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第十四日

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pm 5:23


 今日は少し早く仕事が終わった。貴方がいない非日常が、日が経つごとに日常に変わっていってしまっていることに、恐怖さえ感じている。
 いつの間にか、貴方が帰ってこなくなってから2週間が経っていた。
 貴方はもう戻ってこないのかも。

 そんなことを考えながら豚肉を切っていた。すると、家のインターホンが鳴り、微かに「ごめんくださ~い」と声が聞こえる。回覧板だわ。

 
 玄関口には恵さんが立っていた。回覧板はいつも、恵さんから私、私から夢香さんの順で回っていく。
 「地区のお祭りも、もうすぐね~!子供たちにたくさんお菓子を用意してやらないとねえ!あっ、でも保護者会の会長やられてる貴文さんって人が結構難儀な方でねえ、『お菓子ばかり食べると子供たちの体に悪い』とか言ってね!でもよ~、子供はお菓子あげりゃ喜んでくれるんだからぁ!って思うのよ私!真由子さんもそう思うでしょ~、ねえ~!あっそうそう、聞いてよ━━━━」


 ━━━━始まりました、恵さんのマシンガントーク。私が何も喋らなくても、この人と話出せば長いことかかる。悪い人ではないのだけれど、、噂話をどこかで拾っては、みんなにばら撒いている。
 
 そうだわ。景吾さんが居なくなったのには夢香さんが関係してるんじゃないかって私ずっと疑っているのよ。
 恵さんに聞けばなにか有力な情報が得られるかもしれない。

 「、、恵さん、最近夢香さんの話とか、聞いてないかしら」
 「夢香さんねぇ、いい噂は聞かないわね」
 恵さんの顔があからさまに険しくなった。

 「あの子、夜になると1人で車でどこかに出かけて、朝方になって帰ってくるのよ。水商売やってるんじゃないか、って噂よ。ご主人おられるのにねぇ、もっといいお仕事なさればいいのにねぇ」

 ああ、だからあんなに若作りしてたのか。夜の仕事をしていると聞いて納得した。夢香さんの旦那さんは、このことを了承しているのだろうか。そもそも知っているのだろうか。

 はぁ。
 まだ貴方の行方は分からない。
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