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第三章
第17話 ヤマダヨシミ その1
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幼い頃、一定数の男の子がヒーローに憧れるように、一定数の女の子も美少女戦士や魔法少女のような戦うヒロインに憧れる。
山田淑美もその一人だった。
「私もいつか魔法少女になりたい。美少女戦士になりたい」
しかし、どうやればなれるのかなんてわからないままに、気づけば「少女」と呼ばれる時代は終わりを告げ、彼女は悪の組織と戦うどころか、学生の本文とかいう巨大な組織が送り出してくるxやらyやらと戦う羽目になっていた。
都内のそれなりに裕福な家庭に育ったヨシミは、私立の進学校の高校に進んだ。
この高校を選んだ理由は一つ。
制服が、好きな美少女戦士が通っていた学校のものに似ていたからだ。
中学の頃よりもほんの少しスカートを短くして、香水をちょこっとだけふりかける。
少女漫画で見たような美形生徒会長や、美男子四天王みたいな人は居るだろうか。
もしも隣の席の男子が超絶美男子で、直ぐに付き合っちゃったりしたらどうしよう。勉強に身が入らなくなってしまうかもしれない。
でも、一緒に勉強すれば逆にやる気が出るかもしれない。
そんな淡い期待を胸に、小学校以来初めての共学校への登校に胸を膨らませた。
その願いが神に届いたかどうかは分からない。
4クラスあるうちの1年2組。
そこでの隣の席になった男子、田村公保は、王子様とでも形容したくなるほどの超美青年だった。
身長175センチで切れ長の瞳。スラリとした体形ながらも、ほどよく筋肉のついた体。
それはまるで、転生令嬢ものの漫画に登場するイケメン貴族そのものだった。
(やった、神様、ありがとう!)
「あ、あの、わたし、山田淑美って言います。よ、宜しくね」
「ああ、僕は田村公保。よろしくね、山田さん」
(あ、優しい。それに笑顔も素敵……)
ヨシミは完全に田村に惚れ、彼をターゲットにした。
学校が始まり、最初の二週間。
授業の合間などに、他愛のない話をした。
しかし、彼も実は私に興味があるのだろうか?
私の事を知りたいのか、沢山の質問をしてくれる。
きっとこれは脈ありに違いない。でも、さすがに告白は早すぎるよね。いや、こういうのは男子からするべきだし。
ヨシミはいつしかそんな事を考えるようになった。
数回、田村と下校を共にしたこともあった。
そこでも田村は、目の前の学校で初めてできた女友達に、中学時代の部活や、趣味、家のことなど、様々な質問をした。
そして、ヨシミはひたすら、好かれるために、彼に振られた話題に全力で返し続けた。
新学期開始から一ヶ月。
席の近くでそのまま親睦を深める者。
同じ部活動でグループを作る者。
同じ音楽の趣味でグループを作る者。
オタク仲間で固まる者。
それぞれのクラスで、おおよそのチーム分けが構築された中、ヨシミは、そのどのグループにも属さずに、田村を追いかけた。
ちなみに、大体その時期になると、どのクラスの誰がカッコいい、誰が可愛い、という情報も完全に出揃うようで、ヨシミの学年でも、美青年では誰、可愛い系男子では誰、イカツイ系男前では誰といったように、話に上る名前も随分と限られてきていた。
もちろん、その中でも田村は常に女子の憧れの的の上位に位置していた。
(でも私は、田村君と一緒に下校する仲だし。このまま付き合ったりしちゃったら、私も憧れの的になっちゃうかも)
それはヨシミにとって、最高の学園生活の始まりであり、近く訪れる揺るぎない未来だと確信していた。
しかし、ここ最近、ヨシミは田村と下校を共に出来ていなかった。
田村は、既にバスケットボール部に所属していたので、部活がある時は必然的に別々になってしまう。
そうでない日も、タイミングが悪いというか、気づけばいつの間にか帰ってしまっていることが多くなったのだ。
業を煮やしたヨシミは、ある日、部活終わりの田村を待ち伏せすることにした。
バスケ部の活動が終わり、二、三年生が先に体育館を出ていく。一年生は片付けがあるようで、まだモップ掛けをしている姿が見て取れた。もちろん、その中に田村の姿もあった。
「たむ、帰ろうぜ!」
「ああ、すまん! 俺、教室に参考書忘れたから、ちょっと戻るわ。先に帰ってて」
「そっか、じゃあまた明日な」
ヨシミの耳にそんな会話が聞こえて来た。
(やった、田村君が一人きりになる!)
