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第4章 中世 フランス
モン=サン=ミシェル 1
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「危ないなぁ、そんな物騒なものから、手を離してくれないか。もし僕の身体に、傷のひとつでもつけたら、君は犯した罪よりずっと大きな罰を受けることになるんだよ」
どこかで聞いたことのある声だ。「はて」と首をひねるギヨームに、その男の声音には、苛ついたトーンが混じる。
「忘れちゃったんじゃないよね! 僕の声」
男は壁にもたれ腕組みをしたまま、ギヨームの剣を避けるように、上体を反対側へ反らした。
「この前最後に会ってから、ずいぶん背が高くなったな、ギヨーム」
「ジャン=ピエール!! ……ドルレアン公太子」
ギヨームに名前を呼ばれて、彼は初めて、目深にかぶった頭巾の覆いをはずした。中から現れたのは、濃い茶色の髪をした青年だ。
「久しぶりだね、ギヨーム。それからシャルロットも」
彼は、回廊の端で事態を見守っていた王女にも声をかける。
――ジャン=ピエール! 本当にあなたなの?
「どうして、ここに……?」
「ん、まあ話せば長くなるんだけど……」
「どうぞ、長い話でも聞く準備はできていてよ」
「あ、そうなんだ? まあいいや、君も歩き回って疲れただろうから、また後で」
「ちょっと……」
さすがに国王の愛娘を無視するような無礼な応対ではなかったが、モン=サン=ミシェルにいきなり姿を見せた理由をそれとなくはぐらかして、ジャン=ピエールは結局シャルロットに説明しないままその日をやり過ごした。
◇ ◇ ◇
翌朝、まだ日が昇ったばかりの海岸は、あと二十分もすれば鮮やかな青空が広がってくるのだが、今はうっすらと白いもやが立ち込めていた。
潮の引いた早朝の海岸を、シャルロット王女が一人だけで歩いていた。ミレイユにもリシャールにも言わずに、こっそり寝室を抜け出してきた。
彼女が散歩しているのは正確には海岸というより干潟だった。この季節の早朝は、サン=ミシェル島の周り一帯はこういう状態になる。靴は汚れてしまうが、歩くに充分な硬さの地質ではある。
フランスでも北西に位置するノルマンディーでは、秋もそろそろ終わりに近い時期になると、夜明けはロワール河畔よりずっと遅い時間に訪れる。だからそれほど早起きしなくても、曙色の名残りのある空の下を散歩できるのだ。
一人でも安全なはずだ。昨日ジャン=ピエールがいきなり姿を現して以来、この島に危険人物が潜んでいないかどうかは念入りに調べさせた。それにここは孤島だから、誰かやってくるとしたら今のこの時間帯だけなのだが、シャルロットが見渡す限り、あたり一面は濡れた砂浜だった。近づいてくる者がいたら、目に入らないわけがなかった。
だから彼女は、一人きりで待っていたのだ。彼がやってくるのを……。
――別に約束なんてしていない。けれど、わかってるわ、あなたがいる修道院の客室の窓から、わたくしが見えるのは。さっさと出てきて、説明なさい。ここにやってきた理由とやらを……。
そうこうするうちに、ようやく見慣れた人影が島を囲む門から現れた。急ぎ足で近づいて、声の届く範囲までやってくる。
「おはよう、シャルロット」
「ごきげんよう、ジャン=ピエール。ずいぶんお久しぶりね」
シャルロットの挨拶は、昨日回廊で彼に会った時の続きだった。それだけ答えると、言葉を打ち切った。あとは彼が「その理由」を語り始めるまで待つことに決めていた。内心では知りたくてうずうずしていたのだが、王女のプライドがどうしても自分から聞くことを許さない。
そのため彼が追いついた後も、無視するように黙って歩き続けた。
ジャン=ピエールがなぜモン=サン=ミシェルにやってきたかを、未だに教えてくれないのは、どうやら他の人には聞かれたくないかららしかった。
昨夜修道院のテラスで、あらゆる方向から馬が駆けてくるように波が押し寄せ、島が水に囲まれる脅威の瞬間を、ギヨームたちと全員で眺めていた時も、感動に言葉をなくしたふりを装って彼女に話しかけてこなかった。
