公爵様は訳ありメイドに溺れる

ゆーかり

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昼間はメイドの仕事を行い、夜は公爵様の仕置きを受け、抱き締められながら眠る日々が1月ほど続いた頃でしょうか。ついに恐れていた日がやってまいりました。

「アリーチェだったわね、今日を限りに出ていきなさい。理由はよぉおくわかってるわよね」

こめかみに青筋を走らせながら、大奥様は爆発寸前の火山の様なお顔でわたくしを睨んでおられました。

「畏まりました大奥様。これまで大変お世話になりありがとうございました」

わたくしは深々とお辞儀をすると、その足で荷物をまとめ公爵家のお邸を後にしました。
使用人通用口に見送りに来て下さったセイラ様や先輩方に簡単にですがお礼とお別れをいうことが出来、わたくしは満足でした。

大変よくして頂いた公爵様にも一言お礼とお別れとを申し上げたかったのですが、流石に叶いそうにありませんね。

さて、これから何をしましょう?また貴族のお邸で働き口を探すのもいいですね。紹介状などがないと厳しいのでしょうか?思い切って隣国まで旅をするのも楽しそうです。

あれこれと考え事をしながら町を歩いていると、日中はどこか物寂しい歓楽街へ辿り着いたようです。そこで一人の女性に声を掛けられました。

「こんなとこで何してんの?あんたみたいの一人で歩いてたら危ないよ?」

すっぴんのようですが華やかな顔立ちと色気がふわりと立ち上る、なんとも艶めかしい女性です。

「ご親切にありがとうございます。実は職を失いまして、これから何をしようかと思案しておりました」

「ふうん」

女性は品定めするようにわたくしを眺めると、あっという間に眼鏡を奪い取ってしまいました。そして簾前髪をひょいと摘み上げたのです。

「は!?なんでこんなだっさい眼鏡かけてんの?この前髪も鬱陶しいな。こんなんなければあんた上級までいけるだろ」

「上級、ですか?」

「そ、ここ私の働いてる高級娼館。貴族とかお偉いさん限定のお高い娼館さ」

娼館、春を売るお仕事ですね。もし少しでもわたくしにその価値があるのなら選択肢の一つに入れてもいいかもしれません。

「少しお話を伺ってもよろしいですか?」

「いいよ、おいで」

笑顔で差し出された手を取って、わたくしは真っ赤な門を潜ったのでした。
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