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5雑誌編集部
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「行く先は、木谷が勤めている公論社だな」
ハンドルを握っている近藤は、すぐに大通り入るために車を左に寄せていた。やがて、交差点にくると、車は左に曲がっていた。
大通りには同じような出版社の高層ビルが立ち並び、この一画の中に公論社があった。高層ビルは、遠くから見ると針の山があるようにしか見えない。近づいていくと、公論社はそれほど高さのないビルであることがわかる。まるで大木の林の中にある雑草のようにしか見えないのだ。
公論社のあるビルの地下に向かって車を走らせた。そこが駐車場になっていたからだ。駐車場にある管理事務所で警察手帳を出して、車を置かしてもらった。エレベーターにのってボンバー編集部がある十二階で佐川たちはおりた。
さすがにボンバー編集部は広い部屋で四十畳はありそうだった。だが、そこにおかれている机の上には、山のように関係資料、書類、参考本などが山積みになっていた。その間に人がいるのが見えた。
「すいません。土谷真治さんはどちらにおられますか?」
書類の間から顔をのぞかせた女性に声をかけながら、佐川は警察手帳をだして見せた。
「向こうの方におられますよ」と言って、その女性は手をあげて、部屋の反対がわの方を指さした。
佐川たちは、指さされた男の前に行った。
「土谷さん?」と言いながら佐川は警察手帳を見せた。
「そうですが、なんですか?」
「川村さんが死なれて、大変な目にあっているんじゃありませんか?」
「その通りですよ。少し前に社長に事件経過を説明しに行ってきましたよ。まだ事件のことが私も分かっていないのに。社長から川村先生の特集号を組めと言われてしまいましたよ。今週号は無理ですが、来週号には、それをやらないとならんでしょうな」
「川村さんが死なれた時のことを少しお聞きいたしたいと思いまして?」
他の編集部員に聞かれたくないと思ったのか?
「応接室があるので、そこでお話をさせていただきますよ」と言って、土谷は別の部屋に佐川たちを連れて行った。
応接室に入ると、二人を長椅子に座らせ、土谷は応接室に備え付けの自動販売機で缶コーヒーを買って二人の前に置いていた。
「川村先生のことでしょう。本当に誰が毒を入れたんですかね?」
「まず一番先にお聞きしたいことを質問させていただきます。川村先生が毒を飲まれた時、あなたはどこにいたんですか?」
「円形のテーブルをはさんで反対側にいましたよ」
「そのときに、誰が、ウエイターが持っていたプレートからグラスをとっていたか覚えておりませんか?」
「いや、私もだいぶ酔ってしまっていたからね。倒れた川村先生に驚いたせいか、まったく覚えておりません」
「そうですか。パーティ開催の案内状のようなものをお出しにならなかったのですか?」
「参加者の話は川村先生としましたよ。その時のメモがありますので、それはさしあげますよ」
「ところでパーティにフアンの人たちが来ていたようですが、土谷さんの方で、ファンの方々にお知らせをしたんですか?」
「私の方でそんなことをしませんよ。川村先生の方で知らせたんじゃないですか? 大きいファンクラブは二つあります。そこの代表者への連絡先は、お渡しするメモの脇に書いておきますよ」
そう言った木谷はメモした用紙にファンクラブの代表者と連絡先を描いて一度応接室を出ていき、二枚コピーをして戻ってきた。
「これでよろしいですね」と言って、木谷は佐川と近藤にメモをコピーした物をくれた。
「ありがとうございます。またお聞きしたいことができましたら、お伺いさせていただきます」
佐川は木谷に頭をさげ、近藤とともに応接室をでた。だが、木谷はでてくることはなかった。その後、ボンバー編集部室の資料と書類の積まれた机の谷間を通り抜けて通路に出た。
やがて、エレベーターにのると、近藤は待っていたように佐川に話しかけてきた。
「彼にとって川村先生はやはり金の卵を産みガチョウだったようですね」
「そうかもしれんな」
佐川はコピーされたメモ用紙を見ていた。
メモ用紙には連絡先の電話番号の他、次のようなことが記載されていた。
マンガ家 星野ともえ
マンガ家アシスタント 小林 和弘
マンガ家アシスタント 大黒 裕也
マンガ家アシスタント 赤城 淳一
川村雄介の妻 川村 洋子
クラブ藤のママ 杉本 レミ
川村雄介ファンクラブ代表 神奈川 航平
ストロングマンクラブ代表 内村 鈴子
「この中に犯人がいるんでしょうか?」と自分に手渡されたメモ用紙を見ていた近藤が言った。
「わからんよ」
エレベーターが一階についたので、二人はメモ用紙をそれぞれ、胸ポケットにしまい、エレベーターをおりた。
この日は、もはや二人がこの事件にかかわってはいられない。