――もう、本当にあなたって……。
「……昔から人を焦らしてイライラさせるのがお得意よね」
「わざとそうしてるわけじゃないだろ? 考えてみろよ僕の立場を」
シャルロットはその顔に険しい表情を作ったが、いつまでたっても年を取らないみたいに外見の変わらないジャン=ピエールを見ていると、どうしても自分が幼い女の子だった頃を思い出してしまう。
潮風が通り過ぎ、シャルロットの金髪にふわりと触れていった。
侍女の手も借りられず王女が自分で手早く結いあげた髪は、風に弄ばれはらりと解けてしまう……。けれど、どれほど乱されても艶やかにきらめく金色の巻き毛は、まわりを誘惑するかのごとく揺れていた。
昔よく小さな王女の髪をふざけてくしゃくしゃと撫でていたせいで、それを覚えていたジャン=ピエールの指先が髪を直してやろうと自然に動きそうになった。だが、誰かが開けた修道院の窓に朝日が反射して、彼の顔にキラリと光の剣を突き刺した。
――叡智の天使ミカエルに、注意を喚起された……。
ジャン=ピエールはそう思った。
「ごめん……、君はもう子供じゃなかった。でもあの時は……、10年前は、置き去りにしたわけじゃないんだ。だって、シャルロットの父上は、決して僕が君に近づくことを許さなかっただろう。それは二人の血が濃すぎるからだけじゃなくて……、つまり……、たとえ僕たちの血が繋がってなかったとしても、国王は大事な王女をオルレアンに嫁がせることは絶対にないから!」
「わかってる……わ、そんなこと」
オルレアン公爵家――フランス国内で、国王の次に身分の高い貴族でありながら、王女が政略結婚をする価値のない相手……。
王室の世継ぎが絶えないように、そのためにだけ用意された家柄……。
それは国王にとって、自分が裏切られて寝首をかかれることのないように、注意さえしていれば良い存在だった。
従兄弟の娘であるシャルロットとの結婚という点にだけついて考えるなら、過去に従兄弟姉妹の結婚の例もあるくらいだから、ローマ教皇の許可さえ降りれば許されるのかもしれない。だが国王は、たとえ二人の年齢差を許したとしても、オルレアンを娘の嫁ぎ先に選ぶことはありえなかった。王女の婚姻というものは、もっと有効な道を選ばねばならない。
それに比べてノルマンディー公爵家は、フランス北部の政治を円滑にするだけでなく、イングランド全体にまで力を及ぼす家系だった。王室にとって重要な鍵となる相手だ。
本音を言えば、ある意味ジャン=ピエールは、ギヨームがとても羨ましかった。
シャルロットを手に入れられるから、というよりも、国王に対して対抗できる要素の多さという点において、かなりいい勝負ができる立場にいるからだ。
ジャン=ピエールは、こんなに歳の離れている王女に、恋愛の感情を抱くなどと、不道徳な考えを持ったりはしていない。いつもルイ・ド・ヴァロワと軽口を叩いている彼だが、国王にとって、ただのチェスの相手のようなものだ。
しかしギヨームは……、自分と違ってフランスに対し多大な影響力を持っている。
今のままでもその力は十分大きい。だが、いずれシャルロットを彼の懐に引き込めば、国王と等しい立ち位置で駆け引きが可能なのだ。いやもしかしたら、海峡の向こうの国を巻き込んで、フランス国王以上の権力を手にする機会だってないとは限らない。
目の前を犬の親子が横切っていった。
つられて追いかけた視線の、ずっと北の彼方に、小さな島が見える。遠くに見える水も、干潟の低い部分にたまった海水が光っているのであって、今は海ではない。それ以外は何もない――三方を濡れた砂で囲まれたどこまでも続く平らな風景は、焦燥を抱えるシャルロットの心にすらも、ひとときの安らぎを与えてくれた。
島民たちが今頃貝類を拾っているだろう海岸は南側の干潟で、北塔(トゥール・ノード)とサン・オベール・チャペルの見えるこの北の海岸には、誰もいなかった。ただ犬が二匹で海岸を歩いているだけだ。
茶色を帯びた毛並みのラブラドール・リトレバーの親子は、ちょこちょこと砂を掘り返しては、逃げ回るヤドカリを追いかけて遊んでいる。
ジャン=ピエールは風に逆らって、シャルロットのほうに一歩近づいた。
