摩天楼の君主(His Majesty of Manhattan)

H・カザーン

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第3章 ニューヨーク

ニューヨーク、土曜の夜の過ごし方 2

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 バルにいたみんなが、食事の手を止め大画面に注目する。NBCの、夜のニュースが始まったところだった。

 スクリーンに、ドバイ首長の前に進み出て祝辞を述べる若いアメリカ大統領の姿が映し出され、そのすぐ近くには、ジェレミーとキャサリンが立っている。報道陣のフラッシュがひっきりなしにたかれる中、次の来賓が挨拶する順番になり、アメリカ大統領はドバイ首長の前から移動した。だがそのまま席に戻るのではなく、何とルイス社長の前で立ち止まって、親しげに話し込んでいるのだ。
 就任時の年齢が歴代二番目に若いのに政治経験も豊かな大統領で、世界的に有名な女優から「Happy Birthday to You」を歌ってもらったほど人気のある人だ。政界と財界のトップ夫妻が、四人で談笑している姿は絵に描いたようなオーラを発していた。

「君の上司って、すごいVIPなんだ」
 ジャン=ピエールがそう言って肩をすくめた。
 リサだって相当に驚いている。まさか普段気兼ねなく接しているジェレミーが、米国のリーダーと親しい間柄だとは……。彼がいつにも増して遠い人に見えてくる。まあよく考えれば、向こうはこの国でもトップの大きな会社を経営する実力者だ。
 かたやただの学生の自分とは、まるで比べ物にならない。
 ――でもどうしてあの人は、こんな風にテレビカメラの向こうからでさえ、わたしを支配しようとするの?

 もちろんジェレミーは、彼女を屈服させようとしているのではない……はずだ。いや、もしかしたら、そうしているのかも……しれないが。
 でもあの人といる間は、自分らしく振舞う自由を奪われることは決してなかった。彼といる限り、リサは知識を隠す必要はないから、わざとわからない振りをして、相手に花を持たせてあげなくてもいい。
 今まで男の人はいつだって、彼女の意見が自分より優れているかもしれないと感じたとたんに機嫌を悪くした。だから、ボーイフレンドなんて一人もいなかった。
 なのにジェレミーは、リサの知的な挑戦を、楽しんで受け止めてくれる。リサを自然のままにさせてくれる、この世でただ一人の貴重な男性だった。

 この間の金曜日、空港を夕方出発する飛行機に妻と乗らなくてはならず、いつものように二人だけのディナーの時間が取れなかった彼と一緒のエレベーターに乗って階下に降りた時、彼女はこれ以上ないほど緊張していた。もちろん彼は何もしなかったけれど……。
 ――あ、ううん。一瞬だけ肩が触れた。
 でもジェレミーはそんなことなんて無かったかのように、「それじゃあ」と手を振りジョン・F・ケネディ空港へ向かった。
 つまり、それだけだった。

 ――そうやってわたしを見ている間だけは、もしかしたら少しは意識をこっちに向けてくれているのかもしれない。でも一緒にいない時は……。
 おそらくジェレミーは、リサのことを思い出しもしない。
 インターンを始めたばかりの頃は、離れている時もいつどこで何をしていても、リサの心は彼のことでいっぱいだった。そのうちに、互いの力が違い過ぎるのを思い知らされて……。

 ルイス社長はいつもあらゆるものを従え、権力の頂点を極めている。そのほとんどは笑顔で従属させ、言いなりになる側は、服従していることにさえ気づいていない。
 そしてリサは、従う者たちの中のほんの一人に過ぎないのだ。
 オフィスで、問題を鮮やかに片付けていく彼は素晴らしく魅力的だ。そんな特別な人から仕事を教わるのは、歓喜すら感じる。でも業務上の権力が、それを超えてリサのプライベートにまで及ぶのは……。
 ――まさかわたしは、だけど、ううんやっぱりあの人の意のままにされることを望んでる? 危険な深みに、自らはまろうとしてる……の?
 いま目の前に座っている人に出会った日、「僕がそこから抜け出させてあげようか」と言われた時までは、自分がどれほど引き込まれているのか気づいていなかった。

「アラビア滞在中は、ルイス夫妻にも警備がつくらしいね。まあとにかく、ちゃんと無事でいるみたいだし……、一日五回唱えられるアザーンの声が、結構お気に入りなんだって」