ヨシミは先回りして、自身の教室に向かった。
校庭から聞こえてくる、サッカー部と野球部の掛け声。
すっかり日が長くなったお陰で、まだ薄暗く見える景色。
(もう少し夕日が残っていれば、ロマンチックなシチュエーションなんだけどな)
ヨシミは、居眠りしてしまった自分が夕日の中で、優しく彼氏に起こされる。そんな少女漫画によく登場するシーンを思い浮かべていた。
ガラガラ。
教室の扉が開く音がした。
ヨシミが振り向くと、そこには田村が立っていた。
「あ……」
田村は小さくそう呟くと、自分の席の机の中にあった参考書を鞄にしまい始めた。
「偶然だね、田村君。最近部活も始まって忙しそうだね」
「ああ、そうだね。忙しいよ」
「ふふ、バスケットボール、好きなんだ」
ヨシミのその言葉を聞いて、田村は一瞬、参考書を鞄にしまう手を止めた。そして少し奥歯を噛みしめると、また何事も無かったかのように動き出した。
「ねえ、最近一緒に帰れなかったからさ、一緒に帰ろ?」
「あのさ」
遮るように田村は口を開いた。心なしか、どこか震えている様な気がした。
「……山田さんは、一人っ子なんだよね。それでお父さんはとてもご立派な仕事をしていて、お母さんは料理が上手くて調理士の免許も持ってるんだっけ?
中学は常に学年三位以内だったんだっけ? 学校の授業も簡単すぎるって言ってたし、本当に凄いよ。
好きなアニメは美少女戦士とか魔法少女もので、DVD全巻揃えてるんだよね。今では手に入らないプレミア付きのフィギュアも何個も持ってるとも言ってたね。
この学校は、偏差値的に少し下だったけど、家が近いからしょうがなく選んだんだよね。私立だから結構学費もかかると思うけど、仕方なくで通えるなんて本当に親御さんのお仕事が順調なんだね」
淡々と言葉を発した田村の意図が、ヨシミには分からなかった。
ただなんとなく、彼が不機嫌なのだ、という事は理解出来た。
「俺の兄弟がさ、何人いるか知ってる?」
「いいえ? だって、教えてもらってないもん」
この人は、何が言いたいのだろう?