――ようやく、理由を話す気になったのね。
そこへ割り込むように、ラブラドール・リトレバーの親子も彼の方にやってきた。
話の邪魔をされても、相手が犬だと怒る気にもならず、ただ可愛らしいだけだ。気がつくとシャルロットは、笑顔を浮かべていた。
母犬が口にくわえた獲物の貝を、ジャン=ピエールに差し出す。
「いい子だ」
貝を受け取り、彼は耳の後ろに指をうずめて撫で上げる。犬は嬉しそうに、頬ずりしそうな勢いで彼にすり寄った。
「あなたの犬?」
「いや、教会のだ……と思う。こんな遠くまで犬なんか連れてこないよ」
ジャン=ピエールの住んでいるのも、シャルロットの居城に近い、ロワール河畔のブロワ城だ。
「ふうん、会ったばかりなのに、従わせるのが得意なのね」
「ありがとう。お褒めの言葉だと受け取っておくよ」
子犬の方は、シャルロットの気を引こうと彼女の足元を軽快に転がっている。それを眺める王女が思わず小さな笑い声をたてた時、ジャン=ピエールの言葉が潮風に乗って耳に届いた。
「ル・グラットシエル(le gratte-ciel)」
「え?」
「そこにいるんだ。その人は……」
「聞いたことない場所ね」
「フランス東部の山岳地帯だよ。昔ブルゴーニュ領だったとこの、少し南」
それは、国王が今訪れているフランドル地方からも、遠くないということになる。
「君が初めて聞いた地名だとしても、無理はないよ。地図にはまだ載ってないはずだから」
シャルロットは眉間にしわを寄せる。彼女本人も意識すらしていない、唇からこぼれてきた微かな唸り声……。ジャン=ピエールの琴線は、思いがけずかき乱された。
「場所を教えてくれたのは感謝するけれど、わたくしだけでは探せそうにないわ。誰か……」
――誰か案内してくれる人がいないと。
なのに彼は、続きをどう説明すべきか考えあぐねているように、まったく別の話を始めた。
「そういえばシャルロット。この海岸って今のところ干潟が広がってるんだけど、ゆるい泥の上をうっかり歩いたりすると、底なし沼のようにズブズブと沈んでしまうんだよ。決して行ってはいけない、とかなんとか釘を刺されなかったの? 君の大切なフィアンセに」
「も、もちろん聞いているわ」
旅支度の際にカーン城の侍従長からも、長々と細かい説明をされた。
「ねえ……それで、あなたのお話には、まだ続きがあるんでしょう?」
「まあ、そうだけど……」
ジャン=ピエールが足元の貝殻を拾って遠くに投げると、ラブラドール・リトレバーの親犬はしっぽを振りながら、それを追いかけて行った。子犬は王女の足元にとどまるべきか、母親について行こうか迷ってうろうろしている。
「もう……、そんなにもったいぶらないで。あなたがモン=サン=ミシェルに来たのは、わたくしをそこに案内してくれるためだと考えてもいいの……ね?」
「その前にひとつ聞きたいんだけど、なんで、そんなにまでして彼女に会いたいの?」
王女の問いに答えず、彼は別の質問を返してきた。
「ふうん。つまりあなたは、『彼女』だと思うわけね。……それとも、ただ知っているふりを装っているだけなのかしら?」
「その女性が誰かってこと? もちろん存じあげてますよ、ちゃんと」
「その手に乗って、わたくしが口を滑らせて名前を言うとでも?」
「ずいぶん食い下がるんだな。シャルロットらしくない。……君はあの人を、国王の敵だと信じているみたいだけど、陛下は彼女のことを憎んでいない」
――ああ、やっぱり彼はその人の正体を知っていた。
……いいえ、ジャン=ピエールの立ち位置を考えれば、それは当たり前なのだけれど。
「どこにいるか知っているのなら、わたくしをそこへ連れて行って!」
「なんのために彼女に会うのか、教えてくれたらね」
「特に何も……、ちょっと聞きたいことがあるだけよ」
「へえぇ、それはどうかな。僕は戦いをやめるよう、説得しに来ただけなんだ。僕も大天使ミカエルの夢を見た……としたら? その夢とは王女がその人を探しているというお告げだ。だから僕は彼女を、ル・グラットシエル(le gratte-ciel)に避難させた。ところで大天使ミカエルは、天軍の総帥とも呼ばれている。つまり……」