 ふと、ジャン=ピエールの言葉でリサは我に帰る。
 ――わたしには、何の連絡も来ないけど……。
 でもキャサリンと一緒にいる時に、密かに他の誰かにメッセージを送るなんて行動は、どう見てもジェレミーには似合わない。
「別に、僕のところへは送られてきたとか自慢してるわけじゃないよ。ルイス社長のツイッターで読んだだけ」
 ジャン=ピエールは「君は読まなかったの?」と問いたげに彼女の表情をうかがった。
「あまり見ないことにしてるの」
「……あ、僕は仕事上必要だから、いつもチェックしないといけなくて……、まあ公共の場でプライベートなことをつぶやくなんて、社会に翻弄される元凶だから、そんなことには惑わされない方が賢明だね」
「そう……、あなたの今日の意地悪なのかと思ったわ」
「何それ? なんか『本日のシェフのおすすめ』みたいだな」
 リサの顔に笑みが浮かんだのを見計らって、彼は時間を確かめた。
「ねえ、今からサタデー・ナイト・ライブを見に行かない?」
 ジャン=ピエールが誘ったのは、NBCテレビの人気番組のライブショーだ。毎週末の夜、十一時半から生で放映されている。
「え、今日のチケットが手に入ったの!? でももう十時過ぎてるじゃない。セキュリティチェックがあって、放映二時間前にはスタジオに入ってないとだめなのに」
 以前は、土曜日の早朝にNBCの外に並べば手に入れられた鑑賞券だが、最近はEメールで申し込むことになっている。運良く選ばれたとしても、テレビ局の方で日にちを勝手に選択してチケットを送ってくるから、こっちの希望する日には行けなくなってしまった。ニューヨーク近郊の住民以外には、不便なシステムに変更されたのだ。
 もちろん観客が自分で日にちを決められないのだから、チケットが送られてきても行けない人たちも、当然ながら出てくる。そういう空席のために、土曜の朝にスタジオでスタンバイチケットが配られるわけだ。だがこの確実に入れるかどうかわからない席のために、人々はかなりまえから列を作る。ゲストが人気歌手だったりすると、三日も前から並んでいる人もいるほどだ。一年のうち九か月はウインドブレーカーが手放せないという、厳しい気候のニューヨークなのに――である。
 海外でもこの番組を参考に、コメディーショーが制作されるくらい大人気で、アメリカのコメディアンの登竜門とも言われている。しばしば映画スターもゲストに招かれてレギュラーと共にコントを披露し、ユーモアのセンスがあることをアピールしていた。
 そんなライブチケットは、予想に違わず入手困難だ。ジェレミーだったら何枚でも自由に調達できるだろうが、まさかジャン=ピエールがそのライバルを通じて手に入れたとも思えなかった。

「君のボスだけじゃなくて、僕のボスも結構広い範囲に顔が利くんだよね」
 ――あ、ムッシュー・ラングロワ……。
 今回の共同製作ドラマのことを考えれば、ユベール・ラングロワ氏のところに局からチケットが送られてきたとしても不思議ではない。
「特別招待券だから、十一時ぐらいにスタジオに着いても大丈夫」

 自信たっぷりなジャン=ピエールと共に、ミッドタウンのライブ会場へ向かうタクシーの中で、リサは、彼とラングロワ氏は一体どんな繋がりがあるのだろうと思いを馳せていた。
 ジャン=ピエールがゲイだとしたら、リサを誘うはずがない。今日の撮影に関して言えば、一応見かけは「仕事」だけれど、彼が他のスタッフを連れて来なかったのは、プライベートな意味も充分に含まれているような気がする。何しろこの人は最初に会った日から、意味ありげなことを彼女に告げているのだから。
「ラングロワ氏と仲がいいのね」
「上司と親しいって、誰が?」
 リサは「またその話?」とため息をついた。
「そう言われると思ったわ。初めて会った時も言ったけど、彼とつき合ってるわけじゃないから」
 ……だがジェレミーが未来の女性リーダーを養成するためにインターンを育てているのだったら、彼に特別な感情を持つべきではなかった。もちろんどんな状況においても、道徳的に考えたら、恋愛感情を持ってはいけないのは間違いない。けれどリサの思いはそんなにも明白なのだ。この人にさえ、心を読まれてしまうほどに……。
 ――この人とラングロワ氏の場合は……?
 リサは隣に座っている、ヨーロッパの雰囲気に溢れた横顔に視線を移した。
「そんな風に見つめられても、僕は否定しかしないに決まってる。信じたくなければ別に信じなくていいよ」
 ――ラングロワ氏との関係が気になるなんて、わたしは彼に惹かれている……のかな……?
 最初に会った頃は、ジャン=ピエールの厚かましさに驚いていた。でも短期間のうちに、次にどんな失礼な言葉を言われるのかと楽しみに期待し始めているような自分がいる。

 中に入ると、ロックバンドの最終リハーサルで、スタジオは熱気に包まれていた。その中をスタッフに案内されて、特別招待席である前列に座った。
 バンドの人気もさることながら、こんなにも会場が興奮しているのは、今日のメインゲストが人気女優シェリル・シャノンだからだ。
 自分の意見をはっきり口にする女優は、アメリカでは多勢見かけるように思われがちだが、実際に誰かに指示されているのではなく本当に自分の意見を語っているという点で、シェリルはなかなか珍しい存在だった。ディレクターやプロデューサーに作られたキャラクターを演じている女優は少なくない。しかしシェリルは、時折シナリオにない質問を浴びせられても、その若さに似合わず気の利いた台詞を返している。

