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二章
再会3
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吉野さんは横に置いたバッグからいそいそとチケットを取り出そうとしている。わたしは思わず焦った声を出してしまった。
「ま、待って待って。六時からですよね? ……ちょっと、遅い、かも……」
「え?」
彼女はびっくりした声を出す。
「ショーは一時間半くらいよ。七時半っていったら、中学生の子でも部活してたらそれくらいの時間になるじゃない。塾行ってたら帰りはもっと遅いわよ」
「そ、れはそうかもなんですけど……っ。夕ご飯の支度とか」
わたしは裕一の顔を思い浮かべた。 たまに、飲み会のお誘いや同窓会があっても数週間前から知らせていたし、夕食の支度も全て済ませてから出てきていた。
「夕飯があればそれでいいよ 」と言いつつ、 一度だけ、ランチ会がかなり深刻な相談会になり、帰りが遅くなったことがある。バタバタと買い物して帰って、ごめんねと謝りながら慌ててお惣菜を並べたのだが、裕一は
「ふらふら外で遊んできたのに、おまけに惣菜で済ますなんて」
と嫌味たっぷりだった。それが忘れられなくて、わたしはいつも早くはやく帰らなきゃ、と思ってしまうのだ。
返事に困っているわたしに、吉野さんは気遣わしげな表情を浮かべた。
「もしかして蔭山さんの旦那さんて、束縛強いタイプ?ずっと一緒にいてほしいとか、そんな感じ?」
「えっ、あっ……!いや、そんなんじゃないと思いますけど」
そんなんじゃない。もし、そうだったら、夕食終わったらさっさと自分の部屋に篭もったりしないだろう。
考えるとなんだかまた、昨日の嫌な気分が蘇ってくる。今日はかぎ針編みのお花をたくさん編もうと思っていたけれど、それはやめた。わたしは吉野さんをまっすぐ見て、
「やっぱり、行きます」
と答えた。
バッグから財布を取り出す。
「ほんと?ありがとう! お金はいいの。空席ができるのが申し訳ないから声かけさせてもらったのよ。気にしないで、ね! 楽しんで」
「そんな……」
恐縮してしまうわたしに、吉野さんはいいからいいから、と笑って首を横に振った。
今はお金も受け取ってもらえなさそう。今度こそ、必ず吉野さんにお礼をしよう。わたしは
「絶対、楽しんできます! ありがとうございます」
と頭を下げた。
行くと決めてしまえば気分はすっきりした。デザートの、まるいバニラアイスの乗っかった濃厚なプリンを心ゆくまで味わい、おしゃべりの続きを楽しんで、お店を出るともう三時を過ぎていた。
「ま、待って待って。六時からですよね? ……ちょっと、遅い、かも……」
「え?」
彼女はびっくりした声を出す。
「ショーは一時間半くらいよ。七時半っていったら、中学生の子でも部活してたらそれくらいの時間になるじゃない。塾行ってたら帰りはもっと遅いわよ」
「そ、れはそうかもなんですけど……っ。夕ご飯の支度とか」
わたしは裕一の顔を思い浮かべた。 たまに、飲み会のお誘いや同窓会があっても数週間前から知らせていたし、夕食の支度も全て済ませてから出てきていた。
「夕飯があればそれでいいよ 」と言いつつ、 一度だけ、ランチ会がかなり深刻な相談会になり、帰りが遅くなったことがある。バタバタと買い物して帰って、ごめんねと謝りながら慌ててお惣菜を並べたのだが、裕一は
「ふらふら外で遊んできたのに、おまけに惣菜で済ますなんて」
と嫌味たっぷりだった。それが忘れられなくて、わたしはいつも早くはやく帰らなきゃ、と思ってしまうのだ。
返事に困っているわたしに、吉野さんは気遣わしげな表情を浮かべた。
「もしかして蔭山さんの旦那さんて、束縛強いタイプ?ずっと一緒にいてほしいとか、そんな感じ?」
「えっ、あっ……!いや、そんなんじゃないと思いますけど」
そんなんじゃない。もし、そうだったら、夕食終わったらさっさと自分の部屋に篭もったりしないだろう。
考えるとなんだかまた、昨日の嫌な気分が蘇ってくる。今日はかぎ針編みのお花をたくさん編もうと思っていたけれど、それはやめた。わたしは吉野さんをまっすぐ見て、
「やっぱり、行きます」
と答えた。
バッグから財布を取り出す。
「ほんと?ありがとう! お金はいいの。空席ができるのが申し訳ないから声かけさせてもらったのよ。気にしないで、ね! 楽しんで」
「そんな……」
恐縮してしまうわたしに、吉野さんはいいからいいから、と笑って首を横に振った。
今はお金も受け取ってもらえなさそう。今度こそ、必ず吉野さんにお礼をしよう。わたしは
「絶対、楽しんできます! ありがとうございます」
と頭を下げた。
行くと決めてしまえば気分はすっきりした。デザートの、まるいバニラアイスの乗っかった濃厚なプリンを心ゆくまで味わい、おしゃべりの続きを楽しんで、お店を出るともう三時を過ぎていた。
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