ジャン=ピエールは両腕を組む。
「以上を統合すれば、シャルロットが考えていることも想像に難くないよ」
――わたくしが……、武力行動をとるなんてありえないのに! 少なくとも、一緒に連れて行ってくれるジャン=ピエールの見ている前でだけは……。
自分はそんなわがままなお姫さまではないのだと、彼にわかって欲しかった。
「戦を始めるつもりなど全くないのよ、わたくしは」
「じゃあ、どうして五〇人もの兵を連れてきた?」
「護衛のため……かしら」
「婚約者に会いに来ただけなのに?」
「道中、何があるかわからないでしょう? これでもかなり、カーンのお城に残してきたんだから。サン=ミシェル聖堂の騎士の間にはそんなに大勢滞在できないからって、ギヨームさまが……」
「はぁ? いったいアンボワーズから何人連れてきたんだよ」
「騎馬兵が七〇と歩兵が三〇……」
すかさず彼女はつけ加える。
「……だって、我が国軍の兵士たちをもてなすのは、ノルマンディー公国の負担になるのよ。フランス国王に歯向かう財力を、貯えさせてはいけないの」
彼は風に吹かれる彼女の髪を見つめながら、ため息をつく。
「そうか、今はまだ父上の味方なんだね、シャルロット。それがあの公太子の元へ嫁に行った後どう変わっていくんだろう……」
――ルイ王も君も、いろいろと振る舞いの問われる未来が待ち受けてるな……。
「あの人は、父上を裏切ったりしない……と思うわ」
反論しかけたシャルロットだが、まだギヨームのことをよく知らないのに気づいて、語尾を断定的なもの言いから推測に変えた。
顔にかかったおくれ髪を、王女は細い指で耳の後ろに押しやる。
「しばらく見ない間に、ずいぶん大人っぽくなったね」
「また、話をそらす……。アンボワーズの祝賀会で会ったでしょう?」
「ああ、半年前だっけ」
「九か月も前よ」
「あれ、そうだっけ?」
「国王主催の新年祝賀会のほうの話をしてるの。半年前の舞踏会には来なかったでしょ……」
――知ってるわ、あなたが王家を避けてることぐらい……。
「あの時はさ、大人びた装いをしている幼さを残したお姫さまって感じだったけど、今は何か内面から変わってきてるっていうか……彼のせいかな」
「え、誰?」
「僕にそれを言わせたいのかよ」
「えっ……と、あの方には、まだお会いしたばかりだもの。それに、両親同士の間ではいちおうそういうことに決められてるけど、婚約の神への誓約と正式な署名はまだだから」
互いの心が打ち解けるのに、時間を要さないこともある――彼はそう思った。むしろ、出会って間もないのに仲良くなれる相手のほうが、強い絆で結ばれ発展していく場合が多い。
「まぁ、あいつなら僕もよく知ってるけど、とりあえず君にふさわしい男だと言える……かな」
偉そうな口を聞いているが、それを決めるのはジャン=ピエールではない。
その権利を持つ人間は、この世界でただ一人、国王ルイ・ド・ヴァロワだけだった。
「シャルロットさま!!」
「王女さまぁ!」
そのとき海岸を走ってくる青年たちの声が、遠くの方から潮風に運ばれてきた。
ギヨームとリシャールだ。二人は靴が濡れるのもお構いなく走っている。
彼らの後ろにはモン=サン=ミシェルの尖塔が、恐ろしいほど切り立つように天にそびえていた。海岸線から眺める聖堂はいちだんと大きく、何やら迫り来るような迫力があった。
「ジャン=ピエール!!」
シャルロットの緊迫した声で、呼ばれた彼は振り返る。
どこかで聞いたことのある声だ。「はて」と首をひねるギヨームに、その男の声音には、苛ついたトーンが混じる。
「忘れちゃったんじゃないよね! 僕の声」
男は壁にもたれ腕組みをしたまま、ギヨームの剣を避けるように、上体を反対側へ反らした。
「この前最後に会ってから、ずいぶん背が高くなったな、ギヨーム」
「ジャン=ピエール!! ……ドルレアン公太子」
ギヨームに名前を呼ばれて、彼は初めて、目深にかぶった頭巾の覆いをはずした。中から現れたのは、濃い茶色の髪をした青年だ。
「久しぶりだね、ギヨーム。それからシャルロットも」
彼は、回廊の端で事態を見守っていた王女にも声をかける。
――ジャン=ピエール! 本当にあなたなの?
