摩天楼の君主(His Majesty of Manhattan)

H・カザーン

文字の大きさ
18 / 32
第4章 中世 フランス

モン=サン=ミシェル 1

しおりを挟む
「危ないなぁ、そんな物騒なものから、手を離してくれないか。もし僕の身体に、傷のひとつでもつけたら、君は犯した罪よりずっと大きな罰を受けることになるんだよ」

 どこかで聞いたことのある声だ。「はて」と首をひねるギヨームに、その男の声音には、苛ついたトーンが混じる。
「忘れちゃったんじゃないよね! 僕の声」
 男は壁にもたれ腕組みをしたまま、ギヨームの剣を避けるように、上体を反対側へ反らした。
「この前最後に会ってから、ずいぶん背が高くなったな、ギヨーム」

「ジャン=ピエール!! ……ドルレアン公太子」
 ギヨームに名前を呼ばれて、彼は初めて、目深にかぶった頭巾フードの覆いをはずした。中から現れたのは、濃い茶色の髪をした青年だ。
「久しぶりだね、ギヨーム。それからシャルロットも」
 彼は、回廊の端で事態を見守っていた王女にも声をかける。

 ――ジャン=ピエール! 本当にあなたなの?
「どうして、ここに……?」
「ん、まあ話せば長くなるんだけど……」
「どうぞ、長い話でも聞く準備はできていてよ」
「あ、そうなんだ? まあいいや、君も歩き回って疲れただろうから、また後で」
「ちょっと……」
 さすがに国王の愛娘を無視するような無礼な応対ではなかったが、モン=サン=ミシェルにいきなり姿を見せた理由をそれとなくはぐらかして、ジャン=ピエールは結局シャルロットに説明しないままその日をやり過ごした。

 ◇ ◇ ◇

 翌朝、まだ日が昇ったばかりの海岸は、あと二十分もすれば鮮やかな青空が広がってくるのだが、今はうっすらと白いもやが立ち込めていた。
 潮の引いた早朝の海岸を、シャルロット王女が一人だけで歩いていた。ミレイユにもリシャールにも言わずに、こっそり寝室を抜け出してきた。
 彼女が散歩しているのは正確には海岸というより干潟だった。この季節の早朝は、サン=ミシェル島の周り一帯はこういう状態になる。靴は汚れてしまうが、歩くに充分な硬さの地質ではある。

 フランスでも北西に位置するノルマンディーでは、秋もそろそろ終わりに近い時期になると、夜明けはロワール河畔よりずっと遅い時間に訪れる。だからそれほど早起きしなくても、曙色の名残りのある空の下を散歩できるのだ。
 一人でも安全なはずだ。昨日ジャン=ピエールがいきなり姿を現して以来、この島に危険人物が潜んでいないかどうかは念入りに調べさせた。それにここは孤島だから、誰かやってくるとしたら今のこの時間帯だけなのだが、シャルロットが見渡す限り、あたり一面は濡れた砂浜だった。近づいてくる者がいたら、目に入らないわけがなかった。
 だから彼女は、一人きりで待っていたのだ。彼がやってくるのを……。
 ――別に約束なんてしていない。けれど、わかってるわ、あなたがいる修道院の客室の窓から、わたくしが見えるのは。さっさと出てきて、説明なさい。ここにやってきた理由とやらを……。

 そうこうするうちに、ようやく見慣れた人影が島を囲む門から現れた。急ぎ足で近づいて、声の届く範囲までやってくる。
「おはよう、シャルロット」
「ごきげんよう、ジャン=ピエール。ずいぶんお久しぶりね」
 シャルロットの挨拶は、昨日回廊で彼に会った時の続きだった。それだけ答えると、言葉を打ち切った。あとは彼が「その理由」を語り始めるまで待つことに決めていた。内心では知りたくてうずうずしていたのだが、王女のプライドがどうしても自分から聞くことを許さない。
 そのため彼が追いついた後も、無視するように黙って歩き続けた。

 ジャン=ピエールがなぜモン=サン=ミシェルにやってきたかを、未だに教えてくれないのは、どうやら他の人には聞かれたくないかららしかった。
 昨夜修道院のテラスで、あらゆる方向から馬が駆けてくるように波が押し寄せ、島が水に囲まれる脅威の瞬間を、ギヨームたちと全員で眺めていた時も、感動に言葉をなくしたふりを装って彼女に話しかけてこなかった。
 ――もう、本当にあなたって……。
「……昔から人を焦らしてイライラさせるのがお得意よね」
「わざとそうしてるわけじゃないだろ? 考えてみろよ僕の立場を」