自分の家族構成を私に教えたいなら、そう言えばいいのに。
急に田村に問われたヨシミはそんな事を考えていた。
「俺の好きな映画、好きな小説、好きなバンド、好きな色。どれか一つでも知ってる?」
「え? だって聞いてないし、私が知る訳ないと思うんだけど?」
私は超能力者でも無ければ探偵でもない。
聞いてもいない情報をどうして知ることが出来るのだろう。
彼女のそんな様子を見た田村は、一つため息をつくとヨシミに向かって微笑んだ。
「バスケ、好きなんだね、って聞いたよね?」
「え? うん」
「俺、中学時代、バスケで全国行ってるんだ。二年生で準優勝。三年はベスト4だけど」
「ええ! 凄い、さすが田村君だね! 教えてくれればよかったのに!」
その過去の活躍への賞賛の言葉を口にしたヨシミに対して、田村も笑顔で答えた。
いや、笑顔を張り付けた、といった方が正しいかもしれない。
ヨシミは、その笑顔の奥にある、諦めと侮蔑の視線に気づくことは出来なかった。
「いやいや、話を聞く限りじゃ、山田さんの方が俺なんかよりもきっとずっと凄い人だよ。だから、俺なんかとはつるまない方が良いよ。頭も悪いし、家もそんなに裕福じゃない。忙しいから自由になる時間もほとんどないし。そう山田さんは、もっと将来有望な人たちと付き合うべきだよ」
田村はそう言い残すと、鞄を持って足早に教室を出ていった。
……そうか。
彼の家は貧乏なのか。それに日本人で、バスケットボール選手で将来食っていけるようになる人なんてほとんどいない。そういう意味では彼の将来は明るいとは言えないな。勉強もそんなに出来ないみたいだし。それに、仮に付き合ったとしても、こう毎日部活部活では、一緒にいる時間なんてほとんど取れない。
ヨシミは田村に言われたことを反芻し、心の中で彼の発した言葉の通りに彼のマイナスポイントを羅列した。
そして、こう断定したのだった。
彼は所詮顔だけの男。他にマイナスが多すぎる。きっと付き合っても幸せになれない、と。
それ以来、ヨシミの中で底辺にランキングされた田村にヨシミが話しかける事は無くなった。
しかし高校生活始まってひと月という時間は、高校生活で最も重要な時間と言っても過言ではない。
その時間を、学校中の憧れの的である王子様の尻を追いかけて過ごしたのだ。
既に出来上がってしまったグループ。
今更入れない部活動。
隣の席というだけで田村に馴れ馴れしく接する痛い奴、という周りの評価。
こうして自称才女であるヨシミの、多くのディスアドバンテージを背負い、大勢から不興を買った高校生活がスタートしたのであったが、当の本人は知る由も無かった。
ちなみに、更にその数週間後に行われた、高校で初めての中間試験。
ヨシミは197人中96位だった。
まあ、半分より上だし。
彼女の中間試験への感想はそれだけだった。
『4位 田村公保』
当然興味もないので、成績優秀者の貼り出しに一瞥もしなかったヨシミは、その文言を見ることは無かった。
そして、いつぞやの帰り道に、彼に「勉強教えてあげようか?」などと言っていたことも、当然思い出す事は無かったのであった。
(第18話 『ヤマダヨシミ その2』へつづく)
山田淑美もその一人だった。
「私もいつか魔法少女になりたい。美少女戦士になりたい」
しかし、どうやればなれるのかなんてわからないままに、気づけば「少女」と呼ばれる時代は終わりを告げ、彼女は悪の組織と戦うどころか、学生の本文とかいう巨大な組織が送り出してくるxやらyやらと戦う羽目になっていた。
都内のそれなりに裕福な家庭に育ったヨシミは、私立の進学校の高校に進んだ。
この高校を選んだ理由は一つ。
制服が、好きな美少女戦士が通っていた学校のものに似ていたからだ。
中学の頃よりもほんの少しスカートを短くして、香水をちょこっとだけふりかける。
少女漫画で見たような美形生徒会長や、美男子四天王みたいな人は居るだろうか。
もしも隣の席の男子が超絶美男子で、直ぐに付き合っちゃったりしたらどうしよう。勉強に身が入らなくなってしまうかもしれない。
でも、一緒に勉強すれば逆にやる気が出るかもしれない。
そんな淡い期待を胸に、小学校以来初めての共学校への登校に胸を膨らませた。
その願いが神に届いたかどうかは分からない。
4クラスあるうちの1年2組。
そこでの隣の席になった男子、田村公保は、王子様とでも形容したくなるほどの超美青年だった。
身長175センチで切れ長の瞳。スラリとした体形ながらも、ほどよく筋肉のついた体。
それはまるで、転生令嬢ものの漫画に登場するイケメン貴族そのものだった。
(やった、神様、ありがとう!)
「あ、あの、わたし、山田淑美って言います。よ、宜しくね」
「ああ、僕は田村公保。よろしくね、山田さん」
(あ、優しい。それに笑顔も素敵……)
ヨシミは完全に田村に惚れ、彼をターゲットにした。
学校が始まり、最初の二週間。
授業の合間などに、他愛のない話をした。
しかし、彼も実は私に興味があるのだろうか?