「どうして、ここに……?」
「ん、まあ話せば長くなるんだけど……」
「どうぞ、長い話でも聞く準備はできていてよ」
「あ、そうなんだ? まあいいや、君も歩き回って疲れただろうから、また後で」
「ちょっと……」
さすがに国王の愛娘を無視するような無礼な応対ではなかったが、モン=サン=ミシェルにいきなり姿を見せた理由をそれとなくはぐらかして、ジャン=ピエールは結局シャルロットに説明しないままその日をやり過ごした。
◇ ◇ ◇
翌朝、まだ日が昇ったばかりの海岸は、あと二十分もすれば鮮やかな青空が広がってくるのだが、今はうっすらと白いもやが立ち込めていた。
潮の引いた早朝の海岸を、シャルロット王女が一人だけで歩いていた。ミレイユにもリシャールにも言わずに、こっそり寝室を抜け出してきた。
彼女が散歩しているのは正確には海岸というより干潟だった。この季節の早朝は、サン=ミシェル島の周り一帯はこういう状態になる。靴は汚れてしまうが、歩くに充分な硬さの地質ではある。
フランスでも北西に位置するノルマンディーでは、秋もそろそろ終わりに近い時期になると、夜明けはロワール河畔よりずっと遅い時間に訪れる。だからそれほど早起きしなくても、曙色の名残りのある空の下を散歩できるのだ。
一人でも安全なはずだ。昨日ジャン=ピエールがいきなり姿を現して以来、この島に危険人物が潜んでいないかどうかは念入りに調べさせた。それにここは孤島だから、誰かやってくるとしたら今のこの時間帯だけなのだが、シャルロットが見渡す限り、あたり一面は濡れた砂浜だった。近づいてくる者がいたら、目に入らないわけがなかった。
だから彼女は、一人きりで待っていたのだ。彼がやってくるのを……。
――別に約束なんてしていない。けれど、わかってるわ、あなたがいる修道院の客室の窓から、わたくしが見えるのは。さっさと出てきて、説明なさい。ここにやってきた理由とやらを……。
そうこうするうちに、ようやく見慣れた人影が島を囲む門から現れた。急ぎ足で近づいて、声の届く範囲までやってくる。
「おはよう、シャルロット」
「ごきげんよう、ジャン=ピエール。ずいぶんお久しぶりね」
シャルロットの挨拶は、昨日回廊で彼に会った時の続きだった。それだけ答えると、言葉を打ち切った。あとは彼が「その理由」を語り始めるまで待つことに決めていた。内心では知りたくてうずうずしていたのだが、王女のプライドがどうしても自分から聞くことを許さない。
そのため彼が追いついた後も、無視するように黙って歩き続けた。
ジャン=ピエールがなぜモン=サン=ミシェルにやってきたかを、未だに教えてくれないのは、どうやら他の人には聞かれたくないかららしかった。
昨夜修道院のテラスで、あらゆる方向から馬が駆けてくるように波が押し寄せ、島が水に囲まれる脅威の瞬間を、ギヨームたちと全員で眺めていた時も、感動に言葉をなくしたふりを装って彼女に話しかけてこなかった。
――もう、本当にあなたって……。
「……昔から人を焦らしてイライラさせるのがお得意よね」
「わざとそうしてるわけじゃないだろ? 考えてみろよ僕の立場を」
シャルロットはその顔に険しい表情を作ったが、いつまでたっても年を取らないみたいに外見の変わらないジャン=ピエールを見ていると、どうしても自分が幼い女の子だった頃を思い出してしまう。
潮風が通り過ぎ、シャルロットの金髪にふわりと触れていった。
侍女の手も借りられず王女が自分で手早く結いあげた髪は、風に弄ばれはらりと解けてしまう……。けれど、どれほど乱されても艶やかにきらめく金色の巻き毛は、まわりを誘惑するかのごとく揺れていた。
