幼女のお股がツルツルなので徳川幕府は滅亡するらしい

マルシラガ

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第一幕 子猫は勝手気ままに散歩に出かける

愛姫(めごひめ)3

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「姫、話が逸れておりますぞ。問題は今のこの事態をどうやって収めるかです」

 百合丸たちに羨望の目を向けられて愛姫は大層ご機嫌麗しくなっているが、それをぶった斬るように余三郎は口を挟んだ。

 なにしろ自分の首が懸かっているから気が気でない。

「心配しすぎじゃ叔父上。その年でそんなに気を使っていては禿げるぞ」

「殿、禿はげは困る。禿は霧の好みじゃない。年をとってからのかっこいい禿なら認める、なの」

「そういえば先代の将軍様ってツルツルに禿げ上がっていたそうねぇ。殿は大丈夫かしら?」

『こ、こやつらは……』

 好き勝手な事をかしましく言い募る三人にこめかみを押さえつつ、そっと指を広げて生え際を隠した。

「わしの髪の事など今は関係ないじゃろう。それよりも百合丸、正直に申せ。まことの理由はなんだ。そもそもなぜにおまえらは大奥へ忍び込んだのだ」

 余三郎は他の三人と違って少しは反省の色を浮かべている百合丸に目を向けた。

「その……なんと言うか……」

 百合丸は言いにくそうに言葉をつまらせて視線を逸らした。

「武家の妻たる者の心構えを……その……大奥の者たちから御教授してもらおうかと……」

「天下の大奥ですものねぇ、礼儀作法は必須の事でしょうから教えてもらうなら一番かも」

「妻の心構え?……百合丸、おまえどこぞの武士の所にでも嫁ぎたいのか? 相手は誰だ? 一目惚れでもしたのか?」

 カチン、ビシュッ!

 居合い抜きで引き抜かれた百合丸の刀が余三郎の耳の薄皮を削いだ。

「な……何をする、百合丸。いま避けなければ確実にわしの目に刺さっておったぞ!?」

「殿。蚊がおったのじゃ、他意はない」

 殺気を孕んだ目でそう言われたところで納得できるはずもない。

「あらあら。目を刺されそうになったのですか? お魚の目刺しなら夕飯のおかずに出来たのに残念ですわねぇ」

「食うのか? 目刺しされたら、わし食べられるのか!?」

「殿。食べるのなら、霧を食べて」

「霧、おまえもおまえで何を言っている? 意味を分かって言っているのか八歳児!?」

「叔父上はモテるのう。こんな可愛いらしい幼女と凛々しい美少女の両方に好かれて」

「す、好かれ!? せ、せ、せ、拙者は別に殿の事など、な、なんとも思っておりまないでござりましゅるっ!」

「百合丸、姫の戯言ざれごとを本気にしてムキになるな」

「あらあら、私だけ仲間外れは寂しいわねぇ。私も殿は大好きなんですよ」

「なんと。叔父上はこのようなボインバインにも好かれておるのか! ところでそなたお役目はなんなのじゃ?」

「お役目? う~ん……。私がここで働くようになったのは母が大奥で殿の乳母うばをしていた縁があったからなので、そういう繋がりで考えますと、やっていることは女中ですけれど役職としては私も殿の乳母ということになるのかしら」

「おぉ乳母であるか。つまり、そなたは乳で奉仕するのだな? それだけ乳が大きければさぞ立派な勤めを果たすことであろう。見事に適材適所だな叔父上!」

「あらあらまぁまぁ。乳で奉仕だなんて……挟んで擦るとか、かしら? 照れちゃうわぁ」

「照れてないで否定して下さい菊花さん。乳母のお仕事にそんな役目なんて無いですよ」

「むむっ、これは思わぬ伏兵でござる!」

「強敵、なの」

「おぬしら二人も本気にするな。って、話が逸れ過ぎだ。今はそんな事を話しておる場合では――」

「ところで先ほどから気になっておるのじゃが、なにやら楽しげな太鼓と笛の音が聞こえるのう」

「――場合では、ないんですけどねぇ姫様? 真面目にわしの話を聞く気はありますか? というか、聞いてくだされ!」

 喋っている途中で愛姫に話を被せられて余三郎の顔が怒りで引きつった。
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