。
異世界とかいうものがあり、その世界からこちら側に流れ着いたというものが立証されているが、こちら側から干渉できないため、常に受け身という困った事情がある。
話が逸れたが、エルフには2種類いる。
亜人種と呼ぶ、人間以外の人と呼ばれる種族のものと、人間を襲う獣としてのエルフ。
見た目からして違うので混同することは無い。
亜人種の場合はエルフ族と呼ぶので、先程のやり取りは冒険者ならではの定型句と言ったものである。
「エルフ狩りの依頼もありませんね」
「もう、今日は近辺の獣退治でもして暇を潰すことにしましょう」
ということで、常駐依頼を受けることにする。
「獣退治を受けることにするわ」
「ダメです」
断られたわ。
「フィア、帰りましょう」
「そうですね」
しかし回り込まれたわ。
相変わらず気色の悪い。
「女神依頼を受けてくださいよー、誰も受けてくれないんですよー」
女神依頼、魔物が跋扈していた時に現れた、非常に迷惑な存在。
女神フェニア。
殺しても死なないので、迷惑この上ない。
そんなゴミからの無茶ぶりが女神依頼である。
かつての例で言うと、送り込んでいた勇者と協力して現れた災厄、魔王を倒せというものが1番分かりやすい。
既に死んでいるやつと協力して死んでいるやつを倒せとなどという、頭がおかしいことを言うような存在なのだ。
粛清しようと数えるのも面倒なぐらい殺しに行ってみたが、死ぬ事がないので諦めた。
「喰らい尽くせ」
「にゃあー!」
この受付がその女神なのだけどね。
「相変わらず酷いことしますね、泣きますよ?」
「泣かなくていいから死んでちょうだい。わたくしも暇じゃなくてよ?」
暇しているけれど。
「というかですね、せっかく用意した異世界の勇者と異世界の魔王を戦わせるという私の娯楽を台無しにするからこんなことになるんですよ」
無言で首を切り落とす。
再生されても困るので傷を焼いておく。
これで暫くは──
「酷いことしますね!」
「気色の悪い」
消し炭にしたら虚空から復活したりするのだから、本当に気色の悪い存在である。
「それで、何をして欲しいんですの? 内側からゆっくりと食べられながら消滅してみたくなりましたということであれば、喜んで協力致しますわよ」
この女神は、無駄にわたくしに構ってほしがるので鬱陶しいのだ。
「私の管理してる世界に、勇者をのたまうゴミクズが現れて好き勝手し始めたので討伐してくれません?」
「お断りしますわ」
「あーありがとうございます、早速行ってきてくれるんですね、それじゃあ行ってらっしゃーい」
この女神いつか殺さないといけないと思うのですわ。
そうして、何度目になるのかすら数えるのが面倒な、本来干渉できるはずのない異世界へと送り込まれるのであった。
フィアを置き去りにして。
「あの女神、ポンコツにも程がありますわね?」
送り込まれた場所はたぶん異世界。
魔法は使える。
身体も異常なし。
相棒不在。
「フィアがいないとなると、一部の魔法が使えませんわね」
見渡す限り、長閑な街である。
荒れている様子はない。
荒れている様子は、と注釈を付けたいが。
「随分と目が死んでおりますが、どうされましたの?」
と軽く声をかけたらぶっ飛ばされた。
酷い人達である。
「随分と目が死んでおりますが──」
軽く以下略。
「少しは話を聞く気になりましたかしら?」
「すみませんでした」
4回ぐらい繰り返したら話を聞いてくれました。
まったく。
「それで、なにやらこの世界に勇者とか言うクズが暴れていると聞かされているのですが、真実ですか? あいにくと、わたくしを送り込んだゴミも似たようなクズですので鵜呑みにすると物凄く大変なことになりますので、速やかに事実だけを教えてくださいます?」
結論だけを言おう。
勇者はクズである。
殺そう。
「やあ、君かい? 僕を殺そうだなんてのたまっているのは」
「ええ、自らの力に溺れ、支配者を気取り、好き勝手して遊んでいるそうですから」
全身を縛り上げられ、身動きを取れなくされて、衣服も破かれ、割りと悲惨なことになっているわたくしが言うのはさぞ愉快な光景であろう。
慰み者にはなりたくないが、こうでもしないと油断しそうになかったのだから仕方ないと割り切ることにしている。
いつもの手筈である。
わたくし、割りと見た目がいいらしいので。
情欲のはけ口に選びたくなるそうですわ。
抱かせる気はありませんけれど。
「最近、男ばっかで飽きてたんだけど、いいね、久しぶりに楽しめ──」
「ませんから、死んでおいてくださいませ。わたくしの魔法は封じることができませんので、今度から気をつけるべきですわね」
「な、なん…で……」
さて、偽物も倒したことですし、本物さんにも退場願いましょう。
魔力は覚えましたわ。
魔力、感じることが出来ないものでしたが、異世界にいるとよく分かります。
ええ、わたくし以外の魔力だけですが。
異世界でしか使えない技術なので、あまり喜べませんけれど。
「魔力を辿り、瞬殺が1番楽でいいですものね」
さーちあんどですとろい。
と女神、間違えたゴミが言っておりました。
「終わりましたので、帰還しますわね」
「もっと白熱した戦いとかしてくださいよー」
知りません、暇だから暇つぶしただけですもの。
─────────────────
