孤独な姫君に溺れるほどの愛を

ゆーかり

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「まあ……その顔は一体……」

自室で刺繍をしていた私の元に、珍しくエドとロランが連れ立ってやってきました。でも、双方ともに顔は赤黒く腫れあがり、服もあちこち破けてボロボロです。

これは、まさか──

「あの、タイマンとやらをしたのですか?」

「ああ、そうだ。お前の助言通り思い切りやり合ったぞ」

口の中が切れているのか、喋り辛そうにエドは顔を顰めました。
エドもロランもそれはそれは酷い有様で、別の意味で令嬢達に騒がれてしまいそうです。

「レナ、すぐにお医者様を呼んできて頂戴」

「畏まりました」

一先ず二人を部屋に招き入れてソファに座らせました。ロランは最後まで辞退しようとしましたが、命令だと言って医師の診断を受けさせました。

「これはまた……派手にやり合いましたね」

王宮の主治医であるバーノン医師は、二人を見るやため息混じりに苦笑しました。

「ああ、手加減など一切許さない本気のタイマンだからな。っていてててて!」

「2~3日は朝晩しっかり消毒してこの薬塗ってくださいね。ああ、サボって化膿しても知りませんからね」

二人にしっかり釘を刺してバーノン医師は去ってゆきました。骨や筋に異常はなく、1週間ほどで腫れや痛みも引くだろうとのことで安心しました。

「リラ様、私は外で待機しております」

「ロラン、今日はもういいから部屋で休んで」

「しかし……」

「リラの言う通りにしろ。今のお前の主人はリラだろ」

色男ぶりも台無しなロランは、ぐっと言葉を飲み込むと諦めたようにため息をつきました。

「分かりました。それではお言葉に甘えさせて頂きます。ですが何かあればすぐにでもお呼びつけ下さい」

「分かったわ。早く怪我を治すように、ね」

「ありがとうございます。それでは失礼させて頂きます」

体が痛むのか少しぎこちなく礼をすると、ロランも部屋を後にしました。その途端、エドは私の膝を枕にゴロリと寝転びました。

「全く……とんだ男前ね」

「ああ、あの男、本当に手加減なしだったぞ」

「そう、どうだった?」

エドは腫れた瞼の奥からじっと私の顔を見詰めました。

「手心を加えたら死んでも許さないつもりだった。アイツ、それが分かってたんだろな。最初から最後まで本気できやがった」

不思議なことに、こんなにボロボロになりながらもエドの口調はどこか楽しげですらありました。

「良い勝負だったのね」

「まあ、な。ある意味スッキリはしたかな。たまにはリラのバカな助言も役に立つんだな……って痛って!」

頬に貼り付けられたガーゼをツンツンと指で突くと、エドは思い切り顔を歪めました。

「得るものがあったのなら良かったわ」

何か吹っ切れたようなエドの表情に、私も嬉しくなるのでした。

「薬、面倒臭いな。朝晩リラが塗ってくれよ」

「もう、それなら思いっきり痛くしてあげるから」

「怪我人なんだ、優しくしてくれ」

不服そうに口を尖らせるエドに思わず笑ってしまいました。
見た目は大分大人になりましたが、こうして昔と変わらない表情が見られると、やっぱり私が良く知るエドなのだと安堵するのでした。
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