 シャルロットはその顔に険しい表情を作ったが、いつまでたっても年を取らないみたいに外見の変わらないジャン=ピエールを見ていると、どうしても自分が幼い女の子だった頃を思い出してしまう。

 潮風が通り過ぎ、シャルロットの金髪にふわりと触れていった。

 侍女の手も借りられず王女が自分で手早く結いあげた髪は、風に弄ばれはらりと解けてしまう……。けれど、どれほど乱されても艶やかにきらめく金色の巻き毛は、まわりを誘惑するかのごとく揺れていた。
 昔よく小さな王女の髪をふざけてくしゃくしゃと撫でていたせいで、それを覚えていたジャン=ピエールの指先が髪を直してやろうと自然に動きそうになった。だが、誰かが開けた修道院の窓に朝日が反射して、彼の顔にキラリと光の剣を突き刺した。
 ――叡智の天使ミカエルに、注意を喚起された……。

 ジャン=ピエールはそう思った。
「ごめん……、君はもう子供じゃなかった。でもあの時は……、10年前は、置き去りにしたわけじゃないんだ。だって、シャルロットの父上は、決して僕が君に近づくことを許さなかっただろう。それは二人の血が濃すぎるからだけじゃなくて……、つまり……、たとえ僕たちの血が繋がってなかったとしても、国王は大事な王女をオルレアンに嫁がせることは絶対にないから!」
「わかってる……わ、そんなこと」

 オルレアン公爵家――フランス国内で、国王の次に身分の高い貴族でありながら、王女が政略結婚をする価値のない相手……。
 王室の世継ぎが絶えないように、そのためにだけ用意された家柄……。
 それは国王にとって、自分が裏切られて寝首をかかれることのないように、注意さえしていれば良い存在だった。
 従兄弟の娘であるシャルロットとの結婚という点にだけついて考えるなら、過去に従兄弟姉妹の結婚の例もあるくらいだから、ローマ教皇の許可さえ降りれば許されるのかもしれない。だが国王は、たとえ二人の年齢差を許したとしても、オルレアンを娘の嫁ぎ先に選ぶことはありえなかった。王女の婚姻というものは、もっと有効な道を選ばねばならない。
 それに比べてノルマンディー公爵家は、フランス北部の政治を円滑にするだけでなく、イングランド全体にまで力を及ぼす家系だった。王室にとって重要な鍵となる相手だ。
 本音を言えば、ある意味ジャン=ピエールは、ギヨームがとても羨ましかった。
 シャルロットを手に入れられるから、というよりも、国王に対して対抗できる要素の多さという点において、かなりいい勝負ができる立場にいるからだ。
 ジャン=ピエールは、こんなに歳の離れている王女に、恋愛の感情を抱くなどと、不道徳な考えを持ったりはしていない。いつもルイ・ド・ヴァロワと軽口を叩いている彼だが、国王にとって、ただのチェスの相手のようなものだ。
 しかしギヨームは……、自分と違ってフランスに対し多大な影響力を持っている。

 今のままでもその力は十分大きい。だが、いずれシャルロットを彼の懐に引き込めば、国王と等しい立ち位置で駆け引きが可能なのだ。いやもしかしたら、海峡の向こうの国を巻き込んで、フランス国王以上の権力を手にする機会だってないとは限らない。

 目の前を犬の親子が横切っていった。
 つられて追いかけた視線の、ずっと北の彼方に、小さな島が見える。遠くに見える水も、干潟の低い部分にたまった海水が光っているのであって、今は海ではない。それ以外は何もない――三方を濡れた砂で囲まれたどこまでも続く平らな風景は、焦燥を抱えるシャルロットの心にすらも、ひとときの安らぎを与えてくれた。
 島民たちが今頃貝類を拾っているだろう海岸は南側の干潟で、北塔(トゥール・ノード)とサン・オベール・チャペルの見えるこの北の海岸には、誰もいなかった。ただ犬が二匹で海岸を歩いているだけだ。
 茶色を帯びた毛並みのラブラドール・リトレバーの親子は、ちょこちょこと砂を掘り返しては、逃げ回るヤドカリを追いかけて遊んでいる。