実際、うちのティアラ様って、異世界に放り込まれても、何とかしそうなんですよね。
魔法使えなくても、じゃあ殴りますわとか言いそうですし。
とまぁ、本編にこんなの入れると物語破綻しますので、作者の暇つぶしでした。
続きませんし、完全におふざけストーリーですあしからず。
ソフィアは結婚して、リアム様は王となり、世界は平和を謳歌している。
わたくしは、姿を変えて冒険者をやっている。
というか変えないとあまりに見た目が変わらない不審人物が完成してしまう。
「フィア、何か面白い依頼はないかしら?」
「どう見てもないでしょう。そもそも、魔物なんてものが跋扈していた時代は10年前です。今更あれに匹敵するような討伐依頼も出ませんよ」
20年の間にかなり濃い時間を過ごしたので物足りない。
突然、俺は世界を救う勇者だとかのたまうバカが現れたので粛清したり、世界を混沌の闇にどうたらと魔王を自称する自信過剰バカが現れたので粛清したり、空間にヒビを入れて出現する謎の魔物軍団が現れたりとなかなか楽しかった。
「エルフ狩りでもしましょうか」
「やめてください、亜人種は保護対象です」
「そっちじゃありませんわよ!」
エルフを含めた人とは少し違う人のような生物がやってきたのは、魔物が現れたあたりからである。
異世界とかいうものがあり、その世界からこちら側に流れ着いたというものが立証されているが、こちら側から干渉できないため、常に受け身という困った事情がある。
話が逸れたが、エルフには2種類いる。
亜人種と呼ぶ、人間以外の人と呼ばれる種族のものと、人間を襲う獣としてのエルフ。
見た目からして違うので混同することは無い。
亜人種の場合はエルフ族と呼ぶので、先程のやり取りは冒険者ならではの定型句と言ったものである。
「エルフ狩りの依頼もありませんね」
「もう、今日は近辺の獣退治でもして暇を潰すことにしましょう」
ということで、常駐依頼を受けることにする。
「獣退治を受けることにするわ」
「ダメです」
断られたわ。
「フィア、帰りましょう」
「そうですね」
しかし回り込まれたわ。
相変わらず気色の悪い。
「女神依頼を受けてくださいよー、誰も受けてくれないんですよー」
女神依頼、魔物が跋扈していた時に現れた、非常に迷惑な存在。
女神フェニア。
殺しても死なないので、迷惑この上ない。
そんなゴミからの無茶ぶりが女神依頼である。
かつての例で言うと、送り込んでいた勇者と協力して現れた災厄、魔王を倒せというものが1番分かりやすい。
既に死んでいるやつと協力して死んでいるやつを倒せとなどという、頭がおかしいことを言うような存在なのだ。
粛清しようと数えるのも面倒なぐらい殺しに行ってみたが、死ぬ事がないので諦めた。
「喰らい尽くせ」
「にゃあー!」
この受付がその女神なのだけどね。
「相変わらず酷いことしますね、泣きますよ?」
「泣かなくていいから死んでちょうだい。わたくしも暇じゃなくてよ?」
暇しているけれど。
「というかですね、せっかく用意した異世界の勇者と異世界の魔王を戦わせるという私の娯楽を台無しにするからこんなことになるんですよ」
無言で首を切り落とす。
再生されても困るので傷を焼いておく。
これで暫くは──
「酷いことしますね!」
「気色の悪い」
消し炭にしたら虚空から復活したりするのだから、本当に気色の悪い存在である。
「それで、何をして欲しいんですの? 内側からゆっくりと食べられながら消滅してみたくなりましたということであれば、喜んで協力致しますわよ」
この女神は、無駄にわたくしに構ってほしがるので鬱陶しいのだ。
「私の管理してる世界に、勇者をのたまうゴミクズが現れて好き勝手し始めたので討伐してくれません?」
「お断りしますわ」
「あーありがとうございます、早速行ってきてくれるんですね、それじゃあ行ってらっしゃーい」
この女神いつか殺さないといけないと思うのですわ。
そうして、何度目になるのかすら数えるのが面倒な、本来干渉できるはずのない異世界へと送り込まれるのであった。
フィアを置き去りにして。
「あの女神、ポンコツにも程がありますわね?」
送り込まれた場所はたぶん異世界。
魔法は使える。
身体も異常なし。
相棒不在。
「フィアがいないとなると、一部の魔法が使えませんわね」
見渡す限り、長閑な街である。
荒れている様子はない。
荒れている様子は、と注釈を付けたいが。
「随分と目が死んでおりますが、どうされましたの?」
と軽く声をかけたらぶっ飛ばされた。
酷い人達である。
「随分と目が死んでおりますが──」
軽く以下略。
「少しは話を聞く気になりましたかしら?」
「すみませんでした」
4回ぐらい繰り返したら話を聞いてくれました。
まったく。
「それで、なにやらこの世界に勇者とか言うクズが暴れていると聞かされているのですが、真実ですか? あいにくと、わたくしを送り込んだゴミも似たようなクズですので鵜呑みにすると物凄く大変なことになりますので、速やかに事実だけを教えてくださいます?」
結論だけを言おう。
勇者はクズである。
殺そう。
「やあ、君かい? 僕を殺そうだなんてのたまっているのは」
「ええ、自らの力に溺れ、支配者を気取り、好き勝手して遊んでいるそうですから」