私の事を知りたいのか、沢山の質問をしてくれる。
きっとこれは脈ありに違いない。でも、さすがに告白は早すぎるよね。いや、こういうのは男子からするべきだし。
ヨシミはいつしかそんな事を考えるようになった。
数回、田村と下校を共にしたこともあった。
そこでも田村は、目の前の学校で初めてできた女友達に、中学時代の部活や、趣味、家のことなど、様々な質問をした。
そして、ヨシミはひたすら、好かれるために、彼に振られた話題に全力で返し続けた。
新学期開始から一ヶ月。
席の近くでそのまま親睦を深める者。
同じ部活動でグループを作る者。
同じ音楽の趣味でグループを作る者。
オタク仲間で固まる者。
それぞれのクラスで、おおよそのチーム分けが構築された中、ヨシミは、そのどのグループにも属さずに、田村を追いかけた。
ちなみに、大体その時期になると、どのクラスの誰がカッコいい、誰が可愛い、という情報も完全に出揃うようで、ヨシミの学年でも、美青年では誰、可愛い系男子では誰、イカツイ系男前では誰といったように、話に上る名前も随分と限られてきていた。
もちろん、その中でも田村は常に女子の憧れの的の上位に位置していた。
(でも私は、田村君と一緒に下校する仲だし。このまま付き合ったりしちゃったら、私も憧れの的になっちゃうかも)
それはヨシミにとって、最高の学園生活の始まりであり、近く訪れる揺るぎない未来だと確信していた。
しかし、ここ最近、ヨシミは田村と下校を共に出来ていなかった。
田村は、既にバスケットボール部に所属していたので、部活がある時は必然的に別々になってしまう。
そうでない日も、タイミングが悪いというか、気づけばいつの間にか帰ってしまっていることが多くなったのだ。
業を煮やしたヨシミは、ある日、部活終わりの田村を待ち伏せすることにした。
バスケ部の活動が終わり、二、三年生が先に体育館を出ていく。一年生は片付けがあるようで、まだモップ掛けをしている姿が見て取れた。もちろん、その中に田村の姿もあった。
「たむ、帰ろうぜ!」
「ああ、すまん! 俺、教室に参考書忘れたから、ちょっと戻るわ。先に帰ってて」
「そっか、じゃあまた明日な」
ヨシミの耳にそんな会話が聞こえて来た。
(やった、田村君が一人きりになる!)
ヨシミは先回りして、自身の教室に向かった。
校庭から聞こえてくる、サッカー部と野球部の掛け声。
すっかり日が長くなったお陰で、まだ薄暗く見える景色。
(もう少し夕日が残っていれば、ロマンチックなシチュエーションなんだけどな)
ヨシミは、居眠りしてしまった自分が夕日の中で、優しく彼氏に起こされる。そんな少女漫画によく登場するシーンを思い浮かべていた。
ガラガラ。
教室の扉が開く音がした。
ヨシミが振り向くと、そこには田村が立っていた。
「あ……」
田村は小さくそう呟くと、自分の席の机の中にあった参考書を鞄にしまい始めた。
「偶然だね、田村君。最近部活も始まって忙しそうだね」
「ああ、そうだね。忙しいよ」
「ふふ、バスケットボール、好きなんだ」
ヨシミのその言葉を聞いて、田村は一瞬、参考書を鞄にしまう手を止めた。そして少し奥歯を噛みしめると、また何事も無かったかのように動き出した。
「ねえ、最近一緒に帰れなかったからさ、一緒に帰ろ?」
「あのさ」
遮るように田村は口を開いた。心なしか、どこか震えている様な気がした。
「……山田さんは、一人っ子なんだよね。それでお父さんはとてもご立派な仕事をしていて、お母さんは料理が上手くて調理士の免許も持ってるんだっけ?
