孤独な姫君に溺れるほどの愛を

ゆーかり

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「ロラン、今日も付き合わせてしまってごめんなさい」

「とんでもありません、光栄ですよリラ様」

デビューを目前に控え、総仕上げとばかりに私は講師達によってしごかれていました。今日はダンスの日です。

「リラ様、もっと肘を伸ばして!」

「はい!」

「そこ、ステップが遅れています!」

「すみません!」

「顎を引いて笑顔は絶やさずに!」

「は、はいっ!」

当日のファーストダンスもロランとの予定ですので、こうして練習と称し何度も何度も付き合わせる羽目になってしまいました。

ダンスは小さな頃から嗜んでいるため苦手ではないはずなのですが、厳しい講師の前ではどうにも萎縮してしまって、上手くいきません。
そんな私にイヤな顔一つせず、ロランは根気よく付き合ってくれるのでした。

ロランはセヴク侯爵家の嫡男です。私の騎士になど、どう考えても勿体ない身分の方。

そんな方を敢えて与えたということは……ロランは私の婚約者候補の一人なのかもしれません。

私より5歳年上のロランは、落ち着いていてとても大人な男性に見えました。その上これ程の美丈夫なのですから、社交界でも令嬢方に騒がれるような存在でしょう。

失敗ばかりの私を咎めることもなく、優しく微笑むロランを見詰めながら、やはり私などには勿体ない方だと改めて思うのでした。

「お疲れですか? 少し休憩にしましょう」

ロランは講師に目配せをすると、テラスのベンチまで私をエスコートしてくれました。

「ありがとうございます。ロランはとてもダンスが上手だと、しみじみ感じ入っていたのですよ」

「それは……光栄ですね」

「特に私のフォローが……」

申し訳なさそうに見上げると、ロランはクスクスと笑い出しました。

「ごめんなさい、こんなにたくさん付き合ってもらっているのにミスばかりで……」

「リラ様はお上手ですよ。ミスをされていたなど気付きもしませんでした」

紳士で優しいロランは、決して女性に恥をかかせるような真似はしません。
私の細かいミスを、上手にさりげなくフォローしてくれるのです。

流石祖父の眼鏡に敵う方。きっとロランとならば幸せな家庭が築けることでしょう。

そう思った時、何故かふとエドの顔が頭に浮かびました。ロランのような分かりやすい優しさではありませんが、エドもまた思いやり深い人です。

戻ったらエドにもきっと素晴らしいご令嬢との婚姻話が待っていることでしょう。お爺様も大事な孫のためにと張り切っているご様子でしたから。

大人びて見えるけれど、実はやんちゃなエドが結婚……何だか想像がつかなくて思わずクスクスと笑ってしまいました。
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