全身を縛り上げられ、身動きを取れなくされて、衣服も破かれ、割りと悲惨なことになっているわたくしが言うのはさぞ愉快な光景であろう。
慰み者にはなりたくないが、こうでもしないと油断しそうになかったのだから仕方ないと割り切ることにしている。
いつもの手筈である。
わたくし、割りと見た目がいいらしいので。
情欲のはけ口に選びたくなるそうですわ。
抱かせる気はありませんけれど。
「最近、男ばっかで飽きてたんだけど、いいね、久しぶりに楽しめ──」
「ませんから、死んでおいてくださいませ。わたくしの魔法は封じることができませんので、今度から気をつけるべきですわね」
「な、なん…で……」
さて、偽物も倒したことですし、本物さんにも退場願いましょう。
魔力は覚えましたわ。
魔力、感じることが出来ないものでしたが、異世界にいるとよく分かります。
ええ、わたくし以外の魔力だけですが。
異世界でしか使えない技術なので、あまり喜べませんけれど。
「魔力を辿り、瞬殺が1番楽でいいですものね」
さーちあんどですとろい。
と女神、間違えたゴミが言っておりました。
「終わりましたので、帰還しますわね」
「もっと白熱した戦いとかしてくださいよー」
知りません、暇だから暇つぶしただけですもの。
─────────────────
実際、うちのティアラ様って、異世界に放り込まれても、何とかしそうなんですよね。
魔法使えなくても、じゃあ殴りますわとか言いそうですし。
とまぁ、本編にこんなの入れると物語破綻しますので、作者の暇つぶしでした。
続きませんし、完全におふざけストーリーですあしからず。
0
あなたにおすすめの小説
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん
ファンタジー
ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
公爵夫人は命がけ!
保谷なのめ
ファンタジー
そこそこの家柄に生まれた平凡な貴族令嬢リディア。
そこへ突然、両親が持ってきた縁談相手は「冷酷無比」「人を喰らう」などと恐れられる、〝帝国の剣〟公爵キースだった。
領地へ嫁いだその翌朝。リディアは突如として思い出す——ここは自分が前世で書いた恋愛小説の世界。そして、リディアは本来のヒロインの相手役であるキースの〝死別した元妻〟キャラだったのだ!
このままだと『物語』が開始する2年後までに死んでしまう!その運命を変えるため、リディアは作者としての知識と、彼女自身の生きる意志を武器に抗い始める。
冷酷と噂の夫との距離も、少しずつ近づいて――?
死ぬ運命の〝元妻〟令嬢が、物語をぶっ壊して生き残る!運命改変ファンタジー!
小説家になろう、カクヨムでも更新中です。https://ncode.syosetu.com/n1631ku/
1日1話、毎日更新です!
強い祝福が原因だった
棗
恋愛
大魔法使いと呼ばれる父と前公爵夫人である母の不貞により生まれた令嬢エイレーネー。
父を憎む義父や義父に同調する使用人達から冷遇されながらも、エイレーネーにしか姿が見えないうさぎのイヴのお陰で孤独にはならずに済んでいた。
大魔法使いを王国に留めておきたい王家の思惑により、王弟を父に持つソレイユ公爵家の公子ラウルと婚約関係にある。しかし、彼が愛情に満ち、優しく笑い合うのは義父の娘ガブリエルで。
愛される未来がないのなら、全てを捨てて実父の許へ行くと決意した。
※「殿下が好きなのは私だった」と同じ世界観となりますが此方の話を読まなくても大丈夫です。
※なろうさんにも公開しています。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
ハイエルフの幼女に転生しました。
レイ♪♪
ファンタジー
ネグレクトで、死んでしまったレイカは
神様に転生させてもらって新しい世界で
たくさんの人や植物や精霊や獣に愛されていく
死んで、ハイエルフに転生した幼女の話し。
ゆっくり書いて行きます。
感想も待っています。
はげみになります。
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします
未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢
十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう
好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ
傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する
今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった
転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ
karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。
しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる