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6関係者聞き込み・マンガ制作スタジオ
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残念ながら、川村雄介の司法解剖や科捜研からの分析結果も報告がなされていなかった。
「今日は、どうしますか?」
近藤は、署の窓から朝曇りの空を見ていた佐川に聞いてきた。
「やはり関係者が一番多く集まっている所に行くのが早いな」
「どこですか?」
「川村雄介マンガ制作スタジオだよ。そこにアシスタントたちが集まってきているはずだ。作者は死んだが、まだストロングマンの連載は終わらせないようだからな」
川村雄介マンガ制作スタジオは。中央区の北にある店舗ビルにあった。佐川たちは覆面パトカーにのり二十分後にはそのビルの駐車場に車を置かせてもらった。その後、エレベーターにのって五階でおり、川村雄介マンガ制作スタジオの出入口ドアの前に立った 。
ドアには、事務所名の下にロゴやストロングマンの絵も描かれていた。そのドアを佐川はノックもせずに押して開けた。
突然、二人の男に入り込まれたアシスタントたちは驚いた顔を出入口ドアに向けた。佐川と近藤はすぐに警察手帳を見せた。
「警察です。川村さん殺害事件の捜査させてもらっています。まずはお話を少し聞かさせてもらいたいと思ってまいりました」
この部屋には壁が見えなくなるほど段数のある本棚に囲まれていた。そこに本や資料が満たされている。地震が来た時には、部屋中にそれらが落ちてきて、その下にうずめられてしまいそうだ。
部屋には五つの机が置かれていた。一番奥にある机は大きく他の机の倍はあろうかと思われた。生きていれば、その机は川村がすわっていたに違いなかった。だが、今はそこに年長のアシスタントがすわっていた。
手前には机がつけて四つ置かれ、三人のアシスタントがすわっていたのだ。端の一つは空席になっている。
年長のアシスタントが声をあげた。
「すでに指紋や唾液をとられていますが、まだ何かあるんですか?」
「警察もいろいろな係がありまして、前に応対をしたのは鑑識ですね。私らは捜査をする係です。たしかパーティに出席をされていたのは、三人だったと思いますが」
佐川は木谷からもらったメモ用紙を見ながら聞いていた。
年長者は笑っていた。
「ぼくは大黒裕也です。ぼくの右にいるのが小林和弘、左にいるのが赤城淳一、その横にいるのが本山泰三」
「本山さんがパーティに参加されなかったのは?」
「何か連絡があるとすれば、ここに連絡が入りますからね。一人は置いて置かない訳にはいかない」
「それでは、本山泰三さんがここで待機していたんですね」
泰三は軽くうなずく。
「さっそくですが。パーティに出られた三人にお聞きしますよ。川村さんが倒れる前にシャンパンを飲んでいますね。彼が手に取ったグラスはウエイターが運んできたグラスの中から取られたものです。川村さんが倒れた時に、ウエイターが運んでいた同じプレートからグラスをとった人が誰であったか覚えている人はいませんか? 覚えている方は教えてほしいと思っております。小林さん、どうですか?」
「ぼくは、先生とは離れたところで飲んでいましたからね」
佐川はアシスタントたちの顔をゆっくりと見まわした。
「ぼくが警察に連絡をしたのですが、その前のことは狼狽をしていたせいか、よく覚えてはいないんですよ」と」赤城が言っていた。
「そうですか。川本先生がいなくなると、絵を描く人がいなくなって大変ですよね?」
佐川がそう言うと大黒が笑っていた。
「確かに大変ですよ。でも、先生と同じ絵を描くことは、ここにいるみんなができる。それに、ストリーは前もって雑誌社と打ち合わせをしてできあがっていますからね」
「ほう、マンガのことをよく知らないもので、それは失礼をしたようです」
「川村さんがいなくなっても、みんなが先生のように描けるので困ることはないと言うことですか?」
その問いにアシスタントたちは笑っていた。
「私の言ったことが、可笑しいことですか?」
すると、赤城は耐え切れないように言い出した。
「先生はね。自分と似たタッチの絵を描く人を嫌っていたんですよ」
「どういうことかな?」
「先生は、先生のような絵を描ける者は自分だけにしたかった。自分の商品価値を保持するためですかねつまり、ぼくたちが作品を作ると似たような作品になると思っているんですよ」
「あなた方なら、違う絵を描くこともできるんではないですか?」
「ともかく、これで小林さんも雑誌に載せてもらえますね」
「そんな話があったのですか?」
「他誌ですが 。小林さんの作品を気に入ってくれた人がいるんです」
「独立間際の人はいいが他の人たちは困ってしまうんじゃないのかな」
すると、大黒が声をあげた。
「いや、川村先生に変わってストロングマンを続けてくれと木谷さんから言われているんだ。だから、みんなに手伝ってもらうつもりでいるよ」
ホッとしたような表情がアシスタントたちの顔に浮かんでいた。
「そうですか。また、何かあれば、聞きに上がりたいと思いますので、ご協力をお願いしますね」
佐川は、すわっているアシスタントたちに頭をさげた。近藤はメモをしていた手帳をとじて、胸ポケットにしまい込んだ。そして、佐川たちは創作スタジオを出た。
「アシスタントたちにとって川村は金の卵を産んでくれるガチョウだったのでしょうか?」
「わからない。人を食うガチョウもいるかもしれないからね」と言って佐川は首をかしげてみせた。
「今日は、どうしますか?」
近藤は、署の窓から朝曇りの空を見ていた佐川に聞いてきた。
「やはり関係者が一番多く集まっている所に行くのが早いな」
「どこですか?」
「川村雄介マンガ制作スタジオだよ。そこにアシスタントたちが集まってきているはずだ。作者は死んだが、まだストロングマンの連載は終わらせないようだからな」
川村雄介マンガ制作スタジオは。中央区の北にある店舗ビルにあった。佐川たちは覆面パトカーにのり二十分後にはそのビルの駐車場に車を置かせてもらった。その後、エレベーターにのって五階でおり、川村雄介マンガ制作スタジオの出入口ドアの前に立った 。
ドアには、事務所名の下にロゴやストロングマンの絵も描かれていた。そのドアを佐川はノックもせずに押して開けた。
突然、二人の男に入り込まれたアシスタントたちは驚いた顔を出入口ドアに向けた。佐川と近藤はすぐに警察手帳を見せた。
「警察です。川村さん殺害事件の捜査させてもらっています。まずはお話を少し聞かさせてもらいたいと思ってまいりました」
この部屋には壁が見えなくなるほど段数のある本棚に囲まれていた。そこに本や資料が満たされている。地震が来た時には、部屋中にそれらが落ちてきて、その下にうずめられてしまいそうだ。
部屋には五つの机が置かれていた。一番奥にある机は大きく他の机の倍はあろうかと思われた。生きていれば、その机は川村がすわっていたに違いなかった。だが、今はそこに年長のアシスタントがすわっていた。
手前には机がつけて四つ置かれ、三人のアシスタントがすわっていたのだ。端の一つは空席になっている。
年長のアシスタントが声をあげた。
「すでに指紋や唾液をとられていますが、まだ何かあるんですか?」
「警察もいろいろな係がありまして、前に応対をしたのは鑑識ですね。私らは捜査をする係です。たしかパーティに出席をされていたのは、三人だったと思いますが」
佐川は木谷からもらったメモ用紙を見ながら聞いていた。
年長者は笑っていた。
「ぼくは大黒裕也です。ぼくの右にいるのが小林和弘、左にいるのが赤城淳一、その横にいるのが本山泰三」
「本山さんがパーティに参加されなかったのは?」
「何か連絡があるとすれば、ここに連絡が入りますからね。一人は置いて置かない訳にはいかない」
「それでは、本山泰三さんがここで待機していたんですね」
泰三は軽くうなずく。
「さっそくですが。パーティに出られた三人にお聞きしますよ。川村さんが倒れる前にシャンパンを飲んでいますね。彼が手に取ったグラスはウエイターが運んできたグラスの中から取られたものです。川村さんが倒れた時に、ウエイターが運んでいた同じプレートからグラスをとった人が誰であったか覚えている人はいませんか? 覚えている方は教えてほしいと思っております。小林さん、どうですか?」
「ぼくは、先生とは離れたところで飲んでいましたからね」
佐川はアシスタントたちの顔をゆっくりと見まわした。
「ぼくが警察に連絡をしたのですが、その前のことは狼狽をしていたせいか、よく覚えてはいないんですよ」と」赤城が言っていた。
「そうですか。川本先生がいなくなると、絵を描く人がいなくなって大変ですよね?」
佐川がそう言うと大黒が笑っていた。
「確かに大変ですよ。でも、先生と同じ絵を描くことは、ここにいるみんなができる。それに、ストリーは前もって雑誌社と打ち合わせをしてできあがっていますからね」
「ほう、マンガのことをよく知らないもので、それは失礼をしたようです」
「川村さんがいなくなっても、みんなが先生のように描けるので困ることはないと言うことですか?」
その問いにアシスタントたちは笑っていた。
「私の言ったことが、可笑しいことですか?」
すると、赤城は耐え切れないように言い出した。
「先生はね。自分と似たタッチの絵を描く人を嫌っていたんですよ」
「どういうことかな?」
「先生は、先生のような絵を描ける者は自分だけにしたかった。自分の商品価値を保持するためですかねつまり、ぼくたちが作品を作ると似たような作品になると思っているんですよ」
「あなた方なら、違う絵を描くこともできるんではないですか?」
「ともかく、これで小林さんも雑誌に載せてもらえますね」
「そんな話があったのですか?」
「他誌ですが 。小林さんの作品を気に入ってくれた人がいるんです」
「独立間際の人はいいが他の人たちは困ってしまうんじゃないのかな」
すると、大黒が声をあげた。
「いや、川村先生に変わってストロングマンを続けてくれと木谷さんから言われているんだ。だから、みんなに手伝ってもらうつもりでいるよ」
ホッとしたような表情がアシスタントたちの顔に浮かんでいた。
「そうですか。また、何かあれば、聞きに上がりたいと思いますので、ご協力をお願いしますね」
佐川は、すわっているアシスタントたちに頭をさげた。近藤はメモをしていた手帳をとじて、胸ポケットにしまい込んだ。そして、佐川たちは創作スタジオを出た。
「アシスタントたちにとって川村は金の卵を産んでくれるガチョウだったのでしょうか?」
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