孤独な姫君に溺れるほどの愛を

ゆーかり

文字の大きさ
5 / 18

しおりを挟む
「ロラン、今日も付き合わせてしまってごめんなさい」

「とんでもありません、光栄ですよリラ様」

デビューを目前に控え、総仕上げとばかりに私は講師達によってしごかれていました。今日はダンスの日です。

「リラ様、もっと肘を伸ばして!」

「はい!」

「そこ、ステップが遅れています!」

「すみません!」

「顎を引いて笑顔は絶やさずに!」

「は、はいっ!」

当日のファーストダンスもロランとの予定ですので、こうして練習と称し何度も何度も付き合わせる羽目になってしまいました。

ダンスは小さな頃から嗜んでいるため苦手ではないはずなのですが、厳しい講師の前ではどうにも萎縮してしまって、上手くいきません。
そんな私にイヤな顔一つせず、ロランは根気よく付き合ってくれるのでした。

ロランはセヴク侯爵家の嫡男です。私の騎士になど、どう考えても勿体ない身分の方。

そんな方を敢えて与えたということは……ロランは私の婚約者候補の一人なのかもしれません。

私より5歳年上のロランは、落ち着いていてとても大人な男性に見えました。その上これ程の美丈夫なのですから、社交界でも令嬢方に騒がれるような存在でしょう。

失敗ばかりの私を咎めることもなく、優しく微笑むロランを見詰めながら、やはり私などには勿体ない方だと改めて思うのでした。

「お疲れですか? 少し休憩にしましょう」

ロランは講師に目配せをすると、テラスのベンチまで私をエスコートしてくれました。

「ありがとうございます。ロランはとてもダンスが上手だと、しみじみ感じ入っていたのですよ」

「それは……光栄ですね」

「特に私のフォローが……」

申し訳なさそうに見上げると、ロランはクスクスと笑い出しました。

「ごめんなさい、こんなにたくさん付き合ってもらっているのにミスばかりで……」

「リラ様はお上手ですよ。ミスをされていたなど気付きもしませんでした」

紳士で優しいロランは、決して女性に恥をかかせるような真似はしません。
私の細かいミスを、上手にさりげなくフォローしてくれるのです。

流石祖父の眼鏡に敵う方。きっとロランとならば幸せな家庭が築けることでしょう。

そう思った時、何故かふとエドの顔が頭に浮かびました。ロランのような分かりやすい優しさではありませんが、エドもまた思いやり深い人です。

戻ったらエドにもきっと素晴らしいご令嬢との婚姻話が待っていることでしょう。お爺様も大事な孫のためにと張り切っているご様子でしたから。

大人びて見えるけれど、実はやんちゃなエドが結婚……何だか想像がつかなくて思わずクスクスと笑ってしまいました。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす

小木楓
恋愛
完結しました✨ タグ&あらすじ変更しました。 略奪された皇后を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。 「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」 「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」 大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。 しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。 強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。 夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。 恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……? 「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」 逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。 それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。 「一生、私の腕の中で溺れていろ」 守るために壊し、愛するために縛る。 冷酷な仮面の下に隠された、 一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。 ★最後は極上のハッピーエンドです。 ※AI画像を使用しています。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

看病しに行ったら、当主の“眠り”になってしまった

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全36話⭐︎ 倒れた当主を看病する役目を振られた使用人リィナは、彼の部屋へ通うことになる。 栄養、灯り、静かな時間、話し相手――“眠れる夜”を整えていく。そして、回復していく当主アレクシス。けれど彼は、ある夜そっと手を握り返し、低い声で囁く。 「責任、取って?」 噂が燃える屋敷で、ふたりが守るのは“枠(ルール)”。 手だけ、時間だけ、理由にしない――鍵はリィナが握ったまま。 けれど、守ろうとするほど情は育ち、合図の灯りはいつしか「帰る」ではなく「眠る」へ変わっていく。 看病から始まった優しい夜は、静かな執着に捕まっていく。 それでも、捕獲の鍵は彼ではなく――彼女の手にある。

冷酷騎士様の「愛さない」は一分も持たなかった件

水月
恋愛
「君を愛するつもりはない」 結婚初夜、帝国最強の冷酷騎士ヴォルフラム・ツヴァルト公爵はそう言い放った。 出来損ないと蔑まれ、姉の代わりの生贄として政略結婚に差し出されたリーリア・ミラベルにとって、それはむしろ救いだった。 愛を期待されないのなら、失望させることもない。 契約妻として静かに役目を果たそうとしたリーリアは、緩んだ軍服のボタンを自らの銀髪と微弱な強化魔法で直す。 ただ「役に立ちたい」という一心だった。 ――その瞬間。 冷酷騎士の情緒が崩壊した。 「君は、自分の価値を分かっていない」 開始一分で愛さない宣言は撤回。 無自覚に自己評価が低い妻に、激重独占欲を発症した最強騎士が爆誕する。 以後、 寝室は強制統合 常時抱っこ移動 一秒ごとに更新される溺愛 妻を傷つける者には容赦なし宣言 甘さ過多、独占欲過剰、愛情暴走中。 さらにはリーリアを取り戻そうとする実家の横槍まで入り――? 自己評価ゼロの健気令嬢と愛が一分も我慢できなかった最強騎士。 溺愛が止まらない、契約結婚から始まる甘すぎる逆転ラブコメ

【完結】妻の日記を読んでしまった結果

たちばな立花
恋愛
政略結婚で美しい妻を貰って一年。二人の距離は縮まらない。 そんなとき、アレクトは妻の日記を読んでしまう。

有名俳優の妻

うちこ
恋愛
誰もが羨む結婚と遺伝子が欲しかった そこに愛はいらない

悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。

香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。 皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。 さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。 しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。 それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?

冷遇妃ライフを満喫するはずが、皇帝陛下の溺愛ルートに捕まりました!?

由香
恋愛
冷遇妃として後宮の片隅で静かに暮らすはずだった翠鈴。 皇帝に呼ばれない日々は、むしろ自由で快適——そう思っていたのに。 ある夜、突然現れた皇帝に顎を掴まれ、深く口づけられる。 「誰が、お前を愛していないと言った」 守るための“冷遇”だったと明かされ、逃げ道を塞がれ、甘く囲われ、何度も唇を奪われて——。 これは冷遇妃のはずだった少女が、気づけば皇帝の唯一へと捕獲されてしまう甘く濃密な溺愛物語。

処理中です...