昔よく小さな王女の髪をふざけてくしゃくしゃと撫でていたせいで、それを覚えていたジャン=ピエールの指先が髪を直してやろうと自然に動きそうになった。だが、誰かが開けた修道院の窓に朝日が反射して、彼の顔にキラリと光の剣を突き刺した。
――叡智の天使ミカエルに、注意を喚起された……。
ジャン=ピエールはそう思った。
「ごめん……、君はもう子供じゃなかった。でもあの時は……、10年前は、置き去りにしたわけじゃないんだ。だって、シャルロットの父上は、決して僕が君に近づくことを許さなかっただろう。それは二人の血が濃すぎるからだけじゃなくて……、つまり……、たとえ僕たちの血が繋がってなかったとしても、国王は大事な王女をオルレアンに嫁がせることは絶対にないから!」
「わかってる……わ、そんなこと」
オルレアン公爵家――フランス国内で、国王の次に身分の高い貴族でありながら、王女が政略結婚をする価値のない相手……。
王室の世継ぎが絶えないように、そのためにだけ用意された家柄……。
それは国王にとって、自分が裏切られて寝首をかかれることのないように、注意さえしていれば良い存在だった。
従兄弟の娘であるシャルロットとの結婚という点にだけついて考えるなら、過去に従兄弟姉妹の結婚の例もあるくらいだから、ローマ教皇の許可さえ降りれば許されるのかもしれない。だが国王は、たとえ二人の年齢差を許したとしても、オルレアンを娘の嫁ぎ先に選ぶことはありえなかった。王女の婚姻というものは、もっと有効な道を選ばねばならない。
それに比べてノルマンディー公爵家は、フランス北部の政治を円滑にするだけでなく、イングランド全体にまで力を及ぼす家系だった。王室にとって重要な鍵となる相手だ。
本音を言えば、ある意味ジャン=ピエールは、ギヨームがとても羨ましかった。
シャルロットを手に入れられるから、というよりも、国王に対して対抗できる要素の多さという点において、かなりいい勝負ができる立場にいるからだ。
ジャン=ピエールは、こんなに歳の離れている王女に、恋愛の感情を抱くなどと、不道徳な考えを持ったりはしていない。いつもルイ・ド・ヴァロワと軽口を叩いている彼だが、国王にとって、ただのチェスの相手のようなものだ。
しかしギヨームは……、自分と違ってフランスに対し多大な影響力を持っている。
今のままでもその力は十分大きい。だが、いずれシャルロットを彼の懐に引き込めば、国王と等しい立ち位置で駆け引きが可能なのだ。いやもしかしたら、海峡の向こうの国を巻き込んで、フランス国王以上の権力を手にする機会だってないとは限らない。
目の前を犬の親子が横切っていった。
つられて追いかけた視線の、ずっと北の彼方に、小さな島が見える。遠くに見える水も、干潟の低い部分にたまった海水が光っているのであって、今は海ではない。それ以外は何もない――三方を濡れた砂で囲まれたどこまでも続く平らな風景は、焦燥を抱えるシャルロットの心にすらも、ひとときの安らぎを与えてくれた。
島民たちが今頃貝類を拾っているだろう海岸は南側の干潟で、北塔(トゥール・ノード)とサン・オベール・チャペルの見えるこの北の海岸には、誰もいなかった。ただ犬が二匹で海岸を歩いているだけだ。
茶色を帯びた毛並みのラブラドール・リトレバーの親子は、ちょこちょこと砂を掘り返しては、逃げ回るヤドカリを追いかけて遊んでいる。
ジャン=ピエールは風に逆らって、シャルロットのほうに一歩近づいた。
――ようやく、理由を話す気になったのね。
そこへ割り込むように、ラブラドール・リトレバーの親子も彼の方にやってきた。
話の邪魔をされても、相手が犬だと怒る気にもならず、ただ可愛らしいだけだ。気がつくとシャルロットは、笑顔を浮かべていた。
母犬が口にくわえた獲物の貝を、ジャン=ピエールに差し出す。
