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真夜と孝介
67 似た者同士
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真夜はそのまま品山部屋に宿泊することになった。これは光の強い勧めに影響された判断だ。
ここは1日2日くらい家出して、松っつぁんを動揺させてやったほうがいいかもしれないという光の考えである。そうでもしないと、あの男は反省しない……というのは真夜も同意見だ。
が、やはり眠れない。光が用意してくれた布団に潜って目を閉じてはいるものの、もはや睡魔と遊ぶどころではない精神状態だ。
コウは私のことを気遣っていたからこそ、梅咲事件とやらを打ち明けなかったのかもしれない。
けれど、それならそれでコウは私を馬鹿にしている。過去のことを私が知ったからって、別れ話でも切り出すと思ったのか。そこまで私は浅はかな女じゃない!
この怒りを、どうにかコウに伝えてやりたい。そのために当分は帰宅するわけにはいかない。
けれど、このまま品山部屋に厄介になるわけにもいかない。
……そう、この機会だ。明日は前から行きたかったところへ、ひとりで行ってみよう。
*****
「タケちゃん、真夜さんがいなくなっちゃった!」
午前4時52分。光はそう言いながら、品山親方の巨体を揺らした。
「ほら、これ!」
光は目覚めて間もない品山親方に、1枚の紙片を差し出した。
そこには、
<ご迷惑をおかけしました。私はもう大丈夫です。しばらくひとりだけで考えたいと思います。お夕飯、美味しゅうございました。松島真夜>
と、書かれていた。
「タケちゃん、どうしよう……。真夜さんがどこに行っちゃったのか、分からない」
「光さんが起きた時は、もういなかったの?」
「うん。何となく気になって様子を見てみたら、もう布団が畳んであって……。今から彼女に電話かけたほうがいいかな? この文章からして、多分家に帰ったわけじゃないと思うし」
光にそう聞かれた品山親方は、
「いや、大丈夫だよ」
と、返した。
「あの人なら、まぁ今日のうちにはマツが体育座りで待ってる家に帰るんじゃないか?」
「どうして?」
「似た者同士だからさ。互いに不器用な者同士、何だかんだで長いこと離れられないんだ」
品山親方は微笑みながら、
「光さんもそう思わないか? マツの奥さんのこの立ち去り方……あの時のマツとまったく同じじゃないか。人に頼ることができず、結局は自分で何もかも抱えたままどこかへ行ってしまう。本当、あの旦那がいてこの嫁って感じだよ」
「……言われてみれば、確かにそうかな」
「そうさ」
と、品山親方は真夜の置き手紙を眺め続けた。
「あいつは幸せ者だよ、本当に——」
ここは1日2日くらい家出して、松っつぁんを動揺させてやったほうがいいかもしれないという光の考えである。そうでもしないと、あの男は反省しない……というのは真夜も同意見だ。
が、やはり眠れない。光が用意してくれた布団に潜って目を閉じてはいるものの、もはや睡魔と遊ぶどころではない精神状態だ。
コウは私のことを気遣っていたからこそ、梅咲事件とやらを打ち明けなかったのかもしれない。
けれど、それならそれでコウは私を馬鹿にしている。過去のことを私が知ったからって、別れ話でも切り出すと思ったのか。そこまで私は浅はかな女じゃない!
この怒りを、どうにかコウに伝えてやりたい。そのために当分は帰宅するわけにはいかない。
けれど、このまま品山部屋に厄介になるわけにもいかない。
……そう、この機会だ。明日は前から行きたかったところへ、ひとりで行ってみよう。
*****
「タケちゃん、真夜さんがいなくなっちゃった!」
午前4時52分。光はそう言いながら、品山親方の巨体を揺らした。
「ほら、これ!」
光は目覚めて間もない品山親方に、1枚の紙片を差し出した。
そこには、
<ご迷惑をおかけしました。私はもう大丈夫です。しばらくひとりだけで考えたいと思います。お夕飯、美味しゅうございました。松島真夜>
と、書かれていた。
「タケちゃん、どうしよう……。真夜さんがどこに行っちゃったのか、分からない」
「光さんが起きた時は、もういなかったの?」
「うん。何となく気になって様子を見てみたら、もう布団が畳んであって……。今から彼女に電話かけたほうがいいかな? この文章からして、多分家に帰ったわけじゃないと思うし」
光にそう聞かれた品山親方は、
「いや、大丈夫だよ」
と、返した。
「あの人なら、まぁ今日のうちにはマツが体育座りで待ってる家に帰るんじゃないか?」
「どうして?」
「似た者同士だからさ。互いに不器用な者同士、何だかんだで長いこと離れられないんだ」
品山親方は微笑みながら、
「光さんもそう思わないか? マツの奥さんのこの立ち去り方……あの時のマツとまったく同じじゃないか。人に頼ることができず、結局は自分で何もかも抱えたままどこかへ行ってしまう。本当、あの旦那がいてこの嫁って感じだよ」
「……言われてみれば、確かにそうかな」
「そうさ」
と、品山親方は真夜の置き手紙を眺め続けた。
「あいつは幸せ者だよ、本当に——」
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