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第1章 ゴブリンとして生きていく!

第6話 女神さま、神さま、娘が出来きたんですが?

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パチパチパチ、......



いおりの火が、ゲルの中を明るく照らしている。夜のとばりが落ちて、闇が世界を支配する。



そんな物静かな雰囲気の中で、私に皆の視線が集中していた。



私の膝の上で、私に抱き付き眠っている幼いゴブリンの少女が原因だった。



『あのう、タツカド殿。この状況は一体如何言う事か、説明して頂けませんかな?』



いつにも増して、目付きが鋭いバミカ村長が私に問い掛ける。



ふむ、最もな事だ。幼い少女が、見知らぬ筈のジジイに抱き付くだけで、案件通報されても可笑おかしくはない。



『実は......』



私は花畑での一件を、詳細に説明した。決して案件事案を怖れている訳ではなく、事実を説明しただけだ。



『やっぱり、私もタツカドさまの目が、亡き父とそっくりだなと、思っていたんです!』



ふむ、ミラさんもそう思うほどに、私の目はナルさんの父親と、瓜二つと言う事なのでしょう。



それにしても、弱りましたね。



正直、子供、それも女の子の相手は、苦手なんですよ。



でも、私の腰に手を廻し、安心して眠るナルさんの寝顔を見ていると、子供を持った事がないにも関わらず、父性ふせいと言うか、暖かい感情が芽生えてくるのは、一体何故なのでしょうか?





ナルさんとミラさんの父親は、このバミラ村一の戦士だったそうです。



このアルグリア世界には、アルグリア語を喋る人類と、アルグリア語を喋れないモンスターの二種類に別れて、争っているようです。



昔は伝達師でんたつしも、今よりも沢山いたようですが、人類との交渉時に一方的に攻撃され、その数が激減したようです。



人類は、ゴブリンを含め、モンスターを目の敵にして、徒党ととうを組んで襲撃して来る。話し合いもない、あるのは、人類からの一方的な虐殺だけだったようです。



そんな人類から、このバミラ村を護る為、勇敢に戦い散っていったのが二人の父親だったそうです。



そんな親離れが出来ていなかったナルさんは、父親を亡くし自分のからに閉じこもったそうです。



そして、先月母親も病気で亡くしたナルさんは、姉のミラさんと、祖母のバミカ村長以外とは、一切話をしなくなったと。



なるほど、それが切っ掛けなのか、村の一画の花畑で、ナルさんは【花】を友達として過ごされて居たのですか。



称号【花の寵愛ちょうあい】とは、ナルさんへの親友の花達からの贈り物なのでしょうね。



村の中に、花畑を作る余裕は見受けられないと言う事は、花魔法でナルさんが、花畑を作ったと言う事なのでしょう。


【花魔法LV2】とスキルレベルも上がっていますからね。



【念話LV3】も、親友の花達と、毎日話続けたからのレベル3なのでしょう。



花畑で、『父ちゃんと同じ目をしている! ナルの父ちゃんだもん!』と言ったあの言葉、あの眼差まなざし。ナルさんは、私が父親ではないと理解している。それでも、私の中に、亡き父親の影を見て甘えたくなったのでしょうか。



まあ、村に滞在させて頂いている間は、父親の真似事まねごとをするのも良いかも知れないですね。



それに、このアルグリア世界では、ゴブリンは余り歓迎されない種族のようですし、人類ですか、アルグリア語が話せる種族の総称そうしょうなのでしょう。



そして、モンスター。アルグリア語が話せない種族。可笑おかしいですね、【念話】が使えれば意思疎通いしそつうは出来るのだから、人類も話し合えば争いは起こらないと思うのですが。



何か理由が在るのでしょうね。でなければ、人類とは何と傲慢ごうまんな生き物なのでしょうか。



私は脳内の周辺地図を拡大していき、アルグリア大陸の全貌ぜんぼうを脳裏に映し出す。



確かに地図には、大陸の支配領域が解り易く映し出されている。



国名も、その国の個体の詳細情報も、私には解るようだ。



ゲームシステム、凄いチートですね、女神さま、神さま?



ありがとうございます! 女神さま、神さま!



シーン、......



ゴホン、まあ感謝の気持ちは、訴え続けなければね。



しばらくは、バミラ村に滞在して、アルグリア大陸の常識と、知識を吸収しなければならない。



それと並行して、個体レベルを上げて、これからの旅の安全性を上げなければ。







『父ちゃん、この子はリリーって言う私の一番の友達なんだよ!』



私は今、昨日のナルさんのお花畑で、ナルさんの友達を紹介して貰っていた。



『初めまして、リリーさん、私はナルさんの見習い父ちゃんのカネヨシと言います。よろしくお願いします!』



勿論、花は喋りませんから、ナルさんが通訳してくれます。



『父ちゃん、リリーもよろしくだって!』



ニコニコとはち切れんばかりの笑顔に、私は胸に熱い物が湧き起こって来ます。



大丈夫ですよね、女神さま、神さま。



私はロリコンではないですよね、これは父性ふせいですよね?