「いい子だ」
貝を受け取り、彼は耳の後ろに指をうずめて撫で上げる。犬は嬉しそうに、頬ずりしそうな勢いで彼にすり寄った。
「あなたの犬?」
「いや、教会のだ……と思う。こんな遠くまで犬なんか連れてこないよ」
ジャン=ピエールの住んでいるのも、シャルロットの居城に近い、ロワール河畔のブロワ城だ。
「ふうん、会ったばかりなのに、従わせるのが得意なのね」
「ありがとう。お褒めの言葉だと受け取っておくよ」
子犬の方は、シャルロットの気を引こうと彼女の足元を軽快に転がっている。それを眺める王女が思わず小さな笑い声をたてた時、ジャン=ピエールの言葉が潮風に乗って耳に届いた。
「ル・グラットシエル(le gratte-ciel)」
「え?」
「そこにいるんだ。その人は……」
「聞いたことない場所ね」
「フランス東部の山岳地帯だよ。昔ブルゴーニュ領だったとこの、少し南」
それは、国王が今訪れているフランドル地方からも、遠くないということになる。
「君が初めて聞いた地名だとしても、無理はないよ。地図にはまだ載ってないはずだから」
シャルロットは眉間にしわを寄せる。彼女本人も意識すらしていない、唇からこぼれてきた微かな唸り声……。ジャン=ピエールの琴線は、思いがけずかき乱された。
「場所を教えてくれたのは感謝するけれど、わたくしだけでは探せそうにないわ。誰か……」
――誰か案内してくれる人がいないと。
なのに彼は、続きをどう説明すべきか考えあぐねているように、まったく別の話を始めた。
「そういえばシャルロット。この海岸って今のところ干潟が広がってるんだけど、ゆるい泥の上をうっかり歩いたりすると、底なし沼のようにズブズブと沈んでしまうんだよ。決して行ってはいけない、とかなんとか釘を刺されなかったの? 君の大切なフィアンセに」
「も、もちろん聞いているわ」
旅支度の際にカーン城の侍従長からも、長々と細かい説明をされた。
「ねえ……それで、あなたのお話には、まだ続きがあるんでしょう?」
「まあ、そうだけど……」
ジャン=ピエールが足元の貝殻を拾って遠くに投げると、ラブラドール・リトレバーの親犬はしっぽを振りながら、それを追いかけて行った。子犬は王女の足元にとどまるべきか、母親について行こうか迷ってうろうろしている。
「もう……、そんなにもったいぶらないで。あなたがモン=サン=ミシェルに来たのは、わたくしをそこに案内してくれるためだと考えてもいいの……ね?」
「その前にひとつ聞きたいんだけど、なんで、そんなにまでして彼女に会いたいの?」
王女の問いに答えず、彼は別の質問を返してきた。
「ふうん。つまりあなたは、『彼女』だと思うわけね。……それとも、ただ知っているふりを装っているだけなのかしら?」
「その女性が誰かってこと? もちろん存じあげてますよ、ちゃんと」
「その手に乗って、わたくしが口を滑らせて名前を言うとでも?」
「ずいぶん食い下がるんだな。シャルロットらしくない。……君はあの人を、国王の敵だと信じているみたいだけど、陛下は彼女のことを憎んでいない」
――ああ、やっぱり彼はその人の正体を知っていた。
……いいえ、ジャン=ピエールの立ち位置を考えれば、それは当たり前なのだけれど。
「どこにいるか知っているのなら、わたくしをそこへ連れて行って!」
「なんのために彼女に会うのか、教えてくれたらね」
「特に何も……、ちょっと聞きたいことがあるだけよ」
「へえぇ、それはどうかな。僕は戦いをやめるよう、説得しに来ただけなんだ。僕も大天使ミカエルの夢を見た……としたら? その夢とは王女がその人を探しているというお告げだ。だから僕は彼女を、ル・グラットシエル(le gratte-ciel)に避難させた。ところで大天使ミカエルは、天軍の総帥とも呼ばれている。つまり……」