昨日まで捜査を行っていた押し込み強盗事件の捜査報告書を完成させなければならなかったからだ。
ハンドルを握っている近藤は、すぐに大通り入るために車を左に寄せていた。やがて、交差点にくると、車は左に曲がっていた。
大通りには同じような出版社の高層ビルが立ち並び、この一画の中に公論社があった。高層ビルは、遠くから見ると針の山があるようにしか見えない。近づいていくと、公論社はそれほど高さのないビルであることがわかる。まるで大木の林の中にある雑草のようにしか見えないのだ。
公論社のあるビルの地下に向かって車を走らせた。そこが駐車場になっていたからだ。駐車場にある管理事務所で警察手帳を出して、車を置かしてもらった。エレベーターにのってボンバー編集部がある十二階で佐川たちはおりた。
さすがにボンバー編集部は広い部屋で四十畳はありそうだった。だが、そこにおかれている机の上には、山のように関係資料、書類、参考本などが山積みになっていた。その間に人がいるのが見えた。
「すいません。土谷真治さんはどちらにおられますか?」
書類の間から顔をのぞかせた女性に声をかけながら、佐川は警察手帳をだして見せた。
「向こうの方におられますよ」と言って、その女性は手をあげて、部屋の反対がわの方を指さした。
佐川たちは、指さされた男の前に行った。
「土谷さん?」と言いながら佐川は警察手帳を見せた。
「そうですが、なんですか?」
「川村さんが死なれて、大変な目にあっているんじゃありませんか?」
「その通りですよ。少し前に社長に事件経過を説明しに行ってきましたよ。まだ事件のことが私も分かっていないのに。社長から川村先生の特集号を組めと言われてしまいましたよ。今週号は無理ですが、来週号には、それをやらないとならんでしょうな」
「川村さんが死なれた時のことを少しお聞きいたしたいと思いまして?」
他の編集部員に聞かれたくないと思ったのか?
「応接室があるので、そこでお話をさせていただきますよ」と言って、土谷は別の部屋に佐川たちを連れて行った。
応接室に入ると、二人を長椅子に座らせ、土谷は応接室に備え付けの自動販売機で缶コーヒーを買って二人の前に置いていた。
「川村先生のことでしょう。本当に誰が毒を入れたんですかね?」
「まず一番先にお聞きしたいことを質問させていただきます。川村先生が毒を飲まれた時、あなたはどこにいたんですか?」
「円形のテーブルをはさんで反対側にいましたよ」
「そのときに、誰が、ウエイターが持っていたプレートからグラスをとっていたか覚えておりませんか?」
「いや、私もだいぶ酔ってしまっていたからね。倒れた川村先生に驚いたせいか、まったく覚えておりません」
「そうですか。パーティ開催の案内状のようなものをお出しにならなかったのですか?」
「参加者の話は川村先生としましたよ。その時のメモがありますので、それはさしあげますよ」
「ところでパーティにフアンの人たちが来ていたようですが、土谷さんの方で、ファンの方々にお知らせをしたんですか?」
「私の方でそんなことをしませんよ。川村先生の方で知らせたんじゃないですか? 大きいファンクラブは二つあります。そこの代表者への連絡先は、お渡しするメモの脇に書いておきますよ」
そう言った木谷はメモした用紙にファンクラブの代表者と連絡先を描いて一度応接室を出ていき、二枚コピーをして戻ってきた。
「これでよろしいですね」と言って、木谷は佐川と近藤にメモをコピーした物をくれた。
「ありがとうございます。またお聞きしたいことができましたら、お伺いさせていただきます」
佐川は木谷に頭をさげ、近藤とともに応接室をでた。だが、木谷はでてくることはなかった。その後、ボンバー編集部室の資料と書類の積まれた机の谷間を通り抜けて通路に出た。
やがて、エレベーターにのると、近藤は待っていたように佐川に話しかけてきた。
「彼にとって川村先生はやはり金の卵を産みガチョウだったようですね」
「そうかもしれんな」
佐川はコピーされたメモ用紙を見ていた。
メモ用紙には連絡先の電話番号の他、次のようなことが記載されていた。
マンガ家 星野ともえ
マンガ家アシスタント 小林 和弘
マンガ家アシスタント 大黒 裕也
マンガ家アシスタント 赤城 淳一
川村雄介の妻 川村 洋子
クラブ藤のママ 杉本 レミ
川村雄介ファンクラブ代表 神奈川 航平
ストロングマンクラブ代表 内村 鈴子
「この中に犯人がいるんでしょうか?」と自分に手渡されたメモ用紙を見ていた近藤が言った。
「わからんよ」
エレベーターが一階についたので、二人はメモ用紙をそれぞれ、胸ポケットにしまい、エレベーターをおりた。
この日は、もはや二人がこの事件にかかわってはいられない。
昨日まで捜査を行っていた押し込み強盗事件の捜査報告書を完成させなければならなかったからだ。
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