【13万字完結】結婚相手は魔王の尖兵!

ジャワカレー澤田

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「橋」の管理人

34 次は私が狙われる……?

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 ヒルダは絶句した。

 自分より5歳下の闇の魔操師ミアから、リディアの消滅を聞かされたからだ。

「……嘘、でしょ?」

 何秒もかけてようやく絞り出した言葉が、それだ。

「嘘じゃないわ、ヒルダ。リディアが例のキシロヌ王国の勇者のパーティーにやられたの」

 ミアの返答に、ヒルダは圧し潰されそうになる。

 あのリディアが——恐るべき威力の雷を自由自在に操るリディアが、消滅した……?

「消滅」とは、当然ながら「死」を指す。だが通常の死とは違い、消滅は髪の毛1本すら残さない。今まで異世界で調査任務に就いていたヒルダは、今からリディアの亡骸を見ることすらできないのだ。

 それじゃあ、あの時のリディアの声は……。

「ヒルダも覚悟したほうがいいわよ」

 ふと、ミアはそう話した。

「キシロヌ王国は逆襲に動き出したわ。こちらが占領した土地も少しずつ取り返されてるし、異世界の勇者もいきなり強くなってるし。……もしかしたら、次は私かヒルダが標的かも」

「私たちが……?」

「私もヒルダもリディアも、異世界への“橋”を研究してる魔術師だから。光の地の王たちは、私たちの研究を何が何でも阻止する気よ。特にヒルダ、あなたは実際に異世界へ行ける“橋”を持ってるから、狙われる可能性は高いと思って間違いないわ。光の地の連中は、“橋”を自分たちだけのものにする気らしいから——」

「ちょっと待って」

 ヒルダはミアの言葉を遮り、

「それはつまり、光の地の魔術師も“橋”の研究をしているということ?」

 と、質問した。

「研究……どころじゃないわ。この機会にヒルダの耳にも入れておくけれど、キシロヌ王国所属のパーティーの中に“橋”を作れる者がいるの」

「えっ!?」

「それも、何人かが一緒に渡れるほどの大きさの“橋”をね。……ヒルダ、あなたには悪いけれど“橋”を作る技術は向こうのほうが上よ」

 ヒルダはもはや、自分の耳を信用できなくなった。

 異世界の人間がこの世界へ転生もしくは転移することは、一種の自然現象として稀にある。が、2つの世界を自由に行き来できるのは、一族に伝わる「橋作り」の魔術を受け継いだヒルダしかいない。そして彼女の魔術は、あくまでも自分ひとりが渡れる程度の「橋」を作るものである。

 複数人が渡れる「橋」は、研究こそされているがまだ具現化していないはずだ。それを作り出せる者が、キシロヌ王国所属のパーティーに混ざっている……?

 そんなバカな!

「その大きな“橋”を作り出せる魔操師は、一体誰なの?」

「ヒルダも戦ったことあるはずよ。ヒューっていう、あの氷属性と炎属性の魔操師」

「あいつが……!」

 ヒルダは眉間に皺を寄せ、

「あの小生意気な魔操師か……!」

 怒りに震える声でそう言い放った。

 が、この怒りはヒルダ自身の恐怖も多分に混じっている。

 次は私かもしれない。もしかしたら私も、リディアのように消滅してしまうかもしれない。そうなったら、二度とコウとは……。

 ヒルダは左手薬指の指輪を、右手で軽く撫でた。
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