 コントは彼女が乗客役で、空港のセキュリティチェックを受けるというスキットだった。
 コメディアンたちが、空港職員で、シェリルは金属探知機を通ろうとするが、その度に警報音が鳴るのでなかなか通してもらえない。
 どうやら彼女が服を脱がされる方向に話が進みそうなのは容易に推察できた。
 若くて美人で人気急上昇中のシェリルは、すべての動作が輝いていた。片脚を椅子に乗せて膝上ストッキングを脱ぐ姿は、ため息が出るほど艶やかだったし、「ストッキングのどこに危険物を隠せるのよ」と怒ってみせる仕草は、同性のリサから見ても可愛らしかった。レギュラーコメディアンたちとの呼吸も合い、観客から笑いを誘って彼女の新しい一面を見せるのに成功していた。

「わたし、この人好きなの」
「ここだけの話だけど、彼女に今度のドラマのコレット役をやってもらうことに決まったんだ」
「わあホント? なんだか楽しみ!」
 デザイナーのコレット・ルールー・デロワは、勝ち気すぎる性格が世間から疎まれることもあった人で、若手女優には難しい役柄だ。でもシャープな目元が、コレットの性格にぴったりのシェリルになら、興味深い主役が演じられるだろう。

 結局彼女が脱ぐように言われたのは、ジャケットとストッキングだけだった。コントのオチは、警備員と一緒にシェリルに見入っていたパイロットたちが、「アテンション、操縦クルー! 離陸できないので今すぐ搭乗してください」とページングで叱られ、急いで操縦に戻るという結末だった。
 それ以上脱がなかったのは、州によっては十時台から放映されるため、子供も見ている可能性があること、そして本当の理由はやはり、笑いの真髄は女優のセクシーさではなくギャグで決めたいという、コメディアンたちのプライドがあるからに違いない。
 ニューヨークの夜は、華やかなコメディライブの笑いと共に深まって行った。


 ジャン=ピエールはその夜タクシーで彼女を送ってきた時、アパートメントの手前の緑地で一緒に降りて、歩きながらリサをエントランスまで見送ってくれた。

 彼女の暮らすロウアー・マンハッタンは、金融街やトライベッカにも近く、たくさんの公園に囲まれた緑多き安全なエリアだった。
 ウエスト・ストリートを挟んだ西側は、ウォール・ストリートの賑やかさとは雰囲気をがらりと変えて、美しい公園の多い地域になる。同時多発テロの時でさえ、落ち着いた空気があったらしい。ビルが崩れたあの独特な匂いが、高速道路のこちら側では随分違って、人びとは比較的穏やかに過ごせたという話だ。今では金融街も含めて、すっかり感じの良いたたずまいを取り戻している。

 ジャン=ピエールは、ガラス張りの豪華なアパートメントのエントランスを見上げて軽く口笛を吹いた。
「自由の女神が、窓から眺められそう」
「ん……、そんなに大きくは見えないけど」
「あ、本当に見えちゃうんだ? ここって、もしかしてあの人の……」
「もう、あなたが想像しているようなことは全然ないの。父の所有する部屋よ。ベッドルームもいくつかあるから、家族が予告も無く訪ねてくるし、わたしを監視するために。今は弟が来てる。レイバーデーの休暇で、ボストンの大学がお休みなの」
「リサの弟って、バート?」
「ふふふっ、バート・シンプソンはリサのお兄さんでしょ」
 テレビアニメの同じファーストネームのキャラクターになぞらえてからかわれるような、こんな会話は久しぶりだった。
「……あ、でもそういえば、子供の頃よく言われたんだったわ、兄と妹じゃないけどシンプソンズみたいねって。弟はバートみたいにいたずらっ子で、わたしはリサのような勉強家だったから」
「あの……さ、弟さんってあそこまでハメを外すタイプ?」
「うちのバーソロミューは、あんな風にしょっちゅう裁判沙汰を起こして、判事と友達になるほどまでお茶目じゃないわね」
「あはは、……じゃあ君の部屋に恋人が訪ねて来たことって、まだ……」
「まだ……ないわ」

 彼女は夜の空を見上げ、その後ジャン=ピエールに視線を戻した。
「家ではわたし、結構忙しいのよ、勉強で。ボストンに、毎週末帰るわけにもいかないでしょ。だからインターンシップ以外のクラスは、オンラインで受講して遅れないようにしてるの」
 別れ際に、パリジャンみたいに抱きしめて彼がリサの頬に軽い音のビズ(bisous)を落とした時、上空を飛行機が通り過ぎた。
 ――あ……。
 反対側の頬に移る瞬間、彼の唇が、かすかに彼女の唇に触れた。
 ――い、今のは偶然? それとも……。
「僕が、自由にさせてあげようか? 君はもっと、陽の当たるところにいるべきだと思うんだよね」
「からかってるのかしら?」
「財産なら、僕も持ってる。彼ほどじゃないかもしれないけれど、贅沢をさせてあげるお金ぐらいなら充分にあるよ」
「いったいどこまで信じていいの?」
「それは、君次第だよ」

 ジャン=ピエールは夜の空気を胸いっぱいに吸い込んだ。
「ま、よく考えといて」
 リサが建物の中に入り、ドアマンに迎えられたのを見届けると、彼はくるりと向きを変えて真面目な青年の顔に戻る。

「いつかきっと、僕が手に入れる」
 そんな決意をまるで何気ない言葉のように独りごちて、北へと歩き始めた。
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