 ジャン=ピエールは風に逆らって、シャルロットのほうに一歩近づいた。
 ――ようやく、理由を話す気になったのね。

 そこへ割り込むように、ラブラドール・リトレバーの親子も彼の方にやってきた。
 話の邪魔をされても、相手が犬だと怒る気にもならず、ただ可愛らしいだけだ。気がつくとシャルロットは、笑顔を浮かべていた。
 母犬が口にくわえた獲物の貝を、ジャン=ピエールに差し出す。
「いい子だ」
 貝を受け取り、彼は耳の後ろに指をうずめて撫で上げる。犬は嬉しそうに、頬ずりしそうな勢いで彼にすり寄った。
「あなたの犬?」
「いや、教会のだ……と思う。こんな遠くまで犬なんか連れてこないよ」
 ジャン=ピエールの住んでいるのも、シャルロットの居城に近い、ロワール河畔のブロワ城だ。
「ふうん、会ったばかりなのに、従わせるのが得意なのね」
「ありがとう。お褒めの言葉だと受け取っておくよ」

 子犬の方は、シャルロットの気を引こうと彼女の足元を軽快に転がっている。それを眺める王女が思わず小さな笑い声をたてた時、ジャン=ピエールの言葉が潮風に乗って耳に届いた。

「ル・グラットシエル(le gratte-ciel)」
「え?」
「そこにいるんだ。その人は……」
「聞いたことない場所ね」
「フランス東部の山岳地帯だよ。昔ブルゴーニュ領だったとこの、少し南」
 それは、国王が今訪れているフランドル地方からも、遠くないということになる。

「君が初めて聞いた地名だとしても、無理はないよ。地図にはまだ載ってないはずだから」
 シャルロットは眉間にしわを寄せる。彼女本人も意識すらしていない、唇からこぼれてきた微かな唸り声……。ジャン=ピエールの琴線は、思いがけずかき乱された。
「場所を教えてくれたのは感謝するけれど、わたくしだけでは探せそうにないわ。誰か……」
 ――誰か案内してくれる人がいないと。

 なのに彼は、続きをどう説明すべきか考えあぐねているように、まったく別の話を始めた。
「そういえばシャルロット。この海岸って今のところ干潟が広がってるんだけど、ゆるい泥の上をうっかり歩いたりすると、底なし沼のようにズブズブと沈んでしまうんだよ。決して行ってはいけない、とかなんとか釘を刺されなかったの? 君の大切なフィアンセに」
「も、もちろん聞いているわ」
 旅支度の際にカーン城の侍従長からも、長々と細かい説明をされた。
「ねえ……それで、あなたのお話には、まだ続きがあるんでしょう?」
「まあ、そうだけど……」
 ジャン=ピエールが足元の貝殻を拾って遠くに投げると、ラブラドール・リトレバーの親犬はしっぽを振りながら、それを追いかけて行った。子犬は王女の足元にとどまるべきか、母親について行こうか迷ってうろうろしている。
「もう……、そんなにもったいぶらないで。あなたがモン=サン=ミシェルに来たのは、わたくしをそこに案内してくれるためだと考えてもいいの……ね?」
「その前にひとつ聞きたいんだけど、なんで、そんなにまでして彼女に会いたいの?」
 王女の問いに答えず、彼は別の質問を返してきた。
「ふうん。つまりあなたは、『彼女』だと思うわけね。……それとも、ただ知っているふりを装っているだけなのかしら?」
「その女性が誰かってこと? もちろん存じあげてますよ、ちゃんと」
「その手に乗って、わたくしが口を滑らせて名前を言うとでも?」
「ずいぶん食い下がるんだな。シャルロットらしくない。……君はあの人を、国王のかたきだと信じているみたいだけど、陛下は彼女のことを憎んでいない」
 ――ああ、やっぱり彼はその人の正体を知っていた。

 ……いいえ、ジャン=ピエールの立ち位置を考えれば、それは当たり前なのだけれど。

「どこにいるか知っているのなら、わたくしをそこへ連れて行って!」
「なんのために彼女に会うのか、教えてくれたらね」
「特に何も……、ちょっと聞きたいことがあるだけよ」
「へえぇ、それはどうかな。僕は戦いをやめるよう、説得しに来ただけなんだ。僕も大天使ミカエルの夢を見た……としたら? その夢とは王女がその人を探しているというお告げだ。だから僕は彼女を、ル・グラットシエル(le gratte-ciel)に避難させた。ところで大天使ミカエルは、天軍の総帥とも呼ばれている。つまり……」
 ジャン=ピエールは両腕を組む。
「以上を統合すれば、シャルロットが考えていることも想像に難くないよ」

 ――わたくしが……、武力行動をとるなんてありえないのに! 少なくとも、一緒に連れて行ってくれるジャン=ピエールの見ている前でだけは……。
 自分はそんなわがままなお姫さまではないのだと、彼にわかって欲しかった。