何とか言って下さい、女神さま、神さま!



シーン、......



私の訴えに、女神さまと神さまは、相変わらず沈黙ちんもくで答える。



ええ、解っていますとも、私に合わす顔がないと言う事は。



異世界物の小説から、かなり逸脱いつだつし、独創的な物語になっている現在の私。



そんな酷い現状では、私に合わす顔がないと言うのは解っています。



でも、私も98歳。良いお歳頃ですよ? 怒らないから、出てきても良いんですよ?



シーン、......



ふむ、このファンタジー世界の女神さまと神さまは、照れ屋さんなのかも知れないですね。


 


『父ちゃん、父ちゃん、ナルの話聞いてる! ねえ、聞いてる?』



おっと、いつもの悪いくせが出てしまったようですね。



ナルさんが、つぶらなひとみに、泪を目一杯溜めて私を見つめていました。



『申し訳ないですね、ナルさん。ちょっとぼーっとしてしまいました』



『もう、父ちゃん、確りしてよ!』



おお、幼い少女から、叱られてしまいました。



『ええ、ところ何処どこまで話ましたか?』



孫娘が居れば、こんな感じなのかと、想像しながらも、つかやしを堪能たんのうしてしまいました。







森の中の大池のほとりで、ゴブリンとカエルのモンスターが戦っていた。



カエルのモンスターと対峙たいじしているのは、古代中国の武将の装いに身を包んだゴブリンと、【木の杖】を持ったゴブリンと、見窄みすぼらしい腰布一枚のゴブリンだった。



『関羽、作戦通りでお願いします!』



『はっ、マスター!』



関羽がカエルのモンスターである【ブルンフロッグ】の注意を引きつけ、一気に倒さずに体力をけずっていく。



『今ですよ、ナルさん!』



『うん、父ちゃん!』



私の合図を受けて、ナルさんが花魔法を放つ!



大池の周りに生えている蔦草つたぐさが、大きく成長してブルンフロッグにからみ付き、そのまま締め上げていく。



私の脳裏の情報画面では、ブルンフロッグの生命力が、今丁度【0】になり生命活動が終わった事を、システムメッセージが告げるのだった。



『関羽、ご苦労さま! ナルさん、やりましたね!』



関羽は、目礼もくれいで答え、ナルさんは、にっこりと笑顔で答える。



今、私達はナルさんの個体レベル上げと、花魔法のレベル上げを兼ねて、ブルンフロッグの生息地せいそくちで狩りをしているところだった。



『父ちゃん、この魔法の杖って凄いね!』



にっこり笑うナルさんが持つ木の杖。それは【魔法使いの杖】と言う【銅ランクの武器】だった。



そう、先日デルモンキー族と対峙たいじする前に、【装備ガチャ】で引いた銅装備カードは、魔法使いの杖と言う武器だった。



私も、関羽も、魔法を使えない。所謂いわゆる死蔵しぞう(仕舞い込んでおく)する武器だった。



ナルさんには、私達がバミラ村から旅立った後、デルモンキー族との交渉をして貰う伝達師でんたつしに為って貰いたい。



それのお手伝いも兼ねて、ナルさんの個体レベルと魔法スキルレベルの向上の為に狩りをしているのだった。



――――――

魔法使いの杖▼

魔法使いの杖:魔法効果を現在値×1.5倍にする杖。

――――――



銅ランクの武器の性能が、結構エグいくらい凄いと思うのは、私の勘違いではないでしょう。



さあ、素材とポイントを集めて、私の武器もそろえなければ。



戦時中は、部隊の装備レベルで、生き残れるかどうかが決まる。



常にアップグレードを意識して、万全の体制にするのは、指揮官としては重要なポイントだった。











弾切れした銃で、敵と戦ったあの戦争。



無能な指揮官の采配さいはいで散っていった戦友達せんゆうたち



自分達が死ぬ事を理解しながら、私に特別任務だといつわった戦友達せんゆうたち



そのいつわりのお陰で、今も私は生き残って居る。



戦友達せんゆうたちの最後の表情が、言葉が忘れられない!




“お前は生きろ! 生き残れ! 長生きしろよ!”











私の名前は、龍門兼慶たつかどかねよし



戦友達せんゆうたちの想いに、異世界でも必ず生き残るとちかったゴブリンだ!
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