ジャン=ピエールは両腕を組む。
「以上を統合すれば、シャルロットが考えていることも想像に難くないよ」
――わたくしが……、武力行動をとるなんてありえないのに! 少なくとも、一緒に連れて行ってくれるジャン=ピエールの見ている前でだけは……。
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「戦を始めるつもりなど全くないのよ、わたくしは」
「じゃあ、どうして五〇人もの兵を連れてきた?」
「護衛のため……かしら」
「婚約者に会いに来ただけなのに?」
「道中、何があるかわからないでしょう? これでもかなり、カーンのお城に残してきたんだから。サン=ミシェル聖堂の騎士の間にはそんなに大勢滞在できないからって、ギヨームさまが……」
「はぁ? いったいアンボワーズから何人連れてきたんだよ」
「騎馬兵が七〇と歩兵が三〇……」
すかさず彼女はつけ加える。
「……だって、我が国軍の兵士たちをもてなすのは、ノルマンディー公国の負担になるのよ。フランス国王に歯向かう財力を、貯えさせてはいけないの」
彼は風に吹かれる彼女の髪を見つめながら、ため息をつく。
「そうか、今はまだ父上の味方なんだね、シャルロット。それがあの公太子の元へ嫁に行った後どう変わっていくんだろう……」
――ルイ王も君も、いろいろと振る舞いの問われる未来が待ち受けてるな……。
「あの人は、父上を裏切ったりしない……と思うわ」
反論しかけたシャルロットだが、まだギヨームのことをよく知らないのに気づいて、語尾を断定的なもの言いから推測に変えた。
顔にかかったおくれ髪を、王女は細い指で耳の後ろに押しやる。
「しばらく見ない間に、ずいぶん大人っぽくなったね」
「また、話をそらす……。アンボワーズの祝賀会で会ったでしょう?」
「ああ、半年前だっけ」
「九か月も前よ」
「あれ、そうだっけ?」
「国王主催の新年祝賀会のほうの話をしてるの。半年前の舞踏会には来なかったでしょ……」
――知ってるわ、あなたが王家を避けてることぐらい……。
「あの時はさ、大人びた装いをしている幼さを残したお姫さまって感じだったけど、今は何か内面から変わってきてるっていうか……彼のせいかな」
「え、誰?」
「僕にそれを言わせたいのかよ」
「えっ……と、あの方には、まだお会いしたばかりだもの。それに、両親同士の間ではいちおうそういうことに決められてるけど、婚約の神への誓約と正式な署名はまだだから」
互いの心が打ち解けるのに、時間を要さないこともある――彼はそう思った。むしろ、出会って間もないのに仲良くなれる相手のほうが、強い絆で結ばれ発展していく場合が多い。
「まぁ、あいつなら僕もよく知ってるけど、とりあえず君にふさわしい男だと言える……かな」
偉そうな口を聞いているが、それを決めるのはジャン=ピエールではない。
その権利を持つ人間は、この世界でただ一人、国王ルイ・ド・ヴァロワだけだった。
「シャルロットさま!!」
「王女さまぁ!」
そのとき海岸を走ってくる青年たちの声が、遠くの方から潮風に運ばれてきた。
ギヨームとリシャールだ。二人は靴が濡れるのもお構いなく走っている。
彼らの後ろにはモン=サン=ミシェルの尖塔が、恐ろしいほど切り立つように天にそびえていた。海岸線から眺める聖堂はいちだんと大きく、何やら迫り来るような迫力があった。
「ジャン=ピエール!!」
シャルロットの緊迫した声で、呼ばれた彼は振り返る。
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