中学は常に学年三位以内だったんだっけ? 学校の授業も簡単すぎるって言ってたし、本当に凄いよ。
好きなアニメは美少女戦士とか魔法少女もので、DVD全巻揃えてるんだよね。今では手に入らないプレミア付きのフィギュアも何個も持ってるとも言ってたね。
この学校は、偏差値的に少し下だったけど、家が近いからしょうがなく選んだんだよね。私立だから結構学費もかかると思うけど、仕方なくで通えるなんて本当に親御さんのお仕事が順調なんだね」
淡々と言葉を発した田村の意図が、ヨシミには分からなかった。
ただなんとなく、彼が不機嫌なのだ、という事は理解出来た。
「俺の兄弟がさ、何人いるか知ってる?」
「いいえ? だって、教えてもらってないもん」
この人は、何が言いたいのだろう?
自分の家族構成を私に教えたいなら、そう言えばいいのに。
急に田村に問われたヨシミはそんな事を考えていた。
「俺の好きな映画、好きな小説、好きなバンド、好きな色。どれか一つでも知ってる?」
「え? だって聞いてないし、私が知る訳ないと思うんだけど?」
私は超能力者でも無ければ探偵でもない。
聞いてもいない情報をどうして知ることが出来るのだろう。
彼女のそんな様子を見た田村は、一つため息をつくとヨシミに向かって微笑んだ。
「バスケ、好きなんだね、って聞いたよね?」
「え? うん」
「俺、中学時代、バスケで全国行ってるんだ。二年生で準優勝。三年はベスト4だけど」
「ええ! 凄い、さすが田村君だね! 教えてくれればよかったのに!」
その過去の活躍への賞賛の言葉を口にしたヨシミに対して、田村も笑顔で答えた。
いや、笑顔を張り付けた、といった方が正しいかもしれない。
ヨシミは、その笑顔の奥にある、諦めと侮蔑の視線に気づくことは出来なかった。
「いやいや、話を聞く限りじゃ、山田さんの方が俺なんかよりもきっとずっと凄い人だよ。だから、俺なんかとはつるまない方が良いよ。頭も悪いし、家もそんなに裕福じゃない。忙しいから自由になる時間もほとんどないし。そう山田さんは、もっと将来有望な人たちと付き合うべきだよ」
田村はそう言い残すと、鞄を持って足早に教室を出ていった。
……そうか。
彼の家は貧乏なのか。それに日本人で、バスケットボール選手で将来食っていけるようになる人なんてほとんどいない。そういう意味では彼の将来は明るいとは言えないな。勉強もそんなに出来ないみたいだし。それに、仮に付き合ったとしても、こう毎日部活部活では、一緒にいる時間なんてほとんど取れない。
ヨシミは田村に言われたことを反芻し、心の中で彼の発した言葉の通りに彼のマイナスポイントを羅列した。
そして、こう断定したのだった。
彼は所詮顔だけの男。他にマイナスが多すぎる。きっと付き合っても幸せになれない、と。
それ以来、ヨシミの中で底辺にランキングされた田村にヨシミが話しかける事は無くなった。
しかし高校生活始まってひと月という時間は、高校生活で最も重要な時間と言っても過言ではない。
その時間を、学校中の憧れの的である王子様の尻を追いかけて過ごしたのだ。
既に出来上がってしまったグループ。
今更入れない部活動。
隣の席というだけで田村に馴れ馴れしく接する痛い奴、という周りの評価。
こうして自称才女であるヨシミの、多くのディスアドバンテージを背負い、大勢から不興を買った高校生活がスタートしたのであったが、当の本人は知る由も無かった。
ちなみに、更にその数週間後に行われた、高校で初めての中間試験。
ヨシミは197人中96位だった。
まあ、半分より上だし。
彼女の中間試験への感想はそれだけだった。
『4位 田村公保』
当然興味もないので、成績優秀者の貼り出しに一瞥もしなかったヨシミは、その文言を見ることは無かった。
そして、いつぞやの帰り道に、彼に「勉強教えてあげようか?」などと言っていたことも、当然思い出す事は無かったのであった。
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