「戦を始めるつもりなど全くないのよ、わたくしは」
「じゃあ、どうして五〇人もの兵を連れてきた?」
「護衛のため……かしら」
「婚約者に会いに来ただけなのに?」
「道中、何があるかわからないでしょう? これでもかなり、カーンのお城に残してきたんだから。サン=ミシェル聖堂の騎士の間にはそんなに大勢滞在できないからって、ギヨームさまが……」
「はぁ? いったいアンボワーズから何人連れてきたんだよ」
「騎馬兵が七〇と歩兵が三〇……」
 すかさず彼女はつけ加える。
「……だって、我が国軍の兵士たちをもてなすのは、ノルマンディー公国の負担になるのよ。フランス国王に歯向かう財力を、たくわえさせてはいけないの」
 彼は風に吹かれる彼女の髪を見つめながら、ため息をつく。
「そうか、今はまだ父上の味方なんだね、シャルロット。それがあの公太子の元へ嫁に行った後どう変わっていくんだろう……」
 ――ルイ王も君も、いろいろと振る舞いの問われる未来が待ち受けてるな……。
「あの人は、父上を裏切ったりしない……と思うわ」
 反論しかけたシャルロットだが、まだギヨームのことをよく知らないのに気づいて、語尾を断定的なもの言いから推測に変えた。

 顔にかかったおくれ髪を、王女は細い指で耳の後ろに押しやる。
「しばらく見ない間に、ずいぶん大人っぽくなったね」
「また、話をそらす……。アンボワーズの祝賀会で会ったでしょう?」
「ああ、半年前だっけ」
「九か月も前よ」
「あれ、そうだっけ?」
「国王主催の新年祝賀会のほうの話をしてるの。半年前の舞踏会には来なかったでしょ……」
 ――知ってるわ、あなたが王家を避けてることぐらい……。
「あの時はさ、大人びた装いをしている幼さを残したお姫さまって感じだったけど、今は何か内面から変わってきてるっていうか……彼のせいかな」
「え、誰?」
「僕にそれを言わせたいのかよ」
「えっ……と、あの方には、まだお会いしたばかりだもの。それに、両親同士の間ではいちおうそういうことに決められてるけど、婚約の神への誓約と正式な署名はまだだから」
 互いの心が打ち解けるのに、時間を要さないこともある――彼はそう思った。むしろ、出会って間もないのに仲良くなれる相手のほうが、強い絆で結ばれ発展していく場合が多い。
「まぁ、あいつなら僕もよく知ってるけど、とりあえず君にふさわしい男だと言える……かな」
 偉そうな口を聞いているが、それを決めるのはジャン=ピエールではない。
 その権利を持つ人間は、この世界でただ一人、国王ルイ・ド・ヴァロワだけだった。


「シャルロットさま!!」
「王女さまぁ!」
 そのとき海岸を走ってくる青年たちの声が、遠くの方から潮風に運ばれてきた。
 ギヨームとリシャールだ。二人は靴が濡れるのもお構いなく走っている。
 彼らの後ろにはモン=サン=ミシェルの尖塔が、恐ろしいほど切り立つように天にそびえていた。海岸線から眺める聖堂はいちだんと大きく、何やら迫り来るような迫力があった。

「ジャン=ピエール!!」
 シャルロットの緊迫した声で、呼ばれた彼は振り返る。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
【3月中――完結!】 積み上がった伏線の回収目前!! 夫にも子どもにも、私は選ばれなかった。 長年の裏切りを抱え、離縁状を置いて家を出た――。 待っていたのは、凍てつく絶望。 けれど同時に、それは残酷な運命の扉が開く瞬間でもあった。 「夫は愛人と生きればいい。  今さら縋られても、裏切ったあなたを許す力など残っていない」 それでも私は誓う―― 「子どもたちの心だけは、必ず取り戻す」 歪で、完全な幸福――それとも、破滅。 “石”に翻弄された者たちの、狂おしい物語。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

忘れ去られた婚約者

かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』 甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。 レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。 恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。 サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!? ※他のサイトにも掲載しています。 毎日更新です。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

ため息ひとつ――王宮に散る花びらのように

柴田はつみ
恋愛
「離縁を、お願いしたいのです」 笑顔で、震えずに、エレナはそう言った。 夫は言葉を失った。泣いてくれれば、怒ってくれれば、まだ受け止め方があった。しかしあの静けさは、エレナがもう十分に泣き終わった後の顔だと、ヴィクトルにはわかった。 幼なじみと結ばれた三年間。すれ違いは静かに始まり、深紅のドレスの令嬢によって加速した。ため息を飲み込み、完璧な微笑みを保ち続けた公爵夫人が、最後に選んだのは――。 王宮に散る花びらのような、夫婦の崩壊と再生の物語。

処理中です...