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二章
再会7
しおりを挟む「べ、べつって?」
思わず用心深くなってしまう。そういえば彼は、時々どきりとすることを言う人だった。
あの時のメールだって、数年ぶりに突然送られてきたのだ。
『お久しぶりです! 上月です。覚えていますか』
と短い文だった。二十三歳の頃だったと思う。
わたしが返信すると、
『今から会えませんか』
と送ってきたのだ。高校を卒業して七年くらい、二人とも社会人になっている。会えませんか、の文字にわたしは実は悩みまくった。
ど、どういう意味? 先輩後輩として? ただの知り合いとして? 彼はわたしが好きだったことを知ってるはず。 いやいや、大した意味なんかないはず でも……。
盛大に悩み、当時結婚の話が出ていたわたしは結局、
『ごめんね。結婚式の打ち合わせとかで、ちょっと忙しいかも』
といういろんな意味を込めた返信をしたのだ。
『わかりました。突然すみませんでした』
と返ってきたきり、ぷつりと連絡は途絶えた。結局、彼の真意はわからないまま、今にいたる。
あの時のこと、尋ねてもいいものだろうか。
「近くにもう一つ、カフェ持ってるんです。そこはのんびりしたところなんで、『Blue』の開店まで時間潰せますよ」
「え? もう一つ? って、上月くんのお店ってこと?」
彼は控えめに微笑んで頷いた。
「いろんな店をやりたいっていうの、目標だったんですよ」
まっすぐな瞳でわたしを見る。
「まだまだ途中ですけどね。結構毎日忙しいです」
「そっか……。ほんと、すごいね……」
夕陽のせいだろうか。彼がなんだか眩しくみえる。
でも、あのころとは違った意味だ。
わたしは自分の後ろに落ちている影を